軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14 精霊界

精霊界、それはFBOではゲーム内の現実世界とは切り離された特殊な空間として知られている。

全ての理が精霊王によって定められる世界だ。

そこにプレイヤー、NPC問わず行く方法はただ一つ。

精霊王ディヴァンの許可の元、精霊王の精霊回廊を通り招かれること。

「私だけ?」

『ちがうよー、他の人も一緒にって』

『りべるた、ねる、くろーでぃあ、えすめらるだ、いんぐりっと』

『みんな一緒にって!!』

ゲームでは精霊術師を極めねば訪れることのない出来事。

その稀有なクエストの糸口を俺は目の前で見ている。

「リベルタ、どうしよう」

「……」

精霊王の招待は断ってもペナルティがあるわけではない。

精霊との関係が悪化するとか、精霊関連のクエストが受けれなくなるとか、そういうのは一切ないはず。

では、このクエストを受けることにメリットがあるかないかで言えば。

今の俺たちには大いにあると答えることができる。

現状はレイニーデビルから緊急避難中。避難先がマダルダから離れた地点から精霊界に変わる。

その点を加味すると。

「俺的には受けてもいいとは思う」

精霊王からの招待は受けた方がメリットが大きい。

あの世界でしかできないことが数多く存在するし、もし仮にアレがあるのならあのデメリットを受けてでも行く価値はある。

「ただ、精霊界は少し、いやかなり特殊な世界なんだ。全員で行くならそこを説明してからアミナが決めるのがいいかもな」

この招待はアミナに向けてだ。

俺たちはあくまでアミナに同道する形でついて行くことになる。

「ミーちゃん、すぐにいかないといけないのか?」

『大丈夫、王様の時計は今はゆっくりだから』

「そうか、それなら時間はたっぷりとあるな」

精霊回廊には、精霊が招く者しか入ることができない。

モンスターも、人も、そして他の精霊たちもここに入り込むことはできない。

王の時計はゆっくりと言われて、あの設定が生きているのかと思いつつ、ここで少し立ち止まることを決める。

「精霊王からの招待ですか。貴族として考えるのなら断ることはよほどのことがない限り避けたいですわね」

「精霊王は、一部の力では神に匹敵すると言われているお方です。私としても直々の招待となるのなら断るのは避けるべきだと思います」

馬車が止まったことに何かが起きたと察した彼女たちは、下車し外に出てきた。

その流れで今ここで何が起きているかをざっくりと説明したら、エスメラルダ嬢とクローディアは受けるべきだという。

「危害を加える気はないのでしょう?」

『王様はそんなことをしないよ!!アミナのお歌が聞きたいだけ!!』

『お歌を聞かせてくれたらご褒美をくれるの!!』

『楽しいことをしたいだけ!!』

エスメラルダ嬢が、安全面の懸念を聞いてくれると不愉快だと精霊たちは怒り、エスメラルダ嬢の周りを飛び始める。

「申し訳ありません。ですが、私たちも初めて行く場所です。確認をせねばなりませんの」

その怒りに対して頭を下げ謝罪をするエスメラルダ嬢に精霊たちも怒りを鎮めアミナの側に移動する。

「リベルタ君、さっき言ってた説明の話だけど」

「ああ、精霊界についてだな」

FBOにも存在した精霊界。

この世界は、俺たちが生活している世界とは色々と違う点がある。

「精霊界、文字通り精霊たちが生まれ生活する世界のことだ。そこには独自の文明があり、精霊たちが生み出した文化が存在する」

「おとぎ話で聞いたことがあるわ。精霊の王様と王妃様が治める世界なのよね」

「ああ、ネルの言う通りだ。ただ違うのは精霊界は封建制度ではなく、本当に王様と王妃様がいるだけで貴族という存在はいないんだよ」

