軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

24 果てを見る者&アイドル

「あ、帰ってきたわよ!!」

「ただいま」

オークの森からは、モンスターハウスを処理してからは隠密を心掛けたのであっさりと脱出できた。

「リベルタ君、お帰り!称号は無事に得られた?」

「おう獲れたぞ!見るか?」

「見せて見せて!!」

「あ、ずるいわよ!私も見る!」

出発する時と同じ場所で彼女たちは待機していて、マジックバッグの中に入れておいたシートを引いてそこで、イングリットが淹れたお茶を飲んで休憩してくれていたようだ。

駆け寄って出迎えにきてくれたのは、俺が称号を獲れたかどうかを確認するためのようでその期待に応えるためにステータスを見せる。

『リベルタ クラス2/レベル100

称号 かくれんぼ巧者

基礎ステータス

体力240 魔力160

BP 0

EXBP 0

スキル4/スキルスロット7

槍豪術 クラス10/レベル100

マジックエッジ クラス10/レベル100

鎌術 クラス10/レベル100

隠形術 クラス7/レベル23 』

俺のステータスの大きく変化した部分と言えば、称号という項目が増えただけだ。

それ以外は、隠形術が少しだけ成長したくらいだろうか。

「本当についてる」

「疑ってたのか?」

「う、うん、実はちょっと」

「こいつめ」

「あははは!やめてよ」

いま俺の居るこの世界では、称号というのは特段珍しいものではないが、それでも持っている人は珍しい部類に入る。

しかも狙って欲しい称号を得るとなると途端に難しくなるのだ。

条件さえ知っていれば、得ること自体はそこまで難しいものではないのだが、その条件を誰も把握できていないのだ。

だから俺が狙って称号を獲ってきたことにアミナは半信半疑だと言ったのだ。

わしゃわしゃとアミナの髪を撫でて、かまってやるとアミナは笑っていたが逆に隣で見ていたネルは静かだ。

「ネル、どうした?やけに静かだな」

「うん、ちょっと考えていたの」

「考え?何か気になることがあるのか?」

「私も欲しい称号があるの」

「ネルが欲しい称号?」

彼女も俺が狙った称号を獲れるかどうかは半信半疑だったようだが、獲れるとわかった途端に真剣な顔で俺に言ってきた。

ネルが欲しい称号。

それは一体何なのか。

俺が戦闘型商人でネルに獲ってほしい称号はいくつかある。オーソドックスに言うのなら投資家という称号だ。

これは商人系のスキルを補助してくれる称号で、ゴールドスマッシュを放つための資産形成に役立つ称号だ。

次に戦士系ビルドでもよく使う破壊者、これは純粋に攻撃スキルを補助して火力を上げてくれる称号だ。

前者は商人として効率よく金を集めて、最大火力技を何回も放てるようにするための称号。

後者は戦闘者として、火力を上げるための方向を意識した称号だ。

この二つのいずれかを持った戦闘型商人は多かった。

だけど、これ以外の称号を持った戦闘型商人がいなかったわけでもない。

FBOは文字通り、自由にステータスを構成するのが売り文句のゲームだ。

「うん」

少し不安気に、反対されるのではと心配しているネル。

俺はそんな彼女に向けて。

「いいじゃないか、目指そうぜ」

サムズアップで答える。

あくまで俺は最強になるための方法を教えているだけで、そこを自分色に染めたいと言う希望を無視してまで強要はしたくない。

「いいの?」

「ああ、もちろんだ」

さすがにヴィラン系の称号を取ろうとするのなら止めに入るが、それ以外なら賛成する。

「じゃぁ!果てを見る者になりたい!!」

「おー、それかぁ、中々渋いチョイス」

そして幸いにして彼女が目指したいという称号は、戦闘型商人とも相性がいい称号だった。

果てを見る者、それは全世界を渡り歩いたものに与えられる称号だ。

開拓者という称号を得て、それを進化させる最終段階の称号。

称号の名前から、これは移動系を補助してくるような称号に聞こえるかもしれないが、世界を渡り歩くには健康が一番!という神の意志が介在して、この称号は状態異常耐性向上という効果があるのだ。

一見すれば地味な効果だが、果てを見る者の効果は状態異常耐性50パーセントという、二分の一の可能性で相手の状態異常攻撃をレジストしてくれるという破格の性能を誇る。

タンク系統のビルドに備えておきたい称号ではあるが、こっちは状態異常に特化した性能になるのに対してタンク系は防御性能向上を兼ね備えた健常者からの派生形である称号を獲りがちなので、あまり獲られることがない。

