軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

26 結成

家をぐるりと包囲するように立つ精霊たち、それは蟻の子一匹たりとも通さないと思われるほどの密度だ。

一応俺たちが泊まっている家の敷地内に入らないようには気を使ってくれているようだが、道路は立ち止まる精霊たちに埋め尽くされ、空にも飛べる精霊たちが飛び回っているようではその意味はない。

不法侵入しなければ問題ないだろうと反論されても、それが言い訳にもならないレベルの数。

「あ!アミナちゃんだ!!」

そしてその圧巻の光景に思わず叫んでしまったのが失敗だった。

俺の叫び声に反応して一斉に精霊たちがこっちを見て、そこにアミナを見つけて全力でこっちに駆け寄ってくる。

「え、え?え?」

一体何が起きているかわからない彼女は戸惑い、どうすればいいかわからずそこに立ちすくんだままだ。

このままだとその精霊の波に飲み込まれるのではと焦る。

「逃げるぞ!?」

「一体どこにですの!?」

「空も周りも、どこにも行けないわよ!?」

「ここは私が抑えます、リベルタ様たちはお逃げを」

思わず俺も逃げようと振り返ったが、来た道もすでに精霊たちに封鎖されてしまい、あっという間に俺たちは包囲されてしまった。

一体全体俺たちは何をしてこんなことになっているのか。

襲い掛かろうとしているわけではなく、成り行きで俺たちを包囲してしまった精霊たちもこの後どうしようと戸惑っている。

「え、えっと、みんなどうしたの?」

精霊たちの様子が変だ。

だが、理由に心当たりのないアミナは恐る恐るという感じに質問する。

『アミナちゃん!このままだと精霊界から出ていっちゃうって本当か!?』

「え?」

その質問に一人の精霊が答えた。

『ライブが上手くいかなかったら精霊界から出ていっちゃうんだろ!?』

『私たちそれを聞いて、いてもたってもいられなかったの!!』

『僕たちにできることがあったら何でも言ってくれ!!』

いったいどこからそんな情報が漏れたのだろうか。精霊王とのやり取りを聞いていたかあるいは精霊王自らが言った内容が精霊界に広がったとしか考えられないが。

少なくとも俺は言った記憶が・・・・・

「あ」

そこでふとそれを聞いていて、かつ無邪気な存在がいることを思い出した。

そっと振り返って、アミナの後ろについている精霊たちを見た。

「君たち、もしかして王様との会話話しちゃった?」

『『『うん』』』

異口同音。

綺麗にハモって頷いた彼女たちに俺は思わず頭を抱えた。

最初は闇の精霊が報酬の話を周囲に広めて、それに嫉妬してという流れを考えたが、集まった精霊たちがどちらかと言えば、嫉妬というよりは焦っていたことに違和感を覚えて、どういう理由かと考えたが・・・・・

