軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

26 トリプルヘッド

これからの俺たちのパーティー全体のレベルアップのことを考えると、予備の昇段オーブはいくつあっても足りないと言っていい。

そもそもゲーム時代でも昇段オーブは消耗品で、もっとドロップ率を上げてくれと多くのプレイヤーが運営に要望するほどの需要があった。

クラスが上がれば上がるほど、確保は容易になってくるが、それでも一定の手間は付きまとう。

「リベルタ、どれくらいレベルが上がった?」

「113だな」

俺の今後の想定なら、もっと仲間は増える。

FBOの時はソロプレイ推奨という感じのゲームスタイルだったが、それはあくまでプレイヤーがソロというだけのこと。

仲間に関しては大勢のNPCがいた。

この世界でも戦闘職もそうだが、他にも生産職に、素材を採取する資材採掘職、施設の管理に商店管理と様々な分野で仲間を育成する必要がある。

いずれはクランを作ることも考えないといけない。

だけど、そのためには地盤となり、そして柱となるメンバーが必要だ。

いきなり手広く広げても動き的に無理が出る。

育成環境が整っていない段階で、新しいメンバーを入れても完全育成は難しい。

必要なのは地盤であり、柱だ。

現状の環境はエーデルガルド公爵家からの支援があるから、かなり恵まれていると言っていい。

ゲームの時のソロ環境と大きく違う状態でも、ある程度育成計画通りに動けているのは、公爵家と縁ができたからという面が大きく関係している。

先の狂楽の道化師との戦いでも実感したが、前世の日本と同じで死んでしまったらリスポーンはできない。

安全マージンという、命の線引きがより慎重に求められる。

ソロでの行動は極力避け、俺が考える安全マージンよりもさらに一段階いや、二段階は上げないといけない。

特にラスボスや裏ボスに挑むことを考えている身としては、信用し信頼できる戦力の拡張は必須。

FBOの時も思ったが、やればやるほど、すべきことが減るのではなく増えるのがきつ過ぎるよなぁ。

終わりの果てが一切見えない。

「やっぱり、クラスが上がるとレベルが上がりにくいね」

「いや、4時間の成果だったらかなり早い部類だけどな。亜種の発見頻度が高すぎる」

効率アップを狙おうにも危険を冒すのは必要最小限に抑えないといけない。

アイテムとかでドロップ率の向上とか経験値ブーストをかけてはいるけど、単調な攻略の連続で根気とやる気をゴリゴリと削る仕様が今はきつい。

弱者の証で経験値テーブルをレベル1で固定していると謂っても、クラス4まで上がるとさすがに一体や二体でレベルは上がらなくなる。

通常個体のビッグヘッドで四体と少し、おおよそ4.5体分でレベルが上がる計算をしていると、すでに五百体近くの敵を屠っている。

四時間と言ったが所々で小休憩を取っているし、実質は三時間半くらいの稼働時間。

すなわち二百十分でクラス4の敵五百体と戦ったと考えると、どれだけやばいかがうかがえる。

おおよそ一分で二から三体の敵を屠っているという計算だが、移動時間を込みにするともっと少ない時間でこの数を倒した。

効率重視に上振れるとこれか。

「クラス4のダンジョンは今までのダンジョンと比べて広いからできる芸当だよな」

俺的には、最低でも十周。

リポップするパターンを読み切って、それが重なって一気に目標の半分のレベリングができたが、本来であればこんなに上手くはいかないとわかっている。

このクラスになってくるとレベリングは時間がかかる物だと理解はしていたが、ネルの強運は俺の理解の外だったようだ。

亜種の登場頻度とモンスターの集合率がかみ合って理想値と言っていいほどの好循環でダンジョン攻略を進めることができたのは正直助かる。

「そうね!リベルタが教えてくれたダンジョンだから簡単にレベルが上がるわ!!」

「いや、うん、普通はこうはいかないんだけどね」

