軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

412.どこから嘘? side ベル

「うふふふ、安心してちょうだい。この手紙は偽物よ。とは言っても、手紙自体はジョアンちゃんが書いて、文面は私が考えたものよ。」

と、王妃様。

「あの……髪の毛は?」

と、キャシーちゃんが恐る恐る確認する。

「あー、それは本物よ。詳しくは説明は出来ないけれど、ジョアンちゃんが戻って来るのは3ヶ月後の予定だから、戻って来る頃には伸びているわ。それに、ジョアンちゃんも髪の毛を短くするのは抵抗ないのよねぇ〜。それは、私も同じでね。まあ、私の場合、元平民ですけどね。うふふふふ。」

王妃様もジョアンも抵抗ない……もしかして、前世の記憶?

そう言えば、前に寮で寝癖が直らないジョアンが短くしたいって言っていたっけ。

「これとディーゼル侯爵令息の撮った映像を証拠に、図に乗っている方にわからせてあげないとねぇ〜。」

と、扇子で優雅に口元を隠して王太后様が言う。でも、目は獲物を見つけたような魔獣のような鋭い眼差しだった。その目を見た私は背筋が凍る思いで、それは一緒に立っているエドとカリムも同じようだった。

*****

「……それでね、ある令嬢は【無】属性の出来損ないのくせに、袖にされたという理由で私の愛息に乱暴を働いたのですのよ。母親の身分が低いと、育ちが悪くなるのね。女性が騎士科に入るだけでも野蛮ですのに、第二騎士団希望だなんて本当に呆れてしまいますわ。女性騎士なんて、入団する理由なんて良い嫁ぎ先を探す為でしょう?所詮、男性の真似事でしかないのよ。」

と、ピグレート侯爵夫人が新たな生贄を見つけて、先程と同じ話をしている。入口を背にしている為に、パーティールームに入って来た人達の事には気付いていない。

もちろん周りの招待客は、会話を止め頭を下げている。生贄にされたご夫人も同じように頭を下げようとするが、会話を止めないピグレート侯爵夫人に困ってどんどん顔が青褪めている。

「それは、わたくしの事かしら?」

その声は、静かなパーティールームでよく響いた。

ピグレート侯爵夫人に付き合わされていたご夫人は、即座に頭を下げる。それを見たピグレート侯爵夫人は、ようやく周囲の状況を把握して、バッと振り返った。

「ひぃ!!お、お、王太后様に王妃様まで……。ど、ど、どうしてここに。」

「あら?おかしい事ではなくてよ?じきに王家に嫁ぐ予定の公爵令嬢の生家のお茶会に呼ばれるのは。何かおかしいかしら?」

と、首を傾げながら言う王妃様。

「い、いえ、何もおかしくはありません……。」

「それで?騎士科に入り、騎士団に入団する女性は野蛮だと聞こえましたが……それは、わたくしの事を指しておっしゃっているのかしら?」

王太后様が騎士科卒業後、近衛隊に入団していた経緯を知らない貴族はいない。もちろんピグレート侯爵夫人も、虐げていたのはジョアンの事で、王太后様のことではないのは誰もが知っているがあえてそう切り出した。

「と、とんでもございません。あれはーー」

「でも、騎士科に入るだけでも野蛮なのよね?ごめんなさいね、野蛮な人間で。……でも貴女がここ最近、根も葉もない事を吹聴しているのは……品性下劣としか言いようがないわね。」

「ひ、品性下劣……。」

「ええ、だってそうでしょう?嘘ばかりで一切真実を話さないではありませんか?」

そう言われたピグレート侯爵夫人は、恥ずかしさと怒りで顔が真っ赤になって震え俯いている。

ピグレート侯爵夫人は、一度深呼吸をすると落ち着きを取り戻したのか顔を上げた。

「い、いいえ、嘘などではありません。わ、わたくしが嘘をついているなど、それこそ根も葉もない事ですわ。」

「あら?そうかしら?……貴女が言うには、ピグレート侯爵家のお茶会の翌日に、ご令嬢が訪ねてピグレート侯爵令息……そこの貴方ね?……謝罪したと言うけれど、それはいつぐらいかしら?」

今まで、他の令息達と話していた侯爵令息は、まさか自分の事を王太后様が知っているとは思わず、驚いた顔をしていた。

「は、はい。翌日の朝です!」

と、しっかり言い切ったピグレート侯爵令息。

「侯爵夫人もそれで間違いはない?」

と、王太后様が聞く。

「ええ、間違いありませんわ。」

と、侯爵夫人と言う。

「あら?おかしいわね。そのご令嬢は、私の親友のご令孫なのだけれど、ピグレート侯爵家のお茶会の夜からわたくしの屋敷に泊まったのよ。ねぇ?」

「ええ、わたくしも一緒にお屋敷におりましたから存じ上げてますわ。貴女方もそうよね?」

と、王妃様が近衛隊の女性達に聞くと頷いた。

「それに、そのご令嬢は朝食を一緒に食べた後、こんな手紙を残してわたくしの屋敷からいなくなってしまったの。」

王太后様が取り出した手紙を、王妃様が読み上げる。

「ねぇ?どこからが嘘なのかしら?」

と、王妃様は片手を頬に当てて首を傾げる。

「よ、よ、翌日というのが間違いでしたわ。我が侯爵家にはお茶会の翌々日でしたわ!」

と、鼻息を少し荒くしながら言うピグレート侯爵夫人。

「まあ、そうでしたの?でしたら、尚更おかしいですわね?だって、ジョアン嬢は翌々日にはツヴェルク国に入国していますもの。」

と、王妃様。

「「えっ!?ツヴェルク国……。」」

驚くピグレート侯爵夫人と侯爵令息。

「うふふふ。わたくし、あの子を幼い頃から知ってますのよ。ですからね、心配してあの子の事探しましたの。あの子ったら、いつの間にか旅券を手配していたようで、翌々日の朝には既にツヴェルク国に入国していたのよ。だから、貴女方の所へは行けないはずなのだけれど……どうしてかしら?」

と、王妃様は再び、首を傾げる。

「「……。」」