軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

413.優しい人は怒らせるな side ベル

「そうそう、こんな物も一緒に置いてあったのよ。」

何も言えずに黙っている2人に、王太后様が言う。すると、後ろに控えていた近衛隊がトレイにのせた魔道具を差し出した。

「そ、それは?」

「こうやって見る物よ。」

と、王太后様が言うとパッとパーティールームの照明が暗くなり、魔道具から映像が流れる。

あの日、私も一緒にジョアンと参加していれば……。と、映像を見るたび悔しくて涙が出てくる。その涙目でピグレート侯爵夫人を見ると、薄明かりの中で呆然としながら映像を見ている。

映像は、ジョアンがピグレート侯爵家のパーティールームを出ると終了となる。再びパーティールームが明るくなると、腰が抜けたようにピグレート侯爵夫人は真っ青な顔で床に座っていた。その横では、ピグレート侯爵令息が尋常ではない量の汗をかいている。

「これを見て、貴女方はどう思うのかしら?……まあ、何も感じないからあんな事を言い、更には虚言を並べ立てているのでしょうけど。ランペイル辺境伯夫人が身分が低いと誹謗されておりましたけれど……王妃であるわたくしは元平民で申し訳ありませんね。でも……。」

一度、話を止めた王妃様は座り込んでいるピグレート侯爵夫人の耳元で何かを囁いていた。私の近くで、身体強化しているエドから聞こえた声を教えてもらう。

「……陛下に選ばれたのは、この私。ランペイル辺境伯が選んだのは、マーガレット。貴女にランペイル辺境伯がアプローチしたことなんて一度もない。ホント、昔から嘘ばかりの人間ね。……だから、侯爵家だとしても誰からも選ばれない。可哀想な人。」

それを聞いたピグレート侯爵夫人は、ガタガタと震え出した。

怖っ……。

いつも優しい人は、怒らせたらいけないって本当だわ。

そんな中、扉が開いて入って来たのはカッター公爵様と男性が2人。1人は年配の方で、もう1人は私のお父様ぐらい。ピグレート侯爵夫人は、その男性2人を見ると目を見開き驚いている。

「……あ、あなた。どうして……。お義父様まで……。」

どうやら先代ピグレート侯爵と現ピグレート侯爵のようだ。ピグレート侯爵は、妻の質問には答えず王太后様と王妃様に頭を下げる。

「この度は、身内がご迷惑をお掛け致しました。」

「あら?謝る相手が違うのではなくて?」

と、王太后様。

「もちろん、この後すぐにでもランペイル辺境伯殿の所に向かう所存です。」

「そう。……先代侯爵も貴方も、身内を甘やかしすぎね。遅かれ早かれこの様な事になるのは、昔から言っていたでしょうに。」

「はい……。私が逃げていたのが、問題だったのです。この者達には、然るべき処罰を約束します。」

「「えっ?」」

侯爵夫人と侯爵令息は、ピグレート侯爵の言葉が信じられず驚いて視線を外せずにいる。

「さあ、立つんだ。早く!」

ピグレート侯爵が侯爵夫人の腕を掴みどうにか立たせる。

「カッター公爵殿、公爵夫人様、公爵令嬢様、お越しの皆様……大変お見苦しい所をお見せ致しました。申し訳ありません。……私どもは、これで失礼致します。」

と、ピグレート侯爵。

パーティールームから出る4人の背中を見ていると

「ダル!いい報告待ってるわよ。」

と、王太后様が声をかける。すると歩みを止めた先代侯爵様が振り向き

「ああ、もちろんだ。ウィルとも約束したからな。」

と言い、パーティールームから出て行った。

「さて、来賓の皆様に於かれましては折角のお茶会をお騒がせして申し訳ない。……だが、どなたも余興を楽しまれたご様子ですな。これからしばらくは困らない噂話のネタで、きっと寛大な皆様にはお許し下さると信じていますよ。ランペイル辺境伯より、皆様方へのお詫びとしてジョアン嬢考案のカクテルをたっぷり用意してあるから、心行くまで楽しんで欲しい。さあ、お客様にグラスをお配りしてくれ!」

冷えた空気をカッター公爵様の快活な声と洒落のきいた言葉でその場の空気が変わると、その指示に従い使用人達が様々な種類のカクテルをトレイに乗せてパーティールームの招待客に配り始めた。

ジョアン考案のカクテルは、ベースのお酒と果汁や他のお酒を混ぜるという、今までにない飲み方とお酒に強くない女性にも飲み易いと社交界では評判になっている。だが、カクテルのレシピは特許登録をしていないので、滅多に味わえない。なので、酒好きの招待客達も、若い女性達も歓声を上げた。

招待客達がカクテルに夢中になっている中、王太后様と王妃様そしてお茶会よりも一刻前に集まったメンバーは、パーティールームを出て、最初に集まった応接室にてカクテルで乾杯をした。

「これで、ジョアンちゃんが安心して帰って来れるわね。」

と、王太后様。

「ええ、帰ってきたらここにいる皆んなで食事会でもしましょう。もちろん、料理はジョアンちゃんにお願いしましょう。」

と、王妃様。

「おお、ジョアン嬢の料理は絶品ですからな。これは、期待せねば。」

と、満面の笑みのカッター公爵様。

それから、ジョアンの作った料理のあれが美味しかった、これも美味しかったという話題になり、皆んな楽しく話した。

ジョアン、こっちは片付いたよ。

帰って来たら、他国の話をいっぱい聞かせてね。

その後、ピグレート侯爵夫人は、平民に堕ち王国一厳しいという北の修道院へ。侯爵夫人の実家である侯爵家は、既に侯爵夫人の兄が当主となっていたが庇うこともしなかった。それどころか、ランペイル家に睨まれることを恐れ、親族としての縁も切ったらしい。ピグレート侯爵令息は、廃嫡され跡継ぎは縁戚から養子を貰う事が決まったらしい。更に、騎士団を無断で休んでいたこともあり、1番下っ端からのやり直しだそうだ。

そして、ランペイル辺境伯家には、多額の慰謝料を支払ったという。