軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12 反撃の狼煙

荒くれ者を差し向けてまでレベリングを妨害してくるというのなら、こっちにも考えがある。

さすがの俺も今回の件に関しては思うところがあった。実害がなければ狂楽の道化師だけに集中して対策をしようと思ったが、こういう手段をとってくるのなら容赦はしない。

幸い最低限度のクラス3のレベルカンストはできている。

理想を言えばクラス4に持っていきたかったところだが。

『リベルタ クラス3/レベル150

ジョブ 無名の暗殺者

称号 かくれんぼ巧者

基礎ステータス

体力600 魔力400

BP 0

EXBP 0

スキル9/スキルスロット11

槍神術 クラス10/レベル100

鎌術 クラス10/レベル100

隠形術 クラス10/レベル100

首狩り クラス10/レベル100

心臓打ち クラス2/レベル15

空歩 クラス10/レベル100

マジックエッジ クラス10/レベル100

サイレントウォーク クラス5/レベル33

影法師 クラス3/レベル11 』

この状態でも格上殺しができるスペックはある。

暗殺者の真骨頂はクリティカル攻撃による与ダメージを増やすこと。

防御無視のクリティカル攻撃は立ち回り次第では十二分に格上の命を削りきることができる。

防御力という面では少し不安が残るが、敵のかく乱に隠形術によって強化されたスニーキング系スキルが役に立つから正面切っての戦いでも不意を打てるような構成になっている。

