軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

25 メタモルアイテム

クラス4のダンジョンともなれば、以前の風竜のダンジョンの時のようにスタンピード対策の緊急案件とかでなければ、その攻略には数ヶ月から数年の期間を掛けて国軍の兵士やギルドから派遣される冒険者が当たるというのがこの世界の普通だ。

それをわずか一日で攻略するなんてのは本来であればありえない光景。

だけど俺たちはたった一パーティーでそれを成し遂げた。

他人から見たらそれを偉業と言うのだろうが、俺たちからしたらこれが日常だ。

そしてそれを誇るわけでもないので、銀色の宝箱をそそくさと開き。

そこそこのドロップ品を確保してダンジョンの外に出てみると。

「良き鍛錬になりました。そして、こちらがしっかりとジョブを取ってきた証明ですね」

花畑に静かに佇むクローディアさんが、俺たちがダンジョンから脱出してきたことを確認するとゆっくりと立ち上がり、笑顔で出迎えてくれた。そしてこちらに歩いてきて俺に報告がてらステータスを見せてくれた。

『クローディア クラス3/レベル1

ジョブ 天割の武闘家

称号 求道者

基礎ステータス

体力244 魔力160

BP 0

EXBP 0

スキル7/スキルスロット9

格闘神術 クラス10/レベル100

治癒魔法術 クラス10/レベル100

空歩 クラス10/レベル100

雷歩 クラス10/レベル100

崩拳 クラス10/レベル100

崩蹴撃 クラス10/レベル100

ヒール クラス10/レベル100 』

そして格闘職において重要なジョブと称号をしっかりと獲得して来たのが見えた。

RTAを指示した俺としては、彼女が俺たちよりも早くダンジョンを攻略して待っているかもしれないとは思っていたが、ステータスをリセットして一からの出直しで、切り札の攻撃スキルを失い、そしてステータスも弱体化した身でありながら、時間ギリギリではなく余裕をもって格上ダンジョンを攻略して見せるとは、この人のプレイヤースキルはやはりすごい。

「・・・・・できるとは思ってましたけど、難しくなかったですか?」

知識を教え、攻略する方法を確立させたとしても、それを実践できるかどうかはその人のプレイヤースキル次第。

このパーティー内ではこと戦闘という方面では俺と同等あるいは超える技術を持つ彼女からしたら、時間制限付きの格上ダンジョンソロ攻略程度の縛りプレイは朝飯前と言うことか。

「いいえ、苦難という面においては今まで経験してきたどの修行と比べても苦労が絶えない行為でした。ですが、強くなるということはその経験の積み重ねを自身の身に刻み込むことです。今回のダンジョン攻略は非常に難易度が高く有意義な修行でした」

「あ、はい」

いや、違う。

クローディアはある意味でFBOのトッププレイヤーに匹敵するプレイヤースキルとゲーマー気質を兼ね備えているような人物なのだ。

例え話をするのなら、とある音楽ゲームがあったとして、そのゲームは進めば進むほど難易度が跳ね上がっていくという仕様だとしよう。それに挑戦していくと常人であれば、攻略が出来なくなったらその時点で諦めるという選択肢を取る。

だが、クローディアは攻略する方法があるのなら難しくともそれに挑み達成する。そうすることがよりゲームを楽しみ上達しているという実感を得る方法だと知っている。

もっとわかりやすく言えば、簡単すぎるからもっと難しいステージがやりたいと言っているようなものだ。

その精神性は俺も理解できるので、素直に頷きこれ以上は触れないようにしようと考えた。

「それに、リセット前の同じレベル帯の時の私の体の動きと比べれば、十二分に力は蓄えられています。クラス6の頃と較べればさすがに力は下がっていると言えますが、戦えないわけではないですよ。でしたらやりようはいくらでもあります」