クラス4のレベリングの難しさはモンスター同士のチェーンがほぼできないということだ。

亜種の出現頻度は十体に一体。

確率で言えば十パーセント。

相当低いとまでは言わないが、決して高い数値でもない。

そこに加えてモンスターの群れに遭遇しないといけないから効率厨をエイムしたと思える設定だ。

検証班がこの亜種の出現理由は、人間でも体格差があることからモンスターでも体格が異なるモンスターを出しているのではと推測している。

実際にモンスターでも体の大きさに差があるからその推測はわかるが、極端に体のつくりが違う個体が混じるというのは珍しいと俺は思う。

この推測に確証はないが、それでもそういう条件を課してきたと言うことは、推測に近い意図があるのだろう。

一気にレベリングをすることもできるが、それだと強くなりきれない。

意図して難しくし、考えさせ経験を積ませようとしている。

FBOでもそう思うプレイヤーは多かった。

「そうなの?」

「うーん、今回の展開はかなり上振れていると思う」

そもそもの話なんでこんな面倒な設定にしたのか、と愚痴る人の方が多い。

世界観設定やキャラデザインは好評なのだが、ちょくちょくシステム面の面倒くささで人離れを引き起こしている作品だ。

何か意図して、そういうことをしているとしか思えない。

「私たちがレベルを上げていた時もこうだったわよ?」

「たぶん、ネルがいるからじゃないかなぁ?」

「そうかしら?」

「ああ」

その真実は検証班でも特定できなかったし、公式からの返答もなかった。

文字通り神のみぞ知るというやつだ。

「さてと、ここでレベル上がるわけにはいかないから修練の腕輪を装備するか」

そしてキリがいいというわけではないが、亜種チェインも切れて、めぼしい群れも見つからなかったのでどんどん奥に進んだ結果。

ダンジョンの締めくくりであるボス部屋まで来た。

「ちなみにネルさんや」

「なに?」

「ボスの顔はいつもいくつだった?」

ここのボスは通常種はダブルヘッドという、後頭部で顔をつなぎ合わせた本体に、四本の腕と四本の足をくっつけた多腕多脚型ゴーレムだ。

そんな異形のゴーレムが待ち受けているだろう扉の取っ手に手を掛けている状態で、俺は振り返って変な質問をする。

このダブルヘッド、確率で頭と手足がセットで増えるのだ。

最大で五つ。

通常種がダブルヘッドで、次にトリプル、さらにクワドラプルと増えて最後のクインタプルと名称が変わる。

当然頭が増える分強さも変わるが、変わるのは攻撃頻度だけで、スキルも増えず攻撃力もHPも据え置き。

誤差と言えば誤差だが、手足が増えるというのは中々面倒な相手だ。

だけど、頭が増えれば増えるほど強くなり経験値が増えて報酬品も増えるというメリットもある。

宝箱の数ではなく、宝箱の中身が増えるようになっている。

しかし、ボスの頭がそう簡単に増えるわけがなく。

ダブルの上のトリプルであっても五パーセント。

クワドラプルになると一パーセントだ。

「一番多いのは三つだったわ。次に二つで、あ!一回だけ五個の頭が出たわね」

「うーん、ネル様恐るべし」

その上のクインタプルは、0.1パーセントだ。

たった数回の試行回数で出るわけがないのだが、ネルだけ別の確率テーブルがあるような気がする。

感心しつつ、俺は扉を押し開けるとそこは広い空洞になっている。

「予想はしていたけど顔は三つか」

その空間の中央に鎮座する巨大な顔。

そしてその顔は三つ。

「ネル、倒す手順はわかってるな?」

「リベルタが足を壊している間に私が頭を壊す!!」

「正解。さぁ!狩りの時間だ!!」

歪な形状に不気味さを感じるが、こいつの攻略法は完全に確立している。

恐れるに足らずとはこのことか。

油断も慢心もしないが、迷わず俺は全力で駆けだす。

侵入者を感知し、トリプルヘッドは動き出すがその動きはゴーレムなので緩慢。

俺たちの速度にはついてこれず立ち上がるころには足元に到着。