槍系統のパッシブスキルは最終段階の神まで進めて、槍の攻撃力が常時三百パーセント上昇した状態になるという破格の攻撃力を達成しているのも大きい。

この世界の常識で考えれば、通常攻撃が常時四倍なんて考えられない火力だろう。

EXBPを加味すれば、俺のレベルは完全に詐欺扱いになる。

次は鎌術をあげて、鎌槍の状態での攻撃力を常時六百パーセント上昇にするのが目標となる。

通常火力が七倍。うん、バグだと言われてもおかしくない数値だ。

加えて暗殺者のジョブで必要なスキルは確保した。

確保できたスキルは、サイレントウォーク、心臓打ち、影法師。たった三つだけだが獲得できているのは大きい。

サイレントウォークは文字通り足音を消すスキルだ。

ただ足音を消すだけ?と思うかもしれないが、足音というのは相手を一度見失った後に再発見する一助になる戦闘音なのだ。

それがないだけで、発見が数秒単位で変わってくる。

対人戦はもちろん、対モンスター戦でも重宝するのだ。

心臓打ちは首狩りと似たような技で、心臓部分に攻撃することによって防御無視のクリティカルダメージが入るというスキルだ。

首狩りと同じで、心臓部分以外の攻撃は無効化されてしまう。

首がない種族、スライム系統にあるコアにも有効だから、重宝する。

欠点は、心臓という一ヵ所しか通用しないということで非常に当てづらいスキルだ。

その代わりに攻撃力はお墨付きだから重宝はする。

これで首と心臓の二点で必殺できるようになったから、かなり戦術の幅が広がったと言える。

そして最後の影法師だが、有体に言えば囮スキルだ。

攻撃能力も防御能力も一切ないが、代わりに自分の影を立体的に登場させて自由自在に動かすことができる。

遊びにしか使えないと思われがちだが、視覚的に真っ黒でも人影が動けば自然と反応してしまうものだ。

それが死角から飛び出してきたらなおのこと。

デコイスキルは戦闘では何かと重宝する。

それが咄嗟のことになると、一瞬だが相手の注目をすべてデコイに向けることができる。俺自身から相手の意識を逸らすことが可能なのだ。

そんなスキルを携えて、これから俺が何をするかと謂えば。

「これよりエスメラルダ様魔改造計画を実行します!!」

「僭越ながらお手伝いさせていただきます」

「僕も頑張るよ!」

「 私(わたくし) なにをされますの?」

やられたらやり返す。

倍返しというわけではないが、嫌がらせがてら相手に仕返しを実行しようと決意した。

今回の催しの参加者は、計画実行筆頭の俺、サポートでイングリットとアミナ。

そして魔改造対象のエスメラルダ嬢とお付きのメイドさんがたくさんだ。

「決闘まで残り一週間、その間にエスメラルダ様にはとことんまで綺麗になってもらいます」

魔改造と称したが、やることと言えば俺の知識を総動員して、どこまで彼女の美貌を磨き上げられるかという話だ。

この大陸で確保できる素材に限るが、それでも換金アイテムの中には美容系のアイテムがいくつもある。

健康グッズから化粧品、さらにはダイエット食品らしきものも存在して、そのどれもが美容を気にしているNPCの好感度上昇アイテムなのだからその効果は折り紙付きなのだろう。

たださすがにぶっつけ本番でそれを使うわけにはいかず、パチパチパチと周囲で拍手するメイドさんたちにご協力を頂いている。

効果はこの人数のメイドさんが揃って拍手していることが証明している。

メイドさんたちの肌が潤っていたり、髪に艶があったり、ウエストが引き締まっていたり、爪が綺麗になっていたりと様々な効果を実感している面々故に、主が首をかしげていようとも積極的に協力してくれる。