「じゃぁ、まずは開拓者の称号から獲っていかないとな」

「開拓者?」

そしてなぜネルが果てを見る者という称号に憧れるかはすぐにピンときた。

彼女は行商人になって色々な場所で商売したいと言っていた。

この世界に来て、その理由を聞いてみたところネルは笑顔で少し古ぼけた絵本を見せてくれたのだ。

タイトルは世界の商人という、世界のあちこちを見て旅をするという行商人の物語。

あちこち傷んで何度も何度も繰返し読んでいることがわかるが、それでも大切に読んでいるのがわかるくらいに大事にしている絵本。

その絵本の最後に行商人は世界中を見て回り、果てを見る者になったと締めくくっている文言がある。

世界中を見ると言葉で言えば一言で済むものだが、ゲーム的に言えばやり込みコンテンツの部類に入る。

その破格の性能を誇る理由はその習得の難しさ。

開拓者の取得条件は、全世界マップの開拓率十パーセントを達成し、そして世界各地にある導きの石碑のどれか一つに触れることだ。

対して果てを見る者はマップ開拓率を百パーセントにして、さらに百ある導きの石碑のすべてに触れないとダメという、ゲームクリア後にやるような内容なのだ。

「開拓者から順に進化していって、見録者、導師を経て、最後になるのが果てを見る者なんだよ」

根気とやる気がものを言うマップ開拓率百パーセント、正直言ってミニマップというゲームシステムがないこの世界だとかなりきついと思う称号の一つ。

これを説明して夢を諦めさせるかとも一瞬考えたが、やるも止めるも彼女の自由だ。

それにこれからいろいろな所に行くのだから、果てを見る者とまではいかないけど、導師くらいにはなれるはず。

その導師の称号も状態異常耐性30パーセントと前衛になる彼女にとってはなかなか有用な称号だ。

「・・・・・というわけで、開拓者の獲り方と果てを見る者までの道のりはわかったか?」

「わかったわ」

単純に世界中を旅するという冒険の果てに手に入る称号。

状態異常耐性を付与した装備を重ねれば、状態異常系スキルが一切効かない存在になりうる。

その点も踏まえて、労力に対するメリットを説明したがネルの決意は揺るがない。

「リベルタ様、となりますと次の目的地はネル様のために石碑を探すということでよろしいでしょうか?」

「いや、石碑の場所は心当たりがあるから、そこは良いんだ。今日は難しくても明日か明後日には普通に石碑に触れられる」

ならあとの行動は決まったようなものだ。

石碑の場所はおおよそ頭の中に入っている。

その中でも王都から一番最寄りの場所も知っている。

「だから、ネルの称号に関しては時間と根気が必要になるから一旦後回しだ。すぐにどうこうできるような内容でもないしな。ちなみにイングリットはネルみたいに欲しい称号はあるか?」

「……いえ、とくにはありません」

となれば、それに集中するよりも他の人の称号獲得も一緒に進めた方が早い。

一番自己主張が弱いイングリットは案の定、少し考えたのちに顔を横に振って何もないと答えた。

予想通りと言えば予想通りなのだけど。

「本当に?」

「はい」

「これっぽちも?」

「はい」

「強いてあげるならとか」

「ないですね」

欠片の迷いも見せず、お任せしますと佇む彼女はある意味彼女らしいと言うべきか。

「そもそも、私は称号に関して詳しくありません。この身がどのような形になるのかを楽しむのも一興かと思いますので、リベルタ様にお任せします」

「あ、うん。わかった」

重い、重いよと心の中で思いつつ、任されたのなら全力をもってして完成形に持っていくだけのこと。

「そうか?アミナは?」

「僕もないよ、そもそも称号が獲れるなんて思ってもいなかったし」

「じゃぁ、アミナは駆け出しアイドルだな。というか、こだわりがないならそれ以外考えられないからな」

「雑!?イングリットさんやネルと違って僕だけあっさりとしすぎじゃないかな!?」

サポート型メイドは、その性質上できることの範囲は狭いが、どこに強みを出すかという点で称号を選ぶのが難しい。

エアクリーンやサーモコントロールといった、生活魔術に特化させるもよし、戦闘能力を上げるために抜刀術に適した称号を与えるのも良しなのだ。

今後のスタイルを見つつ慎重に検討しないといけない。

だけど、それに対してアミナはこだわりがないのならこれ一択と言わんばかりの称号がある。

「駆け出しアイドルから、一等星のアイドルになるだけで歌唱スキルと舞踏スキルの効果がえぐいくらいに上がるからなぁ。アミナのスキル構成上この称号以外だと逆に弱くなるんだよ。ジョブも歌姫が確定しているし、逆に何と組み合わせろと?」

