軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

495.スパルタンレース

「皆さん、初めまして。わたくしは、リンジー・ランペイル。まずは、このたび決勝戦出場おめでとう。これから、わたくし達があなた達の指導を行いま……」シュッ。

お祖母様は、話の途中で何かを立っている騎士達の所に投げた。よく見ると2人の騎士達のそれぞれの足の間に、クナイが刺さっていた。サッと青くなる2人の騎士。その2人に向かい、お祖母様は笑顔で言う。ただし、目は鋭く見つめていた。

「わたくしの話よりも、大事な話なのかしら?」

「い、いえ……」

「では、わたくしが馬鹿にされているのかしら?」

「ち、ちがーー」

「じゃあ、どうして雑談出来るのかしら?チラチラ、チラチラとよそ見しながら、余裕のようね?……あなた達どちらも第一かしら?」

「「は、はい」」

「宰相殿?やはり必要みたいね〜?」

「はぁ〜そうですね。申し訳ありませんが、お願い出来ますか?」

後で聞いたところによると、最近の第一騎士団が弛んでいるという噂があったらしい。第一騎士団は、前世でいうところの警察のようなところ。通常は王都の巡回警備、犯罪者の摘発、王都に入るための門衛が主な業務だが、中には巡回中に買い食いをしたり、賄賂を貰い身分証確認なしで王都に入れる騎士もいるらしいと。しかしながら、何人かは決勝戦出場をしている為に、一旦泳がせようとなったらしいが……結果は、お祖母様の話し中に雑談をし、騎士団長は知らぬ存ぜぬを決めようとしているふしがあった。と言う事で、宰相様からお祖母様達が頼まれていたことを実践する事になった。

「ごめんなさい、待たせてしまったわね。では、これから鍛練を行いますね。内容は……」

演習場5周、腕立て100回、スクワット100回、ジャンプ100回を3セット。

1セット毎にインターバル10分。

王宮の演習場のトラックは、だいたい500m。そこを5周することは、我が国の騎士団にとっては日頃からの鍛練で余裕なのか拍子抜けな顔をしている騎士、ニヤッとする騎士も中にはいる。

「それから……宰相殿、どうぞ?」

「えー、今回の鍛練には近衛隊、そして第一から第三までの騎士団長にも参加してもらう」

「「「はっ!」」」「はっ!?」

「第一騎士団長、不満か?」

「い、いえ。ただ、その内容では準備運動にしかならないのではと危惧しておりました。我々とて日々の鍛練は行っております。その鍛練の際に準備運動として、それぐらいの内容はやっておりますので」

第一騎士団長の物言いは、お祖母様の鍛練内容についての不満だった。そして、それを聞いたお祖母様は、目を細めて第一騎士団長を見つめる。

「ふーん、危惧ねぇ〜。コレを見た後でも言えるかしら?……では、皆様お願い致しますね」

そういうとお祖母様は、後ろに立っているお祖父様達に言う。それを聞いたお祖父様をはじめとする歴代の優勝者達は、一つ頷き散り散りにトラックへと向かう。その様子を見ていると、程なくしてトラックに着いたお祖父様達は、それぞれの属性を生かした障害物を作り上げていく。

例えば……【火属性】は炎のトンネルを、【水属性】は地面を凍らせたり、【風属性】は竜巻を、【土属性】はボルダリングのような土壁をそびえ立たせ、【雷属性】はその土壁に微弱な雷を纏わせていた。その他にも、ネットを潜り抜ける所があったり、膝までの水のはった所を通ったり……。しかも一周する毎に障害物を変えると言う。それはまるで、前世のスパルタンレース。

先程まで余裕そうにしていた騎士達も、障害物がどんどん出来上がるのを見て、口を開けたままフリーズしたり、「マジか?」を連呼していたり、人それぞれに驚きを隠せないようだ。もちろん、サポートに来た私達も。そして、不満を漏らした第一騎士団長もだった。

「では、魔術科の生徒達は、障害物のサポートをお願いしますね」

「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」

魔術科の生徒達が、トラックの方へ走って行く。障害物に関しての責任者は、元魔術師団長のレティおば様のようで、生徒達に的確に指示をしている。

「騎士科の生徒達は、サポートの予定でしたが……あなた達も、参加しなさい」

「「「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」」」

「大丈夫よ。騎士科の学科長には、許可を取っているわ」

お祖母様に言われ、私達がバッと来賓席で見学をしている学科長を見ると、良い笑顔でこちらに向けてサムズアップをしてきた。その近くでは、各学年の担任が苦笑いをしている。

「……それから、そちらにいる各国の騎士学校の教師陣、王立学院の騎士科の各学年の担任、副担任もよ。早くいらっしゃいな」

「「「「「「「「はっ!?」」」」」」」」

「あら?各国の外務大臣やナサールから聞いていないの?」

お祖母様の言うナサールとは、学科長のこと。何でも、近衛隊時代の時の後輩だったそうだ。

ブライアン先生をはじめとする教師陣は「嘘だろ?」「あの、狸じじぃが!」などとブツブツと言いながら、学年毎に並んでいる私達の最後尾に並んだ。他国の教師陣も同じように並んだ。その様子に、今度は私達は苦笑い。

走るのはグループごとで、順番は剣術、槍術、弓術、体術、魔術、各国の騎士学生、私達王立学院の騎士科の学年ごと、そしてブライアン先生などの教師陣だ。

「まさかとは思いますが、決勝戦に進む方々が学生や、現役を退いた教師陣に追い抜かされたりしないわよね?」

「「「「「「「「「「おぉー!!」」」」」」」」」」

「学生の皆さんは、遠慮なく猛追して構いません」

「「「「「「「「「「おーっ!!」」」」」」」」」」

「1人でも後続のグループに抜かされたグループは、連帯責任として腕立て伏せ、スクワット、ジャンプを追加100回。そして、上位5名には褒美があります。頑張りなさい!!」

そして、お祖母様のスパルタンレースの火蓋が切られた。