作品タイトル不明
440.魔性の女
ーーー翌日。
王族の皆様の予定が揃うのは夕方以降ということで、日中はシアさんとアムちゃんに王都を案内してもらう。
「本当にその格好で良かったの?」
いつもとは違う砕けた話し方のシアさんが私に聞く。
「ああ。今日の 俺(・) は(・) シアさん達の護衛も兼ねているからな」
「良いじゃん、姉さん。護衛としては申し分ない腕だし」
私と並んで歩く三男のゴールダー。
ちなみにティガー公爵家の6人兄弟は、上から順に長男で宰相補佐のガドラさんが24才、次男のトルガさんは22才で王宮で文官、長女のシアさんが18才で今年学院を卒業してリジャル殿下と結婚予定、三男のゴールダーは私と同じ16才で騎士学校なので呼び捨てで呼ぶようになった。次女のアムちゃんは14才で学院生、で末っ子のトニー君は9才で今も絶賛家庭教師と勉強中。
そして、砕けているのは口調だけではなく服装もそう。今日はお忍びでの王都散策ということもあり、シアさんとアムちゃんは良いとこの商家のお嬢さん風。そしてゴールダーと私は護衛の冒険者という出立ち。もちろん今の私はショウだ。ちなみにうっすらと自分に結界を張っているので、獣人の方からも女性とわからないと家令さんからお墨付きを頂いた。
最初は私もお嬢さん風と言われたけど、護衛するのにワンピースはやり難いと断った。護衛はゴールダーがいるからと言われたけど、人数的にそれは不利。公爵家の護衛も付くからとも言われたけど、では私の腕を見て判断して欲しいと私兵団の団長と打ち合いした結果。今の状況にある。
「まあ、それはそうだけど……。まさか、男装の格好まであると思わないじゃない?声まで変わるなんて」
「あははは、コレで旅しているからな。この方が舐められないんだ」
「ショウは王国で騎士科なんだろ?帰ったら俺とも打ち合いしろよ」
「いいぞ。ゴールダーの腕も気になるしな」
「うふふ、本当に男性に見えてきた。あー、私もショウみたいな恋人欲しいなー。できたら番いが良いけど。お姉ちゃんみたいに」
アムちゃんは、トニー君が番いを見つけたことを喜んでいたが、やっぱり本音は羨ましいらしい。
「まだ、アムちゃんは14なんだから気にすんな。人生は長いぞ」
と、アムちゃんの頭をポンポンすると、ボッとアムちゃんの顔が赤くなり俯く。
「ん?どうした?」
「………」
首を傾げる私を見ながらシアさんとゴールダーは笑ってる。
「ショウは人たらしと聞いていたけど、確かにそうね」
「いや、姉さん。この場合、プレイボーイにしか見えない」
「は?」
シアさんとゴールダーの言っている意味がわからん。
『アムちゃんは、ショウのポンポンにキュンときたのよ。まあ、ジョアンは無自覚だろうけどね』
『姐さん、魔性の女っすね』
そして、パールとメテオが酷い。
皆んなで向かったのは、バックス商会。
奴隷事件の時に、助け出されたラビィーちゃんの家が経営する商会。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」
と、出迎えてくれたのはラビィーちゃんとお兄さんのマーシィさん。
「あれ?あの、ジョアン様は?」
と、困惑しているラビィーちゃんにシアさんが紹介すると、「えーー!?」と2人して驚いてくれた。
「あははは、ごめん。そこまで驚くとは思わなくて」
「い、いえ、こちらこそ動揺してしまって……」
「大声を出してしまって、皆様もスミマセン」
と、2人は公爵家の人達に謝っている。もちろんシアさん達は自分達もショウの格好には驚いたから、気にしなくて良いと2人に話したことで、ようやく2人は奥の個室に案内してくれた。
バックス商会は、平民街のなかでも比較的貴族街に近い場所にあり、お客さんは平民から貴族に至るまで幅広いそうだ。扱っている商品は、食料品から生活用品など色々な物を取り揃えてあった。
個室に案内されて、すぐにお茶を持ってやって来た男女はラビィーちゃんの両親だった。奴隷事件の時のことで、私に直接お礼を言いたかったが王国に迎えに行く前に怪我をしてしまった為に迎えに行けなかったそうだ。
「私は出来ることをしたまでですので、頭を上げて下さい」
「いや、しかし、お礼をするにも何をしたら良いかわかりませんで……」
「それで、公爵夫人にご相談させてもらいましたら、本人に確認したら良いとアドバイスを頂きまして」
あー、なるほど。だから昨日、公爵夫人は王都散策をするにココを提案してくれたんだ。
お礼ね〜別にいらないんだけど……あっ!
「あの、でしたらお願いがあるんですけど……ウチの商品をこちらで販売して貰えませんか?」
「「「「えっ!?」」」」
私は、自分の店を持っていること、そこではオリジナル商品を販売していることなど説明した。
お母様からも他国の販路をそろそろ開拓していこうと話していたから、渡りに船だわ。
「あの、ちなみにどのような商品があるんでしょう?」
マーシィさんに言われて、私はストレージから商品の一部を取り出す。取り出したのは干し甘露芋、クッキー各種、ケチャップ、ドライフルーツ、そして新商品のおこし。おこしは古米を油で揚げたポップライスーーポン菓子とおなじような物ーーに水飴を絡めて固めたお菓子。
1つ1つ試食するたびに、商品の説明をしていく。その度に、マーシィさんはメモを取りながらうんうんと聞いている。
「で、どうですか?売れますかね?」
人間と獣人とでは味覚も違うし、もちろん好みも違うのでウチの商品がアニア国で受け入れられるのか心配だった。
「「売れます!!間違いなく!!」」
そうラビィーパパとマーシィさんが断言してくれた。
「良かった。じゃあ、契約とか諸々は後でウチの営業部長が来ますから」
「「営業部長?」」
2人が揃って首を傾げる。
「はい。私はもっぱら開発やら裏方担当で、営業は母がやってます」
「えっ?母って、ランペイル辺境伯夫人かしら?」
「そう。中々やり手だよ」
「でもそれだと大変でしょう?距離もありますし」
シアさんが心配してくれるけど、我が家にはベルデがいる。だから、そろそろ……
トントントン「店長、お客様のお連れ様が到着されました」
「えっ?」
店長のマーシィさんが驚きながらも扉を開けるとそこにはベルデとお母様が。
「急な訪問をお許し下さいね。ジョアンがお世話になっております。わたくし、エグザリア王国、マーガレット・ランペイルと申します」
と、挨拶をする。
「「「「「「「えーーーっ!!」」」」」」」