「首狩り!!」

本来ゴーレム種の防御力というのはかなり高く、斬撃よりも打撃の方が有効になる。

攻撃手段の有無によっては、同じレベル帯のプレイヤーであっても苦戦するほどのタフネスを持っているのだが。

首に対しての特効を持っている俺にとっては、手首足首限定でその防御力を無視することができる。

マジックエッジで大鎌を作り出し、立ち上がろうとしている足の一本を切断。

僅かにぐらつき、そして立ち上がるのが遅くなるのを確認すると、ネルが足の一本に飛び乗り顔面まで駆け抜けると。

「パワースイング!!」

トリプルヘッドの一つの顔を思いっきり吹き飛ばした。

ドゴンと鈍い音が響き巨体が傾く。

さすがにあの重量は吹き飛ばせないかと思いつつ、次にスキルを発動する。

「影法師!」

俺の背後に影の立体を作り出し、わざとらしく敵の目の前に走らせる。

攻撃範囲に入った影法師は無残にトリプルヘッドの手に潰される。

リキャスト時間の三十秒は、短いようで長い。

次の首狩りまでは時間があるが。

「こっちこっち!!」

そこはテクニックでカバー。

心臓打ちを打つにはまだ健在な足の中や、腕を掻い潜らないとダメだから安全に槍で無事な足の一つを攻撃。

「かぁ!?硬いねぇ」

マジックエッジ越しでもわかる硬さと重量感。

突くたびに体が削れるが、それを続けて足を潰すには時間がかかる。

「おっとと」

その間に二本の腕が振り上げられ、俺の方に攻撃してくる。

「遅い遅い」

その腕を攻撃し、さらにヘイトを俺の方に向ける。

足を損壊させた俺の方が脅威度が高く、こっちに集中しようとしている。

三つあるうちの顔二つが俺の方を向き、目が俺を凝視する。

欠けた足はまだ一本。

五つの足が体を支え、立ち上がり、重量感のある足音が空洞に響き渡る。

ビッグヘッドよりも巨体なトリプルヘッドの全高はおおよそ十メートルに届くか届かないか。

足の長さが五メートル前後だからこいつを倒すには足を攻撃して転がしたところで本体である顔に集中砲火というのが物理アタッカーでの攻略の定石。

足を崩すのにはハンマーなどの打撃系が有効で、ネルのハルバードならそれもできるが、アミナとイングリットの時はイングリットがそもそも足払いでバランスを崩してそれをネルが転ばし、アミナのバフでフルボッコという流れができていた。

今回は俺と二人のコンビ。

であれば、俺にできる方法は。

伸びてきた四本の腕を掻い潜り、足首から先が無くなった足で蹴りを放ってきたのを躱し、掻い潜った先にあった足に再び鎌の刃を走らす。

「二本目もらうぞ!首狩り!!」

偏るように足を切れば、アンバランスになった体を四本の足で踏ん張るように支える。

足首がない脚でも支えようとするが、足先がない脚では踏ん張りきれていない。

「転びなさい!!」

転びそうになっている重心の方向めがけて、再びネルのスイングがさく裂。

重心が上にいっているトリプルヘッドの顔は一度バランスを崩すと頭から転び大きな音で地面に激突する。

「腕に注意して攻撃をしかける!」

「わかった!!」

そのタイミングで同時に突撃する。

ゴールドスマッシュを使えばあっという間に倒せるかもしれないが、さすがに最近お金を使いすぎなのでネルには通常スキルとパワースイングで攻撃をしてもらう。

このトリプルヘッドは一度転ぶと起き上がるまで時間がかかる上に、起き上がろうとする行動で半分以上の腕が封じられる。

その間にDPSを稼ぐ。

「地面に落ちれば!!」

頭が目の前にあるのなら心臓打ちも撃てる。

そうやってダメージを蓄積し、首狩りで足を削っていけば転ばすことは容易になる。

そうして、注意深く戦った結果。

討伐時間は三十分ほど。

「見て見てリベルタ!!魔鉄がこんなにでたわ!!」

「おー、アミナに頼んで製錬してもらおうな」

無事にボスを倒し、黒い塵と化したボスが出してくれた宝箱からアイテムを回収するのであった。