軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

25 ギフテッド

「リベルタ様、公爵様からお手紙が届いております」

「え、このタイミングで?なんだろう?」

転移のペンデュラムを使って、ひとまずオークの森から帰還。

片づけを終えたらジンクさんの店に向かって、アミナアイドル化計画の話を、俺たちからの出資の件を含めてネルの両親と話すつもりだったんだけど、この家のポストに手紙が入っていて、封蝋はエーデルガルド公爵家の家紋。

頼みごとの進展でもあったかと思ったが、頼んだのはつい数日前、さすがに情報が入るのが早すぎではないだろうか。

もしかして手紙での呼び出しか?

封蝋を割って、中身を確認してみると。

「……んぅ?」

思わず変な言葉が出てしまった。

「どうかなさいましたか?」

いや、正直、なんでそうなったとツッコミを入れたくなった内容で、それが顔にも出てしまったのだろうか、イングリットの心配そうな声に俺はどうするかと迷いつつ。

「なんと言えばいいか。自分から名乗り出ているわけではないけど、一応俺、神様から力を与えられている存在っぽい扱いを受けているよね?」

「はい、そうです。リベルタ様の知識はこの世界の真理を解き明かす唯一無二なモノ。それを神のご加護以外なんというのでしょうか」

「俺からしたら努力の結果なんだけど、その知識とわざわざクローディアさんが保護者をやってくれているから、エーデルガルド公爵からも神託の英雄かもしれないくらいの認定は受けてたわけで」

素直に手紙に書かれていた内容を話すことにした。

不安そうなイングリットの声に、ネルやアミナ、そしてクローディアも集まり、そこで改めて俺は手紙を振りながら言い放った。

「そんな話を根底から覆すような英雄が他の公爵家で現れちゃったみたいで、今城が大盛り上がり中」

「「「「?」」」」

しかし、俺の話を聞いてもも彼女たちは理解できないようで、揃って首をかしげてしまった。

「そうなるよねぇ。俺も、何言っているかわからないよ」

俺が英雄候補だと思われていたけど、実は別に英雄がいましたって言われても、はぁとしか言い返せない。

「エーデルガルド公爵は、その英雄を本物だとは認めてないみたいだけどね」

実際、エーデルガルド公爵も俺のことを英雄じゃないと否定するために手紙を送ってきたわけじゃない、まだ民には秘匿している状態で、いずれ公開される流れになっているから混乱しないようにという通告だ。

「エーデルガルド公爵が認めていない。となると、その新しい英雄候補が本物ではないと公爵自身が判断できる要素があるということですか?」

その妙な言い回しにクローディアが質問してきたので俺は頷く。

城の中の貴族派閥では、ほとんどが英雄の誕生に喜び舞い上がっている様子。

それを発見した城蛇公爵こと、ボルトリンデ公爵のことを称える声が絶えないようだ。

そのなかで、反対寄りの中立を選んでいるのがエーデルガルド公爵一派と王家というわけだ。

「手紙に続きがあってな」

そもそもの話、俺自身に英雄であるという自覚が薄いから、この程度の反応で済んでいるけど、普通ならこの話を聞いて自身の立場が脅かされていると危機感を抱くべきだ。

けれども変顔をさらしてしまったのはこの後半の内容が原因だった。

「その英雄だと思われている少年、ジャカランっていうんだけどさ」

エーデルガルド公爵からの話を要約すると、城蛇公爵ことボルトリンデ公爵が神の加護を受けたと思われる身体能力を持った少年を保護したということ。

子供が大剣を振り回し、王の御前で行われた模擬戦でクラス3の騎士を吹き飛ばし、そして圧勝してみせた。

その時に王様の命令で、その少年のステータスも見せられ、クラスは1でレベルが10と勝てるはずのないステータスだったこと。

「俺が探している、ヤバイ三人衆の一人の名前もジャカランって言うんだよ」

そしてそのステータスにあったスキル。

本来であれば少年には取得することができないはずのスキルがそこにあった。

「暴神のスキルがあったから、間違いないんだよねぇ。いやはや、とんでもない爆弾を抱え込んじゃったなぁ」

神の名を冠するスキル。

これは武術や魔術や技術の極致に至った達人のみが取得できるスキルであるが、聞けば年齢は十五歳と若く、騎士に勝ったのも武術ではなく、ただの暴力と言えるような野生染みた力だったとのこと。

それもそのはず、暴れる神と書いて、 暴神(ぼうじん) は強化スキルの中では破格のステータスアップスキルであるが、代償として武術や魔術といったパッシブスキルが覚えられなくなる、フィジカルバーサーカースキルなのだ。