まず挙げるのは階級制度だ。

封建制度なら、王という存在がトップにいて、その下に貴族という国を管理するための地位を持つ輩がいて、その下に市民というピラミッド構造が作り出される。

「国を治めているわけではありませんの?」

「国というか、精霊界は精霊王の世界なんだ。精霊王が世界を創造し、その世界に精霊たちが住んでいるというのが正確だな」

「それって、神様みたいなことができるの?」

「世界の規模で言えばかなり小さいけど、その世界に限定すれば神と同じようなことをしているのは間違いないな」

しかし、精霊界の場合は王がいて、あとは住民となる精霊たちがいる。

精霊たちが安寧に暮らせる世界を管理する王がいて、それを支える市民がいる。

何とも不可思議な政治体制が出来上がっている。

「精霊界の法則は精霊王の意志其の物。精霊王が白と言えば黒も白になる。あの世界の絶対的支配者なんだ」

普通に考えれば、王様一人で世界を管理できるわけないと思うかもしれないが、この精霊王に関して言えばそれができてしまう。

「精霊界という世界に限定されるけど、あの世界は天候、昼夜、季節、気温といった万物の現象が精霊王の匙加減で決まる」

万物の理が精霊王の匙加減一つで決まる世界。精霊界と言うのはそういう世界だ。

「リベルタ様、聞き間違いかと思いますが、昼夜とおっしゃいましたか?」

「言ったぞ」

「それはすなわち、時間も司っているということでしょうか?」

「さすがに過去に戻ったり、未来に行くことはできないけど、時間の進み方を俺たちの世界から相対的に遅くしたり速くしたりすることはできる」

イングリットが恐る恐る挙手して確認してくる部分に、俺は気づいたかと苦笑して答えた。

「そうたいてき?ネル、どういうこと?」

「私たちの世界と比べて、時間が遅くなったり速くなったりするってことね」

「それって、つまり????」

「ようは、俺たちが朝起きてお昼まで生活しているときに精霊界では朝のままだったり、すでに夕方だったりするってことだ」

「???????」

原理は解明できなかったが、時間を操作することができるのはゲーム時代でも実証されている。

と言っても精霊界はゲームではソロでしか入り込むことができない世界で、精霊界のどこに居てもどの角度からも見えるようになっている双子の時計が出迎える。

片方が精霊界の時間、もう片方の時計が俺たちの世界の時間という配置だ。

「えっとだな、精霊界で過ごした一日が、俺たちの世界では一時間だったり、その逆も起きるのが精霊界だってことだな」

アミナは意味が分からな過ぎて、頭の上に疑問符を浮かべまくっている。

首を傾げ必死に理解しようとしてくれているのはわかるが、理解する前に。

「きゅー」

「アミナ様、お水です」

「ありがとう、イングリットさん」

熱暴走が起きて、目を回して倒れそうになったところをイングリットが支えコップに水を入れて差し出した。

「何が起きてもおかしくないって言うのが精霊界だと思えばいい」

「そうなんだぁ」

水を飲んで落ち着いたアミナに、苦笑しながら細かく言うよりもざっくりとおおざっぱに言った方がいいのかと思い言ってみたが、これで納得されるのか。

「さっきミーちゃんが言ってたが、王様の時計がゆっくりってことは精霊界に行ったら向こうの一日が、こっちでは何日も過ぎ去っている可能性がある。俺としては逆ならいいんだけど、そこら辺てリクエストできる?」

『王様に伝える!!』

『アミナが来てくれてお歌うたってくれるなら大丈夫!!』

『王様の時間が早ければたくさんいてくれる?』

俺個人としては遅いよりも早い方がいい。

それをリクエストすると精霊たちは少し騒がしくなりながら、ムムムムとなにやら唸り始める。

あれが精霊王との交信をしているときの姿勢なのか?

