軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

26 レイド戦準備

全力でジョブを取りに行ったということを忘れて、無我夢中でライブイベントを達成。

燃え尽き症候群を発症しかねないほど、パーティー全員が全力を出し切った結果。

「エヘヘヘヘ」

「ブイ!!」

へらへらと頬を緩めて、ステータスを見るアミナと、元気よくVサインをするネル。

帰ってきてからずっとこれだ。

よっぽどジョブが取れたのが嬉しいらしい。

「おめでとう」

「ありがとう!!」

低確率のはずなのに、しっかりと至高の歌姫と万能の商人というそのビルドにおいては最高峰のジョブを獲得して見せた。

そこに妬まず、素直に称賛する。

「でも、リベルタ君が言ってたスキルは手に入らなかったけど大丈夫?」

「そうね、私もゴールドスマッシュが手に入ると思ってたんだけど」

「スキルはスキルで別クエストで取らないと獲得できないんだよ」

なにせ、これでネルとアミナは完全にレベル最大まで育成できることが確定したのだ。

クラス3の完全育成した二人のレベルとステータスがあれば、十二分にイナゴ将軍に勝ち切ることができる。

公爵閣下からの情報だと、俺とイングリットの育成は間に合わない。

「ラストソングはクラス4になったら取る。代わりにアミナには二つのスキルを取ってもらうぞ。一つはセンターライトって言うスキルを取ってくれ」

「センターライト?」

だから今は育成を進められるアミナとネルに集中して育成を進める。

「歌姫だけじゃなく、歌手系のジョブが取れる共通ジョブスキル。効果は使用者に上から光を浴びせ注目度をあげるスキル」

「効果って、ただ光るだけ?」

「自身へのバフ効果はないけど、その分敵からの注目度が格段に上がるスキルだからヘイト管理に便利なんだよ。下手なヘイト集中スキルよりも敵の注目を集めるからな」

センターライトの有用性はヘイト管理のやりやすさ、魔力消費コストも低い上に、効果範囲も広い。

アイドルライブと言われるレイド戦では必須のスキルだ。

「スキル自体は簡単に取れるクエストだから、明日朝一に取りに行くぞ」

「わかった!もう一つは?」

「健声のスキルだ」

「けんせい?僕、剣を使うの?」

「そっちの剣聖じゃないよ。健康な声と書いて、健声。歌唱系のスキル発動コストを低減して喉への負担を減らしてくれるスキルだ。これがあれば長時間歌っても平気だ」

そしてもう一つの健声という当て字を使ったようなスキルだが、これが地味に役に立つ。

スキルというのはクラスが上がる程に発動のコスト管理が重要になっていく。今のアミナは全力で歌い続けて平気だと思っているかもしれないが、強力なスキルは軒並み魔力消費などのコストがかさむ。