「お話はお父様から事前に伺っていましたが、何故このタイミングで?」

「嫌がらせです」

「私を綺麗にすることが?」

「はい、向こうにつまらない相手に目移りして浮気したことを後悔させてやります」

意趣返しというか、逃がした魚は大きいと実感させたいと言えばいいのだろうか。

暴漢まで使ってこっちに妨害工作をしてきたのだ。

ただでさえレベリングが滞っているというのに、そんな妨害工作を仕掛けてくるのであれば、こっちはこっちで相手の精神とプライドに攻撃を加えるだけだ。

やっていることがみみっちいかもしれないが、決闘で正面切って相手をボコボコにするのはネルがやってくれるので、俺は俺で逆襲の方法を模索した結果がこれだ。

「元からエスメラルダ様の素材は最高なんです。それでなんで頭がピンクな女性の方に行くのか全く理解ができません」

おまけに、俺の推しのイリス嬢の美人姉であるエスメラルダ嬢を振っているのだ。

元から腹には据えかねていたが、自分の好みを否定されたようでむしゃくしゃする。

鏡の前に座っている彼女の姿は原作時のイリス嬢を少し大人にした雰囲気だ。

美人姉妹だけあってとても似ていると言っていい。

原作では心が荒んでいて笑うことが少なかったイリス嬢であったが、きっと平和に成長していたらこんな素敵な女性になっただろうなというのがエスメラルダ嬢なのだ。

「褒めていただけるのは嬉しいですが、どことなく私怨を感じるのは私の気の所為でしょうか?」

「私怨ですよ?色々と邪魔をされている鬱憤を晴らすためにやっているので、八つ当たりではなく正当な報復ですけど」

俺が冗談交じりに、貴女を美しくすることで復讐になると言うとエスメラルダ嬢はクスクスと上品に笑い始めた。

「あなたにはご恩がありますし、私としても今回の件は腹に据えかねているのでご協力するのは良いのですが、その、殿方に肌をさらすのはちょっと」

「ご安心を。俺は指一本触れませんので。やるのはアイテムの用意とどういう風に魔改造するかの説明だけですよ。これから施術してくれるのはメイドさんたちです」

そのエスメラルダ嬢の斜め前に立ち、俺は用意していたアイテムを次々に取り出す。

アミナのカンストした錬金術スキルを駆使して作った美容換金アイテムたち。

精霊の祝福ほどではないが、大量に手に入れた精霊石を元手に色々な素材を買いあさって作ることに成功した品々だ。

「まずは米化粧水は知っていますよね?」

「はい、私も愛用させていただいてますので」

知っている物は説明を省き、次に取り出すものを用意する。

「じゃぁ、この脂肪燃焼オイルというのは?」

「なんですか、その女性の欲望を突き詰めたような品は?」

「これはとあるモンスターの粘液に植物系モンスター由来の油を混ぜて火属性の精霊石で加工するとできる代物なんですけど」

小瓶に入った商品名はそのままにしている。

掌にオイルを垂らして、少し気になっている部位に当ててマッサージしてやると少しずつ脂肪が燃焼して、理想のラインが手に入るとフレーバーテキストに書いてある品だ。

いや、まぁ、これでも簡単に書いているけど。本来のフレーバーテキストはもうテレビショッピングかとツッコミを入れるくらいに売り文句がつらつらと書かれているんだよな。

「メイドさんたちに好評だったのは二の腕周りや少々言いにくい箇所への使用でしたね」

「あなたたち大丈夫でしたの?」

「はい、お嬢様。少々体が熱くなる程度でしたがその熱も三十分ほどでなくなりました」

そんな怪しげな商品、しかも美容に関してご都合主義過ぎないかと疑わしく思い、使ったであろうメイドに聞いてみると、そのメイドさんはノリがいいのか見事にくびれた腰回りを強調するようなポージングをしてどうだと言わんばかりのドヤ顔をしてみせた。

「・・・・・いいですわ。後で使ってもらいましょう」

見る人が見れば、それこそ同じ女性であるからこそ、以前とは明らかに変わったメイドさんのプロポーションを目の当たりにして、その品の効果に驚き心の中で気になる箇所をピックアップし、そしてあくまで使ってあげるというスタンスを崩さないエスメラルダ嬢の顔は、覚悟を決めた戦士のような表情だ。

「次にこちらですが、ある植物系のモンスターから採取される貴重な花蜜と、雫草の花に水の精霊石を組み合わせたトリートメントで」

であればこっちはこっちで話を進めて良い物だと勝手に解釈してもらうべく、商品説明を続ける。

「使用結果が」

「使いましょう」

「あ、はい」

劇的ビフォーアフターってわけじゃないけど、髪を強調するメイドさんの姿を見て食い気味に肯定されて俺は頷く。

ここまで来たら次々に物を説明していくしかない。

「こっちは爪を綺麗に」

「使いましょう」

「これは歯を白くしてくれる」

「使いましょう」

「これで姿勢の矯正が」

「使いましょう」

「シミそばかすに」

「使いましょう」

「これは」

「使いましょう」

「せめて説明くらい聞いてくれませんか?」

ただすべての品に対して全肯定されてしまえばさすがに苦笑くらいは浮かべてしまう。

全ての素材を用意する費用は公爵閣下に請求しているから問題ないけど、さすがに何も説明をしないまま使うのもいかがなものかと。

「あなたが用意してくれたものです。それを信用しないでどうするのです?」

不安はないのかと聞いて、返ってくる言葉がその台詞というのはずるいと思った。

「うーん」

「照れてますの?」

「まぁ、はい」

「ふふ、あなたにも可愛らしいところがあるのですね」

「男は可愛いというよりはカッコいいと言われたい生き物なんですけどね」

「あなたのかっこよさは知っておりますわ」

照れ隠しに、カチャカチャとアイテムを取り出し説明をしようとしたが、その時に目が合いそして優し気に微笑む彼女の顔を見て手が止まってしまった。

「最初に会った這竜の時も、王都がスタンピードで窮地に陥った時も、あなたは文句は言いつつも体を張って私たちを救ってくれましたわ。殿方に対して私ははじめてかっこいいと思いましたの」

「あー、えーとそれはどうも?」

面と向かってカッコいいと言われるのは、なんというか背中がむず痒い。

照れ隠しをしようにも、きっと俺の顔は真っ赤になっている。

「ですので、そんなカッコいい殿方の可愛らしい一面を見られて私は嬉しいですわ」

「もしかしてからかってます?」

「はい、少しだけ。ですがそれ以上に本心ですわよ?」

「あ、ハイって。そこのメイドさんたちなんでニヤニヤしてますかね!?」

この会話は分が悪い、早々に話を変えないとまずい。

そう思って換金アイテムの説明に戻ろうとしたがそれよりも先にこちらをニヤニヤと見るメイドさんたちを見つけて思わずツッコミを入れるのであった。