こういうデメリットが大きく、代わりに強大な力を得ることができるスキルは生まれた時から持っているケースが多い。

そんな生まれながらのスキルを持っている奴をギフテッドと俺たちは呼んでいた。

乾いた笑いしか出てこない。

「いやぁ、困った困った」

エーデルガルド公爵に事前に説明して探してもらおうとしていたことがこんな形で役立つとは思いもしなかった。

暴神スキルの効果は、ステータス値の莫大な上昇。体力、魔力ともに十倍以上引き上げるっていう、スキルスクロールでも存在しない、神から与えられるしか手に入れることができないユニークスキル特有の馬鹿げた恩恵であるが。

「下手したらこの国滅ぶわ」

しかし過剰な力に対する代償がひどいのだ。

まず最初に上がるのは経験値テーブルの増加だ。

その倍数は実に十倍、人の十倍強くなる代償にその必要経験値も十倍になる。

これはいい、正当な代償だと思える。

問題なのは代償がこれだけではないということ。

神が暴れる衝動を押し付けた代わりに力を与えたとしか思えないほどに、破壊衝動が増え、我慢耐性が低くなる。

スキルレベルが上がれば上がるほど、破壊衝動は増え、そして我慢耐性が低下し、最終段階まで進化すると、理性を溶かした破壊の限りを尽くす獣が爆誕するのだ。

「それって大変なことじゃない!!」

「一応、公爵閣下にはこのことを説明してあるんだけどね。レベルを上げると自然とスキルも成長してその身体能力が上昇して、暴力性が増すって」

ステータス上昇に比例するかのように、暴力性が増す。

最初は御せると思っているような子供であっても、成長すれば手が付けられなくなる。

確実に倒すには成長しきっていない今がチャンスなんだけど・・・・・

「貴族が守って手を出せないということですか」

「ネルの心配はわかるし、何とかしないといけないんだけど、大貴族が後ろ盾になっちゃってるからなぁ。いや、うん、神っていう名のついたスキルを持っているから英雄かぁ、わからなくはないけど、なんでこいつを選んじゃう?」

貴族という面倒な存在がガードに入っちゃうから正面から倒すことはほぼ不可能。

暗殺を狙うしかないのだが、それをしたら貴族同士で疑心暗鬼になって国が荒れるのが目に見えている。

「……」

「リベルタ様、逃亡する際は私を連れていくのをお忘れなく」

「あ、はい」

「リベルタ、逃げたくなるのはわかりますがエーデルガルド公爵は何かしてほしいことがあると言ってきませんでしたか?」

その未来を見て、正直この大陸から逃げた方が後腐れないんじゃないかなぁと思うけど、推しキャラもいるこの大陸から逃げるのはもうちょっと待った方が良いか。

「あります、あるんですよ。というか、これが本題と言うべきか」

クローディアに嗜められて、改めて公爵閣下の手紙に話を戻す。そして手紙でも王と一緒に警戒していくと書いてあるからすべてがすべてジャカランを英雄として見ているわけじゃないのが幸いか。

それに、城蛇公爵以外の残った二公爵も面白くないから動きが消極的らしい。

「ジャカランの力を見込んで、エーデルガルド公爵が王命で攻略しているダンジョンを攻略させようっていう動きがあるみたいなんです。ここで武功をあげられたらますますつけあがるので、こちらも早急に行動を起こそうとしているみたいなんです。そこで協力を要請されています」