何度も何度も連続してスキルを使うと、消費に対して回復が追い付かなくなり、スキル発動が止まる。

継続してバフを振りまき続けるアミナのような歌手系のジョブにとってはその空白時間は致命傷だ。

それを回避する役割を持っているのがこのスキルだ。

「へぇ、すごいスキルなの?」

「地味だが、かなり重要なスキルだぞ」

クラス3で増えるスキルスロットが三つ。

現状アミナのスキルスロットの空き枠は三つでクラス3で確保できるスロットと合わせて六つ。

このうち四枠はひとまずジョブクエストで獲得できるジョブスキルでスロットを埋める。

短期決戦で勝てる相手ばかりじゃない。

継戦能力を高められるスキルはダンジョン攻略でもかなり役にたつのだ。

ひとまずアミナはこれでいい。

場合によってはスキルショップか公爵閣下のところに行って歌系の中で攻撃力をあげられる歌唱スキルがあれば欲しいところだからそっちの方も探しておくとする。

次はネルだ。

「ネルのスキルだけど、まずはさっき言ってたゴールドスマッシュを取りに行く」

「わかったわ」

ネルはうちのパーティーでの重要な火力要員だ。

今回のレベリングと手に入れるスキル、ゴールドスマッシュがあればクローディアの火力をも上回る。

このスキルは少し変わっており、スキルレベルの上げ方が使用回数とかではなく消費した金額によってスキルレベルが上がるのだ。

一ゼニイコール一ポイントみたいな感じで、お金を使えば使うほどスキルレベルが上がっていく仕組み。

「あと、ネルにはバンクも覚えてもらうぞ」

「バンク?」

「ああ、ゴールドスマッシュと併用して使うスキルだ」

そしてゴールドスマッシュと相性のいいスキルがこの、バンクと呼ばれるスキル。

スキル名から察することができるが、このスキルは銀行の役割を持っている。

「スキル効果はいたって単純、お金を預けるスキルだ」

現物のお金を代価として火力をあげるゴールドスマッシュを使うために毎回貨幣を持ち歩かないといけないのはかなり大変だ。

重量的な問題もあるし、そして何より持ち運びが不便だ。

それを解消してくれるのは商人だけが覚えることができるバンクというスキル。

「お金を持ち歩くためのスキルって言うわけね」

「ああ、お金だけなら無限に収容できるスキルだし、盗難の心配もない。そしてこいつのすごいところがいくつかあって一つは商人が持つ貨幣消費系のスキルを発動した際預金から引き落とすことができるんだ」

スキル説明をすると、確かにとネルは頷いてくれる。

お金を一々持ち歩かないと使用できないスキルというのは、不便極まりないし、火力を出すために一々金額を数えないといけないのは発動への手間もかかる。

それを解消するためのスキルというわけだ。

「あとはスキルレベルを上げると金利が上がる」

それ以外にもこのスキルには放っておいてもお金が増えるという商人にとっては破格の能力を持っている。

それが金利システム、自分のスキルに自分のお金を預けるだけでどうやってお金が増えるんだという話だが、検証班曰くこの世界の商売の神ゴルドスのところにお金を預けて、ゴルドス神が投資か何かで金を転がしているのではという説が濃厚。

実際のシステムはわからないが、お金を預けて放置するだけで勝手にお金が増える。

「金利はクラス10まで上げると最大五パーセントの年利になる。一年で五パーセントしか増えないと考えるかもしれないが、百ゼニを一年スキルの中に入れているだけで百五ゼニに増えると考えたらすごくないか?」

現代日本では考えられないほどの金利、過去に定期預金でそれくらいになった時期があったが、今では夢幻と言われるほどの金利だ。

「そうね、一年に一度しか金利がつかないとしても、お金を入れておけば置くほどお金が増えると考えればすごいスキルね」

「まぁ、その分スキルの上げ方が特殊すぎてなかなかレベルが上がらないスキルだけどね」

「レベルの上げ方は?」

「二つ方法があって、一つはさっき言った金利で得た金額がそのまんま経験値になるやつと、もう一つは投資という方法」

そんなバンクスキルだが、クラス1のレベル1ではそんな金利は得られない。

それでも現代日本と比べればかなり破格な金利をしているが、ゴールドスマッシュを使うことを考えるのならここで金策を一つでも増やしておくのは必須だ。

「投資って?」

「お金がないけど将来性のある商売にお金を貸して、利益が出たら見返りと一緒にお金を返してもらうって言う方法。バンクというスキルを得るとどういうわけか自動で投資先を見つけてくれて神様の名のもとにお金を投資できるようになるんだよ」