これは素直に教えたうちのおチビさんたちの話が噂になり、尾ひれに背びれがついた状態で回遊しちゃった感じかぁ。

「・・・・・秘密にしてくれって言うの忘れてた」

常識的に考えて、精霊王との契約は口外すべきことではない。

それは俺も含め全員理解していた。

だからこそ、誰も精霊王との契約については口にしなかったのだが、それはおチビさんたちには関係なかったようだ。

常識だろと言えばそれまでだが、幼く、まだそこら辺に疎い彼女たちにそれを求めるのは酷か。

身内だから大丈夫だと過信した俺の責任でもある。

『!秘密にしてくれって、やはり本当のことだったのか!?』

そして小さく呟いたというのに、精霊というのは耳がいい。

俺の言葉に、アミナのライブを実は精霊王は反対しているのではという雰囲気が出始めてしまっている。

これは、まずい。

一部では精霊王に抗議しに行こうという話すら聞こえ始めている。

この場をなぁなぁで終わらせてしまったら後でとんでもない火種が出来かねない。

なので、俺は周囲に聞こえるような勢いで、大きな拍手をする。

両掌をマジックエッジで覆い、接触面積を増やし、ステータスでごり押しした拍手は俺へと注意を集めるには十分な音を出してくれた。

そして俺は大きく息を吸い込んで、これから言う言葉を脳内で整理。

「総員傾聴!!!」

まずは戸惑っている精霊たちを落ち着かせることが最優先。

アミナが出ていく、その衝撃の事実が精霊たちを戸惑わせている。

この世界にアイドル活動のマナーを守るなんて常識はまだ出来上がっていない。

であれば、その状態を踏まえて一気に圧倒するしかない。

俺の張り上げた声に、精霊たちのざわめきが一瞬だが止まる。

「アミナ、悪いけどゴーレムを一体召喚してくれ。このままだとみんな注目できない」

「う、うん、いいけど」

「安心しろ、戦うわけじゃない。状況を説明するだけだ」

その隙にアミナにアングラーを召喚してもらい、俺はその巨体をあっという間に登り切り肩の部分に立つ。

「アミナの所属しているパーティーのリーダーをしているリベルタです!!ライブの運営と管理とか演奏とか色々とやっている人だと言えばわかりやすいですかね!!」

とにかく精霊たちの数が多くて、広範囲に広がっているから声を張り上げるしかない。

ゴーレムの上に登り、代表者だと名乗り上げたことで精霊たちは俺の方に注目し始めた。

「皆さんの集まった事情はさっきの声をかけてくれた精霊さんの言葉で察しました。まず最初に俺たちは精霊王と謁見し、いくつか契約しました!その中にライブに関することがあります!」

そして事情を説明してくれる存在と認識したら、俺の言葉に耳を傾けてくれて静かになりだしたが、ライブに関する契約と言うとわずかにざわめく。

「俺たちはライブをすることと催しを企画することで、精霊王からこの精霊界に滞在し泡沫のダンジョンを使わせてもらう許可を得ました!皆さんの言う立ち去るという言葉はここに関係します」

ここまで大勢の精霊にバレている状態で、契約のために話せないと言うと精霊王への不信感につながる。

そうなるとライブどころの話じゃなくなる。

となれば、事情を全部説明して納得してもらうほかない。

ゴーレムの上に乗りながらの大演説。

「泡沫のダンジョンは皆さんが知っている通り非常に利便性が高く、強くなりたい者にはうってつけの場所です。ですが、ただで使えるわけではありません!精霊王の御力があってこそ使うことのできる場所です!俺たちは余所者、それを無料で使うことはフェアじゃありません」

精霊王に非はなく、そして俺たちもそれを望んで契約しているのだという事実を伝えねばならない。

「なので、その対価に見合う催しとライブを今計画しています!俺たちとしてもできるだけ長く精霊界に滞在し、鍛えて強くなりたいので全力でこの企画に挑んでいます!なので皆さん安心してライブと催しをお待ちいただければ幸いです!」

アイドルの情報が漏れてファンたちが行動に移す、その光景は日本でも知っていたが、現実で見るとこうまでアクティブなのかと運営の説明役を果たしている身で実感した。

さすがの俺でもこんなことを経験したことはなかった。

だからこそ、こんな感じでいいのかなと思ってこれからも応援お願いしますと締めくくったつもりだが、精霊たちはその場から立ち去らない。

この説明で足りないか・・・・・まぁ、足りないよな。

だけど、俺にいま言えることはこれだけなんだよ。

納得はできずとも理解して、立ち去ってくれればいいんだけど。

『リベルタ!!』

じっとゴーレムの上で様子を見ていると、近くにいた地の上位精霊と思われる男の精霊から声をかけられた。

そっちを見ると真剣なまなざしで何を言うか考え、そして覚悟を決めて口を開いた。

『闇のやつはアミナちゃんの手伝いをしているんだろ!!俺も手伝う!!そうすればもっとすごいことができるだろ!!手は多い方がいいって言うしな!!』

その内容に、俺はてっきり闇の精霊は何も言っていない物だと思っていたが、ちゃっかりと自慢しているのだなと瞬時に察した。

『あいつだけにライブを見せたんだろ!うらやましいぞ!!俺も手伝うからライブを見せろ!!』

『あ!抜け駆けする気!?私も手伝うわ!!だからライブを見せて!!』

『吾輩も手伝うぞ!!』

そしてそれが導火線となり、さっきまでの静けさが嘘のように、騒がしさが再燃して一気に広がった。

俺は聖徳太子じゃないんだぞ!!