エーデルガルド公爵を追い落とすチャンスと、城蛇公爵は勢いづいているみたい。

だからこそ、押し付けるように任せたダンジョン攻略にも口を出してきたということか。

「協力はともかく武具が間に合わないのでは?対竜装備がなければ死にに行くようなものです」

「そうなんです、そうなんですよぉ」

おまけに、俺の知るジャカランであればあのダンジョンはまずい。

経験値の宝庫であり、相手が風竜であるのなら普通にレベリングしてしまえば対竜装備なしでもジャカランなら勝てる可能性があるのだ。

そして、風竜を倒せるようになってしまえば今のこの国にジャカランを御せる存在はいなくなる。

フィジカルモンスターが爆誕して、好き勝手に暴れる災厄が野に放たれる。

かといって、風竜ダンジョンを装備の揃わない現状のエーデルガルド公爵軍と冒険者だけで攻略するとなると被害が甚大になり、公爵家が傾きかねない。

「ねぇ、リベルタ」

「ん?」

どうすべきがベストか、それを考えていると服の裾を引っ張りネルが俺を呼ぶ。

「私たちで、ダンジョンを攻略しちゃダメなの?」

「んー、んー、んぅ」

そしてシンプルな質問に、俺は頭を捻る。

根本的な問題としては、ジャカランをどうにかしないとダメなのだが、時間稼ぎとしてジャカランのレベリングを妨害できるようにダンジョンを無くすという方法は悪くはない。

「……ダメじゃない、ダメじゃないんだけど」

「もしかして、できないの?」

「いや、できる。クローディアさんがいるのならできる。だけど・・・・・」

ダンジョンを無くすだけなら、デュラハンを倒すだけでいい。

それなら今の戦力でも十分現実的にできる。

「風竜は、無理」

だけど、風竜に対しては、正直クローディアがいても難しい。

装備も足りなければ、レベルも厳しい。

スキルも足りない。

公爵閣下に進言した。

ガチでメタ張った編成で、ようやく安全の一歩手前で狩ることができるようになるのだ。

「俺たちが勝手に攻略するとエーデルガルド公爵のメンツを潰すことになるし、仮にエーデルガルド公爵の部下として攻略したら俺たちのことが明るみにでて、下手したらエーデルガルド公爵が俺を担ぎ上げて、英雄同士の派閥争いとかが始まるかも」

そもそも、政治的に見れば俺は完全に部外者なのだ。

ここで下手に関わるのは正直勘弁願いたい。

公爵家に協力して、ダンジョンを攻略する。

それをすること自体はいいけど、やり方は慎重に選ばないとダメだ。

「最低限の義理立てでしたら、私が公爵家に出向き力を貸しましょう。このパーティーでの最高戦力は間違いなく私です」

無難にこなすのなら、クローディアの案も悪くはない。

だけど、ベストかと言われればNoと断言できる。

「それは、最終手段にしましょう。ひとまずはエーデルガルド公爵のところに行って話を」

手紙を封筒に戻しながら、聞きましょうと続けようとしたときに、封筒の中にもう一枚の小さな紙が入っているのに気付く。

まるで、こっそりと忍び込ませたかのような、メモの走り書き。

「なんだこれ」

それをそっと取り出すと、エーデルガルド公爵とは別の人物が書いたとわかる筆跡で、書かれた文字を読むと。

「……」

その文字はたった数行、そしてエーデルガルド公爵が俺に伝えないようにしていた秘匿すべき情報がここに記されていた。

文字の形からしておそらく女性、そしてこんなことができるのは同じ公爵家の人間であるエスメラルダ嬢なのは間違いない。

エスメラルダ嬢からの情報に、俺の表情が一気に無表情になるのがわかった。

「り、リベルタ君、なんか怖いよ?」

恐る恐る、声をかけてくるアミナには悪いが、今の俺は怒りを別方向に発散させるので答える余裕がない。

「ふふふふふふ」

怒りっていうのは、通り過ぎると笑いがこみ上げてくるようで。

「アハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

「リベルタ!?」

「どうしたの!?」

最初はクツクツと小さく笑い、そして次第に我慢できなくなり大きく笑い、ネルとアミナの心配する声が耳に届くが、それどころではない。

「OK、わかった。ジャカラン。お前はたった今から俺の敵だ」

奴は俺の踏み入れてはいけない聖域に土足で踏み込んでしまったようだ。

自分でも冷め切った声色であるのがわかるほど、冷淡な声が出た。

エスメラルダ嬢のメモ書きからのメッセージにはこう書かれていた。

顔合わせの際、エスメラルダ嬢と体調が回復したイリス嬢もその場に同席し、その際にジャカランはイリス嬢のことをいたく気に入り、その場でほしいと強請ったようだ。

その場の雰囲気で英雄と公爵家のつながりを持たせるのを祝福するような流れができた。

武功を立てれば、認めざるを得ない可能性ありという情報は、俺に怒りの炎をともすのに十分な燃料であった。

癇癪持ちの子供が、俺の推しを幸せにできるような奴なら百歩、いや、千歩・・・・・一億歩譲って血涙を流しながら納得しよう。

だが、てめぇはダメだ。

神が許そうとも、全FBOプレイヤーのイリス推しがお前を許さない。

「イングリット」

「はい!」

覚悟しろ、お前は完膚なきまでボコボコにする。

「公爵閣下に会いたい。すぐにアポイントを取ってくれ」

「かしこまりました」

これは、全イリス推しを代表して下す。

「できるだけ、早くに頼む」

「では、私が直にお頼み申し上げてきます」

確定事項だ。