投資という一つのスキルとして独立してもいいのかもしれないにも関わらず、バンクというスキルの中に組み込まれているこのシステム。

商人プレイをしている時も思ったが、これ一つのスキルで一つのゲームが作れるのではと思うくらいにシステムがしっかりしている。

「まぁ、そのシステムについてはおいおい教えていくから、今は使わないでくれ。下手に使うと破産するから」

お金を送れば絶対に成功するような投資先だけではないのが嫌らしいところなのだ。

過去に俺もゲームだから簡単にできるだろうと思って大金を突っ込んで失敗した覚えがある。

今すぐスキルレベルを上げる必要がないから、ひとまずは放置でいいというわけだ。

一年に一度しか得られない経験値と、失敗すればお金を失うリスクのある経験値獲得方法。

ピーキーすぎるスキルなのだ。

「わかったわ」

「よし、それじゃ。少し疲れているけどまずはネルのゴールドスマッシュを取りに行こうか」

「?そんなに簡単に取れるの?」

そんなバンクを取得する方法は今日は実行できないので、ひとまずはアミナと合わせて明日以降にして、今は一番簡単にとれるゴールドスマッシュを取りに行くとしよう。

「使う道具はたった二つ」

「ええ」

イングリットが夕食を作り終えるまでの間に、さっさと取ってしまおうと、マジックバッグの中からモチダンジョンの鍵を取り出す。

「一つはこのダンジョンの鍵、正確にはボスに用事があります」

「倒すってことよね?」

「その通り。そしてもう一つはこの丈夫な皮袋に入った重量感があるお財布です」

「……まさか」

「うん、ゴールドスマッシュはいくつか条件を満たさないと覚えられないスキルなんだが、その条件が、一つ商人であること、二つ千ゼニ以上入った財布を武器にすること、そして三つその武器で敵を倒すことだ」

そして続いて取り出したのはいくつか小分けにしておいたお財布の一つ。

これで何か買って来いというわけではなく、これを使ってカガミモチを殴り倒して来いという意味で、ネルに鍵と財布の二つのアイテムを渡す。

「習得条件は確率だけど、ボスを倒せば比較的高確率でスキル習得できるから頑張ってくれ」

「……わかったわ。でも、リベルタ」

「なんだ?」

「お財布って武器じゃないわよ」

「クレームはこのスキル習得方法を設定したやつに言ってくれ」

「言えるわけないじゃない」

ネルのツッコミに同意して、俺は苦笑しつつモチダンジョン攻略を始めるネルの背中を見送る。

ネルなら一周もすれば習得してくれるだろうと思いつつ、再びステータスを見てニヤニヤとしているアミナに振り返る。

「アミナも、明日は早起きするから今日は早めに寝ておくんだぞ」

「早起き?なんで?」

「センターライトを得るためには朝日を浴びる必要があるから」

そしてアミナの習得するスキルの獲得条件のために今日は早く寝るように言っておく。

「????」

「訳が分からないって顔してるな」

「だって、なんで朝日を浴びるのがスキルを覚える条件になるの?」

「そういうスキル取得条件だからだよ。センターライトのスキル獲得条件は三つ、一つは歌い手系のジョブを身に着けていること、二つは強い光をその身に浴びること、そして三つ目その光を浴びている姿を大勢の人に見てもらうこと」

センターライトの獲得条件もなかなか面倒だが、この王都には日の出前から活動している住人が多くいることを考えれば普通に獲得できるだろう。

「ええと?」

「すなわち、明日は日が昇る前に起きて市場の近くの屋根の上まで飛んで行ってそこで一曲披露してくればいい」

条件をあげ連ねても、アミナには理解できなかったようで、首をかしげて頭の上に疑問符をあげてしまった。

仕方ないなと苦笑しつつ、簡単に説明してみるとパァっと笑顔になり。

「任せて!」

「その時にクローディアさんも連れて行ってくれよ。万が一のことがあったら大変だし」

「はーい」

翼の手でムン!!っとガッツポーズを決めるのであった。

屋根の上で朝日を浴びながら歌うアミナは相当目立つだろうから、普通にセンターライトの習得はできるだろう。

「あとは、健声とバンクだけど」

この二つのスキルも明日中には取得しておきたい。

スタンピードは目前、公爵閣下が時間稼ぎをしてくれているみたいだけど、いつまでも持つわけではない。

てきぱきと次の作業の予定を組む。

「アミナー」

「なに?」

健声の習得条件は歌唱スキルを使った後の喉のケアによって確率で習得できる。

「朝市に行ったら、ついでにリンゴと蜂蜜とあと生姜も買ってきてくれ」

こればっかりは歌ってはのどのケアを繰り返していくしかないな。

すりおろしリンゴに、蜂蜜と生姜を加えて白湯で溶かしたものを飲めば良かったはず。

バンクに関して言えば金庫を買ってそこにお金を入れて鍵を閉めて、そしたら金庫を開けてお金を出すを繰り返せば確率で取れる。

どっちもそこまで低確率ではなかったから問題はないはず。

「あとは、明日ガンジさんのところに行かないとな」

問題は俺たちの追加装備が間に合うかどうか。

頼んでからかなりの日数が経っている。

時間的には完成していてもおかしくはないのだが連絡はまだ来ない。

アレがあるかないかで攻略の難易度に大きく差が出るからできれば完成してくれた方が良いんだけどなぁ。