一気にまくしたてられても内容を聞き取ることなどできない。

ただわかったのは、手伝うからライブを見せろというシンプルかつ面倒な願いだ。

闇の精霊を贔屓したつもりはない。

需要と供給がかみ合ってこっちの都合がよかったから取引しただけ。

そのあたりは把握しているようで、力を貸したからライブを見れたという、ギブアンドテイクの取引関係を無視する様子はない。

だけど、誰もかれも手伝ったからライブを見せるなんてことをするわけにもいかない。

騒ぎは騒ぎを呼び、どんどん熱量が上がる。

言いたいことを言い続ける精霊たちをどうやって鎮めようかと考えていると一つ名案を思い付いた。

いや、下手したら迷案かもしれないと思ったが、この場を収めるにはこれしかないと思い。

再び大きく息を吸い込み。

「皆さんのお気持ちはわかりました!」

精霊たちの言葉を遮るくらいに大きな声を張り上げた。

「でも、個人個人に対応をしたらまず間違いなくライブは失敗します!!そして今ここで誰かを頼りそして誰かを頼らないということは不和を生み出します!」

考えろ!まとめろ!

俺たちの活動に支障を出さないように判断を間違えるな。

俺が考え付いたのは、俺が作ろうと思っていたクランの構想の流用だ。

もともと戦闘集団という形で結成する予定だったが、これを戦闘集団ではなく支援集団として結成すればいいのでは思った。

「なのでここに宣言します!!アミナのライブをもっと盛大にするために、そしてライブの活動を円滑に行うための支援集団、クラン、アミナファンクラブの設立を!」

クランというのは一人につき一集団しか所属できないと思いきや、実はそういうわけではない。

そこはクラン毎のルールに縛られるということで、クランのルールに他のクランに所属してはいけないと禁止条項を設けていなければ他所のクランに同時に所属することができる。

そしてそのルールを突けば、一人が複数のクランのトップになることもできる。

ここまで手伝うと言ってくれる集団がいるのなら、無理無茶無謀を押してでも後方支援集団としてアミナのファンクラブを作った方が後々役に立つだろう。

うん、本来俺が作ろうとしているクランとはだいぶかけ離れているけど、あとは精霊たちがどこまで手伝ってくれるか協議すればなんとかなるだろう。

そこら辺の細かい部分は、後回し。

今は精霊たちの要望を叶え、俺たちの活動に支障をきたさないことが先決。

「ふぁんくらぶってなんだ?」

「クランは知っているぞ。人間たちが作っている集団のことだ」

「その集団をつくることと、ライブがどう関係するんだ?」

ファンクラブという概念がないこの世界。

日本でもファンクラブがライブの活動に携わるなんてことはない。

そもそもこの世界にはアイドル事務所とかイベント会社なんて物が無かったんだ。

いままでは全部俺たちが根回しして、公爵閣下や商店街の人たちに協力を要請して運営しているような外注頼みだったんだよ。

それならいっそ、今一番ブームの来ている精霊たちによってアイドルライブ運営クランを設立して、ノウハウを叩き込んでついでに俺たちの戦闘支援をしてもらった方がいいだろ。

ピンチはチャンス。

この窮地は存分に活用させてもらう。

そのためには疑問符を頭に浮かべる精霊たちに、俺は説明をする必要がある。

さぁ、プレゼンの時間だ!