作品タイトル不明
454.エルファ国で謁見
仕事を終えたエデーン侯爵とミラちゃんの長兄ご家族、長姉ご家族も揃い夕食後のサロンで改めて歓迎された。
「いやいや、まさかジョアン嬢が特使とは驚いたよ。……改めて、ミラを助けてくれたことソバーの有効活用を伝授してくれたことに感謝する」
「いえ、こちらこそ良い取り引きをありがとうございます」
「今日は、次女と三女が不在で申し訳ない。あの2人は本当に……はぁ〜。いつになっても落ち着かない」
エデーン侯爵家は、一男四女。エデーン侯爵は外務大臣。長男のシュヴァーンさんは農林大臣補佐官、その奥さんは同じく農林省の文官。長女のイロンデルさんは王宮侍女で第一王女付き、その旦那さんは国土省の文官。そして今日、不在の次女ヘリファルテさんと三女ククヴァーヤさんは2人で冒険者をやっているそうで、今はダンジョンに潜っているそうだ。
「ランペイル嬢、あなたのお陰でソバーの価値が上がり食糧難も緩和されたよ。本当にありがとう」
「今までの食べ方よりもソバーの風味が感じられて、今では小麦よりソバーの方が好きになったわ。子供達も茹でソバーよりも食べてくれるし、それにヘルシーだわ」
農林大臣補佐官のシュヴァーンさんとしては、小麦の不作が続いた事で食糧難が国全土、特に地方は酷かったそうだ。それを緩和できたのは、ソバーの食べ方を私が教えたことらしい。今までは、副菜として茹でソバーなどで食べられてきたそうだ。それを私の食べ方のお陰で、安価でしかも痩せた土地でも育つソバーは食糧難解消の起爆剤となったと。奥さんとしては、茹でソバーよりも蕎麦やガレットとして食べる方が好きで、お腹に溜まるのに小麦よりヘルシーということで、今では小麦よりもソバーを食べる方が多いそうだ。
「私からもお礼を言うよ。まさかソバーが痩せた土地でも栽培が可能だなんて知らなかったよ。お陰で、今まで何にも活用出来なかった土地が有効活用出来るようになったからね」
イロンデルさんの旦那さんは、国土省の文官として痩せた土地の運用方法が出来たと喜んでいた。
「私としては、ただ単に蕎麦が食べたかっただけなんですけど……」
「それでもだよ。ジョアン嬢のお陰で我が国は、飢えることがなくなったんだから」
*****
ーーー翌日。
エデーン侯爵と共に、王宮へ向かいエルファ国の国王と謁見に臨んだ。国王は、ホワイトゴールドの長い髪にエメラルドのような瞳。見た目は30代には見えるけど、エルフ族は年齢不詳だから本当の年齢が予測出来ない。
「ようこそ、エルファ国へ。我が国の飢饉を緩和させた功労者、ランペイル嬢に直接お礼を言えることを嬉しく思う。この度は、本当にありがとう。我が国民であれば、爵位を用意するところだが……何か望みはないか?」
望み……昨日、マーケットで見たあの果実が欲しいなぁ〜。アレがあれば、色々とスイーツの幅も広がるし。
「えっと、何でも宜しいのですか?」
「ああ、もちろん。我が息子との婚姻でも構わないぞ?」
国王がチラッと横に控えている、王子達を見る。王子達も満更ではないようで私を見て微笑んできた。
「い、いえ、それはわたくしには恐れ多いことでございます」
「そうか?良い考えだと思ったのだがな。して、何が望みだ?」
「はい。カッカオの実を定期的に購入させて頂きたいです」
「何?あのカッカオか?あの苦味しかない、あの?」
周りで話を聞いている人達も、苦虫を潰したような顔をしている。
カッカオの実は、前世でいうところのカカオ。チョコレートの原料だ。でも、エルファ国では苦味のある薬として子供から大人まで嫌がるものだった。
「はい。そのカッカオです」
「もしかしてジョアン嬢は、カッカオを美味しくする方法を知っていたりするのかい?」
私の表情から、何かを感じ取ったエデーン侯爵が聞いてきた。
「ええ。ただ知識しかないので、ちゃんと出来るかわかりませんが……」
「さすが “食の女神” だねぇ」
というエデーン侯爵の呟きが、周りにも聞こえ「エグザリアの “食の女神” があの娘だと?」「私が聞いた噂では、絶世の美女だと聞いたが?」「私は、女神は実は男性と聞いたぞ」「あんなチンチクリンが女神とは……」「所詮、人様だから」などとザワザワとしている。
「静かに!」
宰相様の声で、静かにはなるものの私に対しては疑いの目を止めない。
「申し訳ない、我が臣下の者達が。カッカオの実に関しては、ランペイル嬢に定期的に流通しよう。それに関しては、エデーン侯爵が担当とする。良いな、エデーン侯爵」
「はっ。かしこまりました」
「ありがとうございます。それから、もう一点。エルファ国で私の契約獣を自由に連れても宜しいでしょうか?」
パール達は、エデーン侯爵家ではお披露目し屋敷内では普段通りに過ごせるが、それ以外ではディメンションルームにいてもらっていた。
「契約獣とな?我が国にもテイマーはおるが、何か珍しい魔獣なのか?」
「ええ、まあ、珍しいかも知れません。宜しければ、ここでご紹介しますが?」
国王が頷くのを確認して、パール達をディメンションルームから出す。
「私の契約獣でございます。ご挨拶を」
『ジョアンの契約獣、フェンリルのパールでございます』
『僕はジョアンの契約獣、カーバンクルのロッソだよ』
『俺も姐さんの契約獣、ホワイトデーモンオウルのメテオっす』
『我はジョアン様の契約獣、緑の精霊ベルデと申します』
と挨拶した途端、国王を始めとした王族の皆様や宰相様、先程までザワザワしていた外野の人達も一斉に跪き頭を下げた。
「えっ!?パール?」
『いや、私じゃないでしょ。たぶん……』
「あ、あの、頭を上げて説明頂けますか?」
そうお願いすると、国王が頭を上げずそのままの体勢で答えてくれた。
「我が国では、精霊様を崇めておるのだ。しかし、精霊様を見える者は限られておる。だが、今こうしてあいまみえたことができた」
「……ベルデ、皆様にお座りになるようにお願いして」
『我が主が困っています。お座り頂けますか?』
「「「「「「「「「「はっ」」」」」」」」」」
全員が座り直し私達を見るが、先程までの人族を馬鹿にしたようなものではなく、キラキラとした視線を受ける。もちろん私ではなく、ベルデの方に。