軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

22 事後処理

一難去ってまた一難なんて、良くこんなことを繰り返してきたものだと今さら思う。

なんていうか、自分の都合ではなくて他人の都合に、ここ最近振り回され続けてきた。

だからだろうな。

「働きたくないでござる!!拙者、絶対に働きたくないでござる!!」

その反動で、俺は現れた人物の姿を見た瞬間に反射的にバツ印を両腕で作ってそんなことを叫んでいた。

「今回は働かせるために来たわけではない」

現れた人物は公爵閣下だ。

普通こんな態度を庶民が貴族に向かってとれば無礼千万で打ち首になってもおかしくはない。

しかし、働かせ過ぎた自覚があるのか、閣下は苦笑を浮かべつつ首を横に振り訪問の理由は依頼ではないと断言した。

「・・・・・」

さすがの俺もあんな死闘をした後すぐに、さぁレベリングをするぞという気持ちにはなれなかった。

ストレスで色々と情緒不安定になっている自覚はあったから、こういう時に初歩的なミスをするのが目に見える。

日本にいた時もそうだ。

仕事でミスをしてイライラして、ストレス発散のためにゲームをしてもうまくいかず逆にストレスを溜める。

そんな経験が俺に警告し、加えて最近働き過ぎかなぁと思っていたから今日はゆっくりとしていたのだ。

そのタイミングでの登場、またトラブルか!?と身構えるのも無理はない。

ロータスさんとエスメラルダ嬢を引き連れて何もないとは思えないだろう。

ジト目で背後の二人を見れば苦笑気味に笑い、そして公爵閣下の言葉は嘘ではないというのを証明するように頷いてくれた。

「話だけですよ?」

「助かる。お前も当事者として今回の件がどうなったか気になるだろうと思ってな。ロータスに説明させるかとも考えたが、私が直接話すのが筋だろう」

回復魔法というのはやはり便利だ。

毒を受け、かなりの重症だったというのに、たった数日で治ってこうやって話し合うことができるのだから。

状況を確認しているということは治療中も働いていたということだろう。

リビングにいるのは俺とイングリットだけ。

ネルとアミナ、そしてクローディアは買い出しに出ている。

この敷地内にいる人に声をかければ食料くらいは融通してくれるだろうが、そこは自立して生活したいという俺たちの意志だ。

「さて、まずは我々に送り込まれた刺客からいこうか」

と言っても、のんびりとしたい俺に気を遣って一人にはしないが休めるように三人で出かけているのが真相だろうけど。

のんびりとした休日は、公爵閣下たちが来たことによって報告会に変更だ。

その内容に関しては俺自身も気になっている部分なので、ここで知っておけば気兼ねなく休める。

「身元が割れたんですか?」

「いや、お前が教えてくれた以上のことはわからなかった、というのがわかっただけだな」

「……」

「そんな目で見るな。名は知れど顔は知らずという存在を追うのは難しいのだぞ?」

今回の件、間違いなく黒幕がいると思うのだがそう簡単に尻尾を出さないか。

いや、尻尾はつかめたんだよ。

尻尾切りをするにはかなり恐ろしい尻尾だったけど。

「それだと報復を警戒しないといけないってことじゃないですか」

「いや、しばらくはその心配はないだろう」

尻尾の付け根がわからない以上、ここから先も警戒しないといけないというのに公爵閣下は大丈夫だとおっしゃる。

「どういうことですか?相手の情報は一切得られなかったんですよね?」

「一切とは言わん。ある程度の方向性と誰が関わっていたかの可能性は探れる情報が得られた。こっちが警戒していると伝えることはできる」

何の手掛かりもないというわけではなく、俺の情報を基にして手掛かりは得ているということか。

「加えて、今回使ったのが手練れだったということも向こう側が警戒する要因になりえる。これが使い潰しの駒であればそうではないが、向こうからしても今回動員した人員は切り札に近いはず。動揺して今は慎重に動こうとしているだろう」

「あいつ以上の手練れって早々に用意できませんよね」

「ああ、それもあってしばらくは安全が確保できたはずだ」

迎撃に成功してしまったから報復されると思っていたが、逆に切り札を打ち破られてしまって警戒心は高くなったが手出しができなくなったということか。

「それでも俺たちが危険なのは変わりないのでは?」

「では逆に聞くぞリベルタよ。自信を持って送り出した刺客が子供に撃退されたと報告され信じると思うか?」

「……」

「普通に考えれば私の手の者の誰かに撃退されたと考えるだろう。可能性が高いと思われるのはクローディア司祭だが、逆に彼女の場合は教会に属している司祭という立場を持っている。下手に手を出せば教会を敵に回し、最悪神罰が下る」

しかしそれでも不安になると思ったが、公爵閣下の指摘にハッとなる。

俺はまだ子供、そしてこの世界では子供は社会的弱者とまでは言わないが、強いとは決して言えない存在だ。

そんな存在が裏の世界で名を馳せるような狂楽の道化師に勝ったと報告される姿を想像してみる。

見たものを報告するのが密偵だが、その報告の内容が奇天烈すぎると見ていないものが信じるのは相当難しい。

闘技場でネルがアレスと戦ったという事実はあり勝ってみせたが、その報告でも果たして信じてもらえるか。

現代日本みたいにカメラ映像という確認手段があればまだ受け入れがたいが信じるという選択肢が出るが、この世界の貴族の思想を考えると子供が勝ったという事実を受け入れるとは到底思えない。

