軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

409.アリバイ工作

料理を作り終え、再びウォルターさんの案内で、ダイニングルームに向かった。ダイニングルームでは、既にカトラリーや飲み物がセッティングされ、あとは料理がくるのを待っていた状態だった。

「お待たせ致しました。」

私のストレージから、料理を出していく。

「こちらから……蒸ししゃぶのデーコンおろしのセウユ掛け、白身魚のマリネ、お稲荷さん、あんかけ蕎麦となります。あんかけ蕎麦は、熱いので気をつけてお召し上がり下さい。」

「まあ〜、美味しそう。では皆さん、いただきましょう。」

王太后様の声で、皆んな食べ始める。

「ん〜、ジョアンちゃんのご飯、久しぶり。美味しいわ。相変わらず、お稲荷さんの味付け最高ー。」

と、王妃様。姑やお祖母様がいても、かしこまることもなく通常運転の王妃様に、私の緊張もほぐれていった。

「本当に、美味しいわ。この白身魚のマリネだったかしら?程良い酸味が良いわね。赤や黄色のピッパーも彩りが綺麗だし。」

「お口にあったようで光栄です。」

その後、料理の説明をしつつ料理を楽しみ、皆んな完食してくれたのでホッとした。

食後のデザートに、ミニどら焼きと一口大学芋を緑茶と共に出す。

「ふぅ〜、やっぱり和菓子には緑茶よね〜。」

「ええ、このお茶に合うわね。それに、このお菓子は初めて食べるけど、どこか懐かしい感じがするわ。」

「お義母様、ジョアンちゃん最高でしょう?」

「うふふふ、あら、アミーったらまるで自分の子供の様に言うのね。前世では、あなたのお母様のご友人だったのでしょう?」

あっ、そこまで話しているんだ……。

本当に、王妃様は王太后様と仲良しなんだな〜。

「アミーの、前世のアミーはどんな子だったの?」

「……今と変わらず、優しくてお転……天真爛漫な子でしたよ。前世の母親も、自慢の娘だと言ってましたし。」

「えっ!?そうなの?私、知らなかった。」

「それは、本人には言わないわよ。でも、まさか恵美も娘が早世するとは思ってなかったでしょうけど。」

「あっ、それは本当に申し訳ない……。」

と、王妃様と話していると、王太后様とお祖母様が声を出さずに笑っている事に気づいた。

「ふふふふ、不思議ね。アミーが自分の子供と同じぐらいのジョアンちゃんにそう言われているのを見るのは。」

「そうそう、レティ?そろそろアレを開催しない?」

「アレ?……もしかして武闘会?」

「ええ、ちょっと騎士団が緩くなっているみたいでね。」

「あら?そうなの?何かあった?」

お祖母様の言葉に、王太后様も王妃様も首を傾げる。

「実はね……。」

と、お祖母様が昨日の出来事を説明する。その間、王太后様と王妃様は、あら?とか、まぁとか、言いつつも真剣に聞いていて、説明が終盤になると笑みの質が変わった感じがした。

「あら、相変わらず あ(・) の(・) 侯爵夫人の頭はアリンコの脳みそ以下ね。」

「本当に懲りない人間っているんですね。私とアレックスの時も、私に虐められたと学院内で吹聴してまわっていましたわ。まあ、誰も耳を貸さなかったですけど。」

あー、お母様の言う通り、王妃様も被害者だった。

どうにかならんかな?

そんな話をしていると、赤い蝶が私の周りを旋回する。手を広げると掌に止まり文へと変化する。送り主はベルだった。

「っ!!」

文の内容を見て、私は絶句した。

「どうしたの?」

と、心配そうにお祖母様が言う。

文に書かれていた内容は、今日、ベルとベルママ、そしてエリック様のお母様のイザベラ様が参加したお茶会での事だった。そのお茶会には、ピグレート侯爵夫人も参加していたらしい。ピグレート侯爵夫人は、お茶会の場で昨日のお茶会の事を面白おかしく語ったそうで、今朝、侯爵家に私が訪ねて昨日のことを詫び、侯爵令息に以前より傾慕していると告白し、側室でも一夜限りでも良いからと縋ったと吹聴していたという。もちろん参加者のほとんどは信用してはいないが、一部のご夫人、ご令嬢は信用しているようだ。

バキッ。

音のした方を見ると、お祖母様が扇子を片手で折っていた。

「お、お祖母様……。」

「あら?ごめんなさい。私としたことが……。」

「うふふふ、もうリンジーったら。……それにしても、ジョアンちゃんは朝からこちらに来ているにも関わらず、よくそんな事が言えたものね。……久々に王都に行こうかしら?」

よく見ると、王太后様は青筋を立てて静かに怒っていた。

「ねぇ?ジョアンちゃん。旅に出るのよね?」

と、王妃様。

「えっ、ええ。担任にも昨日のうちに連絡しましたし、準備でき次第行こうかと。」

「じゃあ、今から行っちゃいなさいよ。置き手紙をして。」

「えっ!?」

「ベルデの【転移】を使えば、どこでも行けるのでしょう?今朝、侯爵家を訪ねたと言うなら、訪ねられない場所にいたら良いのよ。アリバイを作れば、侯爵夫人の言っていることが虚言だとわかるわ。」

「確かに……。でも、そのアリバイを証言する人がいないと、バレるし……。」

「冒険者ギルドでいいじゃない。」

と、お祖母様。

「そうね。冒険者ギルドに登録しているなら、そこで依頼を受けたのが確かな証拠になるわ。昨日に王都を出発したとしたら、ちょうどこの辺りね。じゃあ、ここにリンジーと共に泊まり、朝食を食べてツヴェルク国に行った事にしたら?」

と、王太后様。

「それが良いわ。お義母様が証人となれば、覆されることはないでしょう?」

と、王妃様。

「ありがとうございます。ツヴェルク国……エグザリア王国の隣のドