作品タイトル不明
494.鍛練
早めのランチは、ジョウ商会のイートインスペースのテーブルを1ヶ所に纏めて、いつもはないテーブルクロスを敷いた。
メニューは、ジョウ商会で販売している商品を各々選んで貰った。
今、販売しているのは、カレーライス、ぶっかけ天そば、カツ丼、親子丼、ランペイルドック、ジャガトコロッケ、おにぎり各種、卵焼き、唐揚げ、メソ汁。デザートは、ベイクドチーズケーキ、プリン、季節のフルーツパイ、アイスクリーム、大学芋。ドリンクは、コーヒー、紅茶、緑茶、季節のフルーツジュース、スポーツドリンク、リモンハチミツ、氷コーヒー、アイスコーヒー、アイスティー。
「「「うっま!!」」」
「「「美味しい!!」」」
「さすがだな」
「初めて食べましたわ」
「これが "食の女神” の……」
「これ、ええなぁ〜」
レギンさん、ゴールダー、ガロンは、騎士らしくかなりの量を注文していたけれど、あっという間に食べ終わり、今はデザートを選びに再びカウンターに行っている。
「ジョアンちゃん、この氷コーヒーってええな。氷自体がコーヒーやから溶けても味薄まらんし。それに、このミルク自体美味いわ」
「せやろ?アイスティーの氷も同じように紅茶で作ってんねん。薄まったのなんて不味いだけやしな。それにミルクが濃厚やから、コーヒーも美味しいやろ?」
「あぁ、後で仕入れ先教えてや」
「ほな、今度の仕入れでまけてや」
「かー、ジョアンちゃんには敵わんな〜」
「タダより怖いもんはないってことやろ?」
「確かにな」
「「あっははは」」
タイキさんと会話していると、私が同じような話し方を出来ることを知らなかったタイキさんとケイトさん以外が、動きを止めてキョトンとした顔でこちらを見ていた。
「ジョ、ジョアン……お前、その話し方……」
「えっ?あー、えーっと、ほら、男装する時にこの話し方にすると出身国もバレないでしょ。だから、タイキさんに教えてもらったの。ね!タイキさん!」
「ん?あっ、そやで。まだまだ、なんやけどな」
なんとか前世の記憶からの方言だと言うのを誤魔化すと、含めて皆んな納得してくれた。目の端で、ケイトさんの肩が震えているのは気にしないでおこう。
*****
翌日、中日の2日目は、王宮の演習場で決勝戦に進んだ騎士達の為の鍛練のお手伝い。騎士科の生徒の各学年トップ5が招集された。私の学年からは、学年末のテストの成績で上からエド、カリム、ソウヤ、ベル、私。私は、授業を受けていないにも関わらず、座学のテストを全て85点以上取り、実技の武術のテストでは各国の騎士団の演習に参加したお陰で3位を取った。ちなみに、本当は皇太后様からのご意向で免除だったのだが、旅の間でどこまで鍛えられたのか気になり、追試を受ける事にしたのだった。
「実技で3位になった理由はわかったけど、座学はなんで取れたんだ?」
「あー、ストレージの中に教科書入れてたから暇な時に読んでた」
「「「は!?それだけ?」」」
「あとは、わからないところを聞いて教えて貰ったり?」
「誰に?」
「えーっと、ツヴェルクではグリーグ公爵でしょ。アニアではティガー公爵で、エルファでは宰相様。東の国では側室のメルロス様?」
「「「「マジか!?」」」」
座学について教えてくれたのは、各国の重鎮ばかり。しかも、軍務大臣やら武術についてはトップクラスの方々。
「エルファの宰相様にメルロス様って……宰相の家系に産まれていなければ、軍務大臣や騎士団長だっただろうと言われている、あのクルゴン公爵だろ?」
「あれ?エド知ってるの?」
「知ってるも何も、クルゴン公爵が若い時にスタンピードを止めてエルファ国を守った英雄の1人だよ」
「英雄だったんだ。ん?他にも英雄がいるの?」
「そのスタンピードの時にクルゴン公爵と一緒に戦ったのが、エルファ国王陛下と王妃様だよ」
「マジかい。確かに、謁見の後に国王陛下と王妃様の仕留めたオークキングの煮込みとルフバードのステーキ頂いたわ」
「「「「すげぇー」」」」
エドから詳しく聞くと、エルファ国の子供達は幼い頃にスタンピードの話の絵本を親達に読んで貰うらしい。それは、エルファ国出身の母親を持つエドも同じだったようで、しきりに「羨ましい!」を連呼している。
そんなたわいも無い話をしていると、鍛練をする為に騎士達が続々と集まって来た。その中には、ジーン兄様やカズール先輩、ノア先輩、他国の知り合いもいた。
「では、これから鍛練を行う!」
壇上でそう宣言をした宰相様の後ろに立つのは、今回の鍛練の指導者達。指導者はかつて各国の騎士団に所属していた方々。その中には、エレーナ先輩の両親であるドミニクおじ様やレティおば様、ツヴェルク国の軍務大臣グリーグ公爵、アニア国のミンコフ領主のウル様、そしてお祖父様とお祖母様もいる。
「本日の鍛練は、こちらにいらっしゃる歴代の武闘会優勝者の方々が直々に指導して頂ける。心して挑むように」
「「「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」」」
「では、皆様、宜しくお願い致します」
指導者として来ていたのは、単なる騎士団OBではなく歴代の優勝者だった。
お祖父様やお祖母様が優勝者だったなんて……。マジか。
宰相様が下がると、次にお祖母様が壇上に上がるとニコッと微笑む。
今日の出立ちは、いつものドレス姿ではなく、近衛隊時代に着ていたという騎士服に腰には愛用のレイピアを帯剣している。今の騎士服とは少しデザインが違うが、それを着たお祖母様はとても格好良い。around70 で孫が7人もいるとは到底考えられない。
いつものように優しく微笑むお祖母様は、側から見れば優しい貴婦人。でも、お祖母様を知っている人は、その微笑みが質の違う微笑みだと知っているので、私を含めて背筋が凍る思いで壇上のお祖母様を見つめていた。