「ねぇ、リベルタ。早い方がいいってどういうこと?」

「俺の記憶が正しければ、精霊界と俺たちの世界での相対時間比は最大で72対1というのができたはずなんだ」

「……それって精霊界での三日間が私たちの世界での一時間ってこと?」

「そう、その通りだ。そしてあっちの世界だったら面倒な人間関係もなく存分に強くなることができる」

「でも、精霊界にはモンスターもいないしダンジョンもないんでしょう?」

「いるし、あるぞ?」

もし仮にこの条件を飲んでくれるのなら俺は絶対に精霊界に行くことを推す。

それも全力でだ。

「あるの!?」

「ああ。と言っても俺たちの世界のダンジョンとは少し違ったダンジョンだが、それでもクラス3から7でEXBPを確保できる条件を満たしたダンジョンが揃ってる」

ゲーム時代では実際に現実世界とゲーム内の精霊界で相対時間を変えることはできなかったが、育成環境と言う面では中盤では最優の場所とも言われている。

ただ欠点は、精霊王の招待を受けられる段階ですでにプレイヤーのレベルがその育成環境で最適のレベル帯を超えてしまっているという点。

だから俺も精霊界でのレベリングはできないと思い、狩場に組み込んでこなかった。

「スキル獲得に関しても、精霊界でジョブスキルを習得することはできるしいくつかスキルビルドに組み込めるスキルもある。それでスキルスロットをある程度埋めて、そのあとにスクロールで補填する形にすればいいから育成面でも問題はない」

まさにリアル精神と〇の部屋と言うことだ。

俺たちの世界情勢の変化が最小限の状況でレベリングができる。

これほどのアドバンテージがあるか。

「リベルタは精霊界に行きたいの?」

「行けるのならな」

レイニーデビルを討伐することも考えれば、妨害の無い環境で強くなれる機会を逃す手はない。

精霊界に渡れるNPCはほぼいない。

クラス7をカンストする形まで育つことができるのなら、クラン設営にも取り掛かることができる。

ネルの問いかけに頷くが、決められるのは俺ではない。

誘われたのはあくまでアミナだ。

どうするかとアミナを見ると、彼女はにっこりと笑い。

「じゃぁ、行こうよ!」

そう簡単に頷くのだ。

「いいのか?下手したら二年か、三年くらいは戻らないぞ?」

「みんながいるから大丈夫!!」

本当に理解しているのかと不安になるくらいあっさりと頷くものだから、念押しで精霊界にどれくらい滞在するかを伝えるが俺たちがいるから大丈夫だと答えた。

「皆はどうする?」

「私は行くわ。アミナとリベルタだけ行くなんてずるいわ」

「リベルタ様が赴かれるのでしたら私はついて行くまでです」

「私も行きますわ!精霊界に行く機会など普通はありませんし、強くなるとリベルタが決めたのならその機会を逃すことはあり得ませんわ」

「保護者の私だけが帰るわけにも行きませんね。それに精霊界にも強者がいるようですし」

全員一致で精霊界に渡ることが決まった。

『王様から返事きた!』

『王様の時間を早くしたよ!』

『いま、道を開くって!』

そのタイミングで、精霊たちが新しい道筋を作り出した。

「虹の道」

「精霊王の導きだな」

「きれい」

「ええ、美しいですわ」

精霊回廊の中で、精霊王だけが唯一持つことを許される虹色の精霊回廊。

その精霊王の精霊回廊が作り出され、その先が精霊界であることを示した。

「馬車に乗ってくれ。出発するぞ」

「僕リベルタ君の隣!」

「ずるいわ!私も!!」

御者席に戻り手綱を握ると、アミナとネルが俺の左右隣に座る。

他三人はその光景を見て笑いつつ、馬車の中に入っていく。

『出発!』

『前進前進!』

『みんな待ってるよー!』

全員が乗ったことを確認してから、手綱を操作すると馬たちはゆっくりと前に進み、虹の道に入り始める。

この先にあるのは精霊界。

小さな精霊たちに導かれて、どんどん奥に進むとずっと先に大きい出口が見えた。

「あそこが精霊界の入り口だ」

「大きいね」

「ええ」

御者席でその入り口がどんどん近くなっていくのが見え、そしてついにゲートを潜り抜けるのであった。