となれば側にいる実力者が倒したという、事実から逸れた想像の方を信用してしまうのも納得だ。

「情報的優位はこっちが持っている。真実を公言するつもりはないから、相手はこっちを探ろうとしてくるだろうな」

「そこを逆に捕らえると?」

「ああ、わざわざ情報源が向こうから来るのだ。その機会を逃す必要もあるまい」

何故狂楽の道化師を動かしたか。

その理由を探る必要のある公爵閣下の言葉にひとまずは納得する。

「話は変わりますけど、あいつの死体ってどうしました?」

「教会から司祭を呼び、浄化し炎で燃やし灰にした。残った灰も聖水に浸した後に大地に撒いた」

狂楽の道化師の背後関係を個人の俺が探れるわけもなく、これ以上探ったら藪蛇になるのも目に見えている。

こういうのは組織を持っている人物がやるべきだ。

なので俺としては、復活も懸念している狂楽の道化師の死体の行く先を聞いてみたが。

「まさか、言った通りにやっていただけるとは」

「お前の懸念は冗談では済まん。私としてもそう思っても仕方ないほどの狂気を直に感じ取っているのだ。ロータスに監視させすべての行程を行わせた」

FBOでは回復魔法の中には一応蘇生魔法は存在する。

効果はリスポーン前に使用すればその場で蘇生され回復するというゲームでよくあるタイプの蘇生魔法だ。

だけど、この世界で蘇生魔法というのはどういうカテゴリーで存在しているのかがわからない。

「蘇生魔法、教会でも伝説とされる究極の魔法だ。それを警戒していると言われたあの時は本当に驚いたぞ」

「まさか誰も持っていないとは思いませんでしたけど」

習得条件がFBOと一緒であるのなら確かに誰も持っていないのもうなずける。

あれは特殊クエストを達成しないと習得できないスキルだ。

適正レベルはクラス7の中盤。

装備を整えればクラス5の後半でも可能と言えば可能になるが難易度は跳ね上がる。

現状、復活を警戒しないといけない手段は三つ。

一つはこの蘇生魔法という王道の方法。

「ひとまずは復活に関しては警戒しといた方がいいですよ。と言っても死霊術師とかに対しては根本的に肉体を喪失させましたし、教会に浄化を依頼しましたから魂の方もなくなっているとは思いますけど」

二つ目は、FBOでも存在した死霊術師、ネクロマンサーと呼ばれるビルド構成の存在だ。

このビルドは、主にアンデッド系のモンスターをテイムし使役することとアンデッドを強化するスキルを中心に構成したものだ。

闇属性に特化することもあり、光属性に多大なる弱点を持つ構成だが、状態異常系のアンデッドを大量に使役することから、一定以上の強さは持っていた。

だけど、この死霊術師ビルドであっても死者を呼び戻すようなスキルはなかった。

あくまでアンデッドを使役するという、モンスターテイマーの派生形だ。

とあるNPCではこの術を研究し恋人を取り戻すということを六十年も続けている話もあるが、それでも達成していない。

死者蘇生は、FBOでも不可能とされるスキルの一つ。

蘇生魔法も、あくまで回復魔法の上位互換みたいな感じで設定されていた。

「あと面倒なのは堕ちた錬金術師のホムンクルス制作ですけど、さすがに土から奴の因子を採取しようとする馬鹿はいないと信じたいです」

「念のため、奴の灰を撒いた土地には新しく土を被せている。さすがにもう探ることはできないと思うが」

「どこにでも狂気じみた思考で行動して成果を出す輩はいるんで、そっちの方は警戒しておいた方が良いですよ」

そして最後の三つ目が、 人造人間(ホムンクルス) 。

これはヴィラン系のNPCの中にいるよくある新人類を作ろうとしている系統の話だ。

人を作るのは神の領域、それを侵すことは禁忌とされているのが常識なのだが、邪神教会の面々はそんな常識こそ非常識だと宣う。

邪神の新しい体を作ることを目指して研究に邁進する輩が法という人のルールを守るわけもなく。

方々で自己中行動を披露してくるのだ。

さすがの俺も、あいつともう一度戦えと言われたらいやだと答える自信があるので、ここまで徹底して蘇生の妨害を提言したのだ。

ここまでが狂楽の道化師の顛末と考えると、不安は残るがしばらくは安心ということになる。

「それで、次は」

「私の話になりますわね」

これ以上は相手の出方と公爵閣下の抱える情報収集専門のチームに任せることになるので、続報を待つとしよう。

となればもう一つの案件、婚約破棄騒動の原因となった向こう側の家と、狂楽の道化師の関係についてだ。

「正直に言えば、こちらに関しても芳しくはありませんわ。向こうの家は暗殺行為を否定していますが、私たちとしてもはいそうですかと鵜吞みにするわけにもいきません」

さすがに向こうの家が用意した人材に殺されかけて何もしないということはあり得ない。

徹底的に調査と追及を繰り返しているようだが。

「と言っても、どうやら向こうの家も利用されたという線が濃厚なのも事実です」

「暗殺というには杜撰すぎますよね」

「ええ、あえてと言うにも無理がありますわ」

こっちの方も芳しくないようで。

「でも調査って進みます?こっち側の要求で大陸からの永久追放を盛り込んでますよね?」

「私たちに対応しているのはシンですわね。当人に関しては泣きわめきながらもすでに東の大陸にある大使館の方に送還することで片を付けたようです。リリィという女性に関しては、まぁ、無事だと良いですね」

貴族同士のトラブルはそう簡単には終息しないのはわかっているが、エスメラルダ嬢もやっぱり貴族令嬢というだけあってそこら辺に情け容赦という物がないらしい。

扇子を取り出し、口元を隠すその仕草は悪役令嬢という言葉を脳裏によぎらせる。

まぁ、脳内ピンクがどうなろうとも俺には関係のない話だ。

俺たちに喧嘩を売った自分の迂闊さを呪うが良い。