「確かに」

「リベルタ、そこで頷いちゃだめよ。普通の人は弱くなっているなら一旦退いて、もっと強くなってから戦うのよ」

だが、際どい戦いでも相手を削りきって倒せる可能性のあるステータスを持っているのであれば、そのまま削りきるまで戦うのがゲーマー。

その理屈をクローディアに言われて、つい頷いてしまった。

「まぁ、そうだけど」

その理屈はあくまで俺たちのようなゲーマーの常識であって一般人の常識ではないのだ。

ネルのツッコミに苦笑しつつ常識に従うと強くなれないんだよなと、自分の非常識さを自認しつつ頭を掻いて皆に視線を向ける。

「うん!とりあえずこれで晴れて全員がジョブを獲得し、前に進む準備ができた。ここから先はレベリングをしつつ、装備とスキルを集めるというステージに進む」

咳払いをしてとりあえず誤魔化して話の流れを変える。

ここまでの俺たちは料理で言えばようやく食材の下ごしらえが終わったという段階だ。

ここからどうやって強くなるかは人それぞれに違うから、事細かくこの場で説明することはない。

そもそもの話、武具もスキルも一朝一夕で手に入るような代物でもない。

貴重な素材を何十何百と集めても、まだ足りない、素材が足りないと呻き、嘆き、時に発狂するというのが廃ゲーマーのルーティーンだ。

「だけど、次のライブが成功しなければ今後はこの場所は使えなくなってしまう。クラス7まではここで強くなる予定だから、ひとまず俺たちの装備強化と、ライブを成功させるために残り一回のダンジョン生成は使おうと思う」

「それがさっき言ってた星屑の芋虫というモンスターなのね」

「ああ、このダンジョンは少し特殊なダンジョンでな。ダンジョン内で進化が見られる」

「進化?」

強くなるのと素材集めは切っても切り離せない大事な行為。

ネルという豪運持ちがいるから今まで順調に進められているが、それでもこの行為は終わることなく続く。

「さっき言ってた星屑の芋虫。スターダストキャタピラーは浅い層にポップするモンスターで、中層になるとそれが進化して、ライズコクーンっていうモンスターに変わる」

「本来、ダンジョン内のモンスターは一種類が原則。他のダンジョンと結合していなければそれが基本ですわ。ですが例外はあると学園で学んでおります。今回のモンスターもその例外と言うわけですね?」

「そう言うことです」

ダンジョン内で進化するモンスターとして、昆虫系のモンスターによく見られる変態と呼ばれる現象だ。

そして昆虫系のモンスターで手に入り重宝するのが、糸系のアイテムだ。

「今回はその例外が生み出す産物、スターリーシルクの元である星屑の糸を手に入れます」

さらにダンジョンの中には少し特殊な系統のダンジョンが存在する。

「このスターリーシルクは、二段階目進化のライズコクーンしかドロップしない星屑の糸を織ることで手に入るアイテムだ。夜空に浮かぶ満天の星のように煌めく美しい布な上に、その耐久性や付与できる効果は布系のアイテムの中でも優秀な素材だ」

出現条件が特殊なモンスターほどレアなアイテムを落とすというのはゲームでは常識だ。

この星屑の芋虫ことスターダストキャタピラーもそのアイテムを落とすための貴重な存在と言うわけだ。

「素材としての強さはどれほどの物ですか?」

「素材クラスだけで言えばクラス4程度の強さだ」

そのアイテムを狙う理由は強さかとイングリットに聞かれたが俺は首を横に振り、星屑の糸のクラスは4だと答える。

これは沼竜の素材よりも格下だということを示している。

「だけど、この素材って進化するんだよねぇ」

「進化する?どういうこと?強化するって意味だよね?」

「強化とはちょっと違うな。正確に言えば完全変態というんだけど、面倒だから進化って俺たちは呼んでいた。スターダストキャタピラーの強さはクラス3、それが蛹になりライズコクーンになる。その強さはクラス4、そしてライズコクーンが羽化することで最終進化形態へ行き、スターリーバタフライになる。その強さはクラス5のモンスター。この段階を隔てる性質は重要でな。その性質はドロップするアイテムにもあって、完全変態の性質を持っているアイテムをメタモルアイテムって呼ぶんだ」

