軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

426.犯行動機

「お、お待たせ致しました。王宮内での【転移】許可をありがとうございます」

皆さんの黒い笑顔に引き攣りながらも、待たせた事を詫びる。

「いいのよ。こちらこそ、ごめんなさいね。どこの馬鹿だかわからないけれど、ランペイル嬢を閉じ込めるだなんて……。ゴルデン、わかっているわよね?」

「ああ、もちろんだ。ベルデ殿からサブォイ経由で人相を聞き、場所もわかっていたから既に犯人の確保に向かっておる」

と、軍務大臣のグリーグ公爵が言う。怒りの為か顔が真っ赤になっていた。

着席を促されて座ると、気になっていた事を聞く。

「私を監禁したとして、何のメリットがあるんでしょうか?」

エグザリア王国の使者としても、正式な使者ではないので公にはされていない。だから、私を監禁したとしても、両国間の友好関係にヒビが入ることはないだろうし。まして、謁見する事を知っているのは限られた人しかいない。

「確かに、ランペイル嬢が謁見する事は公にはしておらん。形だけはと思い謁見の間を使ったに過ぎんからな」

と、宰相のアムンゼン公爵。

「しかも謁見した人間が、厨房から出て来るとは予想出来んだろ。ましてや、他国の貴族令嬢が厨房にいることなど」

と、財務大臣のガルボルト公爵。

「であれば、計画的犯行ではなく突発的なものか……」

と、外務大臣のバリゲット公爵。

「まあ、いずれにせよ。ベルデ殿のお陰で、すぐに犯人は捕らえられるだろう。ジョアン嬢には、怖い思いをさせて申し訳なかった」

と、頭を下げるのはモズパパことドゥリン公爵。

「いえ、私も学院では騎士科の端くれ。そして、ここまで契約獣と共に旅をして来た冒険者でもあります。確かに、してやられたとは思いましたが、怖くはありませんでした」

「ん?ランペイル嬢は冒険者であったか。して、ランクはいくつかな?」

と、グリーグ公爵。

「はい。我が領のランペイルギルドのランクBです」

そう言うと、グリーグ公爵は目を見開いた。

「な、なんと、その年であの "王国の盾" とも云われるランペイルのギルドのBとは、恐れ入った。しかも騎士科に在籍とは。ちなみに、ウィル殿とリンジー殿はお元気かな?」

「ええ、元気です。グリーグ公爵様は、私の祖父母と面識が?」

「ああ。俺が若い頃、共同軍事演習や武闘会でよくご指導頂いたのだ」

お祖父様もお祖母様も、顔広すぎるわ……。

「では、ランペイル嬢をご指導したのは、リンジー殿か?」

「はい。幼い頃より祖母から指導を受けました」

「おお。では、ぜひ我が軍に混ざり演習などいかがかな?」

と、ニヤリと笑いながらグリーグ公爵が言う。

「ゴルデン!それは、さすがにランペイル嬢に失礼だろう?こんなうら若きご令嬢が、あのような軍の者に混ざるなどと」

と、眉間に皺を寄せメガネを上げながら、ガルボルト公爵が言う。

「いや、しかしだな、ランペイル一族で騎士科であれば、演習するのも興味があるかと思ってだな」

「あー、ゴルデンにモートン?もう、ジョアン嬢は参加するみたいだぞ?」

「「ん?」」

私は、グリーグ公爵とガルボルト公爵が話しているのも気づかないほど、グリーグ公爵の『演習参加』という素敵な言葉に、目をキラキラさせていた。

「ふふふふ、ランペイル嬢は戦うのが好きなのかしら?貴族令嬢は、自分が守られて当たり前と思っているのが一般的であろう?」

と、女王。

「好きか嫌いかと尋ねられたら、好きですね。私は貴族にも関わらず【無】属性として産まれましたが、家族は私を突き放す事なくやりたい事をさせてくれました。その中で、守られるだけではダメだと思ったのです。私が強くなる事は、自衛だけではなく家族や領民を守る為になることだと考え、祖母に指導を願い日々精進しております。……だから、ぜひ演習に参加させて頂きたいです!」

「さすがレティとリンジーが可愛がるだけの事はあるわ。ランペイル嬢が演習する際は、妾も見に行くとするかしらね。って、ゴルデン、お前泣いておるのか?」

よく見ると、グリーグ公爵がボロボロと泣いていた。

「あー、ジョアン嬢気にしなくていい。ゴルデンは、ちょっと涙脆くてな」

と、苦笑いのモズパパ。

後々、復活したグリーグ公爵が泣いた理由を教えてくれた。

それは、私が【無】属性なのに前向きなこと、そしてお祖母様のスパルタンコースについていける事に感動したということだった。昔、グリーグ公爵もスパルタンコースを体験したらしく、その時は途中で気を失ったそうだ。

それを聞いた大臣’s は羨望の眼差しで私を見て、女王はそんな事もあったなぁと笑っていた。

しばらくして、応接室に騎士が入室して来た。

「報告致します!使者殿を監禁した者を確保、その者の供述により犯行の関係者についても確保しております!」

「して、動機はわかったのか?」

と、グリーグ公爵。

「はっ!それが……その、何と言いますか……」

と、その騎士さんは、私達をチラチラと見て言い淀んだ。

「ん?なんだ、ハッキリと言わんか!!」

「は、はい!!実はーー」

と、説明を始めた騎士さん。話を聞いていくと、何とも呆れた動機だった。

犯行を計画したのは王宮で侍女をしている、とある伯爵家のご令嬢。実行犯は、その令嬢の幼馴染の騎士団所属の子爵令息。犯行動機は、私とモズとの仲に嫉妬をしてらしい。そのご令嬢は以前から、モズを慕っていたらしい。

一昨日『ファミーリエ』から2人で出て来て、公爵家に向かったのを見た時、私は男装だったが何となく気になり、翌日、人を雇い公爵家を見張っていたらドレス姿の私がモズと共に公爵家の馬車で王立図書館に行った。後をつけると、図書館内でも仲睦まじく本を読み、何やら話している。そして、今日、モズパパと一緒に王宮に来ているのを見て、モズと私の婚約の申請をしに来たのだと推測。

私が厨房に入って行ったのを、幼馴染の子爵令息に拉致するよう依頼したが、子爵令息も仕事の合間に出て来たので、一先ず物置に監禁したらしい。ちなみに、子爵令息は伯爵令嬢のことを慕っていた為に、頼られたことが嬉しかったと言っていたそうだ。

「はぁ、何とも馬鹿げた事を……」

と、女王。

「ジョアン嬢、申し訳なかった。まさか、ウチの息子の事でこんな事になろうとは……」

「俺も、騎士団所属の奴が、こんな事をするとは……申し訳なかった」

「あ、頭を上げて下さい、ドゥリン公爵。グリーグ公爵も。私に対する嫉妬かも知れませんが、私に実害はなかったので……」

「ランペイル嬢は、寛大な心の持ち主なのねぇ」

と、女王。

「いえ、そこまで出来た人間ではありません。ただ、今回は本当に実害がなかったから言えるだけで、もし私や家族、友人に対しての実害があれば、徹底的にやりますよ」

と、ニコッと笑いながら言ってみた。