「いや、そうやって本気で言われると僕も困るんだけど、なんていうか。僕のことも真剣に考えてほしいと言うか」

「大丈夫だ、アイドル系の称号獲得の条件がクソみたいに面倒だからそこで真剣に考えるよ」

アイドル、それは現代でも有名な一つの職。

この世界ではアイドルという職業はなく、代わりに称号として存在する。

「面倒って?」

「アイドルになるには、まずは事務所という名の商会を立ち上げて、そこから運営に必要なスタッフを集めて、さらにアミナにマネージャーをつけて、もろもろの手順を踏んで観客を集めてライブ会場で歌って踊ればアイドルの称号持ちになれる」

「……え?」

ネタのような称号であるが、これを取得する際の手順が完全にアイドルとして人生を歩み出すような手順を踏まないといけないのだ。

「リベルタ、本気で言ってるの?」

「本気と書いてマジと呼ぶくらいにガチ」

ネルが心配する気持ちは大いにわかる。

そして運営も何を考えてこんなシステムにしたか、マジでわからん。

「え、ネル、そんなに大変なの?」

俺の称号獲得条件を満たすための方法を聞いて、変な声をあげたのはネルだ。

アミナはそんなにすることがあるんだくらいで、楽観的になっているのはイマイチ現実味がないから。

「商会になるにはまずは商業ギルドに登録しないといけないんだけど、ただ書類を書いてお金を積めば商会になれるわけじゃないの。商売実績を作って、商会として活動していることを認知されて、審査を受けてようやくなれるの」

対して、ネルは商会を作る苦労を知っているからか、腰に手を当てアミナにいい?と前置きをして説明し始めた。

「この商業実績というのが大変なの!ギルドから指定された交易を何年もやってようやく手に入る信頼みたいな物よ!!商人がみな行商から入るのはそういうことなの!その土地によって審査の難しさは違うけど、王都で一から商会を作り出そうって言うのならそれこそ一年や二年じゃ無理ね。最低でも五年、それでも早いくらいよ!」

商人になるためには諸々苦労があると語るネルの言葉に俺も頷いてしまう。

思い出すのは商人プレイしているときに、商会を立ち上げる必要が出てきたのだ。

その時はゲームだからイベントをこなせば簡単に商会を起こせるだろうと思っていたのだが、リアルにゲーム内で行商しないといけないことになってマジで大変だった。

最初は南の大陸を縦横無尽に移動して物を運んで商売をした。

次にやったのは船に乗っての別大陸への貿易、そして最後はお金を貯めて資産があることを証明してようやく商会を立ち上げることができる許可証を商業ギルドからもらえたのだ。

すなわち、一からアイドル事務所を設立すると、ネルよりもかなり労力がかかるのだからそりゃもう大変なんだよ。

「えー、じゃぁ、僕が称号を獲るのって五年以上先ってこと?」

「そんなに手間をかけてたまるかってんだ。安心しろ、しっかりと裏技もあるから」

「裏技?」

さて、この手順を省略できないかと考える輩がいないかと言われれば、我らが検証班がそれを検証してくれるのだ。

そしてしっかりと見つけてくれている。

「一から商会を作るのが大変なのなら、信頼できる商会のスポンサーになってアイドル事務所部門を作ってしまえばいいだけのことだ」

そう、もとからあるNPCの店に投資して、そこに新しい商売を始めさせるという荒業。

「そんな都合のいい商会が・・・・・まさか」

「うん、ネルの実家に頼もう」

幸いにして我がパーティーは、質素倹約に努めれば一生暮らしていけるようなお金を公爵閣下から頂いているのだ。

そして、もう一つ幸運なことにネルの実家は商売を営んでいるお店、すなわち商会なのだ。

それに気づいて、愕然とした表情を見せるネルに向けて俺はサムズアップするのであった。