ゲームでよくある、素材合成。

基礎となる素材を合成し、それを繰り返すことで別物に変えることができる。

FBOでは基本的に武具は一度作ってしまうと強化しかできない。

素材に関しても、付与することで属性を加えたりスキルを組み込むことができるのが基本だ。

しかし、一部のモンスターの素材だけクラスを超越することができる。

その条件はモンスターが完全変態という特性を持っていること。

「その性質を星屑の糸は備えている。糸の状態から布の状態に仕上げてもクラス4だが、ここから錬金術で一定の手順の合成を繰り返すことでクラス6の布アイテム、ルナライトシルクになる」

星屑が月になるとはなんとも大仰なことだが、このメタモルアイテム逆に弱くなる性質もあるから面倒なんだ。

強い素材を使ったからと言って必ずしもいい方向に変化するわけではない。

重要なのは相性のいい素材との合成。

そして幼虫から蛹、そして成虫へと羽化するように段階を踏むこと。

「そして、このルナライトシルクをさらに進化させるとサンライトシルクとなる。これでクラス7の素材が手に入るっていう寸法だ」

このメタモルアイテムは多くて三段階までの進化を内包している。

ほとんどの場合は一度だけ。三段階進化ができるスターリーシルクは錬金術師の技にもよるが、レア中のレアケースだ。

基礎素材になる、スターリーシルクの変態限界回数と言えばいいか。

新しい素材になったのだからもっと進化できるのだろうとツッコまれそうな気もするが、内部に設定されている変態回数がゼロになってさらに合成して進化させようとするとアイテムそのものが消滅してしまう。

そして進化をする際に一番注意するべきは、進化させる際に使う素材のコストだ。

過ぎたるは猶及ばざるが如し。

いかに相性のいい素材を費やしたとしても、そのコストが過剰すぎると限界進化段階に到達するよりも前に限界に達して、それ以上の進化をしようとしてアイテムが消滅するということもあり得る。

「幸い、闇の上位精霊が錬金台を提供してくれた上に報酬次第では錬金を手伝ってくれるからな、運が良かった」

そもそもスターダストキャタピラーは、ストーリー上では十七年に一度の周期で来る大流星群の流れ星が降る夜空の時間でしか出現しないレアモンスターだ。

出現箇所のエリアも狭く、そして出現期間も短いことから発見されるまでかなりの時間を要したモンスターで、発見された段階ではプレイヤーの育成が終了しておりそこまで価値のあるモンスターではなくなっていた不遇モンスターだと言える。

だけど、姿かたちを知っているモンスターであるのならどんなモンスターのダンジョンでも生成できる精霊界の泡沫のダンジョンならその周期を無視して出現させることができる。

まぁ、その精霊界に入る方法はストーリー上では西の大陸にあるとあるグランドクエストを達成することが条件だから、グランドクエストを達成する頃にはストーリーが進んで精霊界は微妙な存在に成り下がってしまう。

本当に、この中位クラスに入り込む段階で精霊界に来れたことは幸運と言うしかない。

プレイヤーたちの中には当然だが、アイドルタイプのプレイヤーもいたし、精霊術師もいた。

だが、こんな形で精霊界に入れるなんて誰も知らなかった。

「なんで私を見るの?」

「運がいいって言ったらネルだし」

「私じゃなくて、アミナでしょ」

運がいいと言ったから皆がネルを見たが、さすがに今回のMVPはネルではなくてアミナだ。

精霊たちと心の底から仲良くしたいと思って行動した彼女だからこそこの機会を引き寄せたのだ。

ネルのツッコミに苦笑しつつ、確かにと頷いた俺は、そのままアミナの頭をワシワシと撫でる。

「確かにな、アミナのおかげでここに来れて、このタイミングで挑めるんだ。ありがとうな」

「えへへへ、そう言われるとなんだかうれしい」

奇跡か、あるいは偶然か。

どっちでもいいか。

今日は一旦宿舎に帰り、明日またここに来よう。

そう思って、精霊王から貸し出された家に戻ったのだが。

「な、なんじゃこりゃぁ!?」

「精霊たちで溢れかえっていますね」

泊っている家の周囲は何故か精霊たちに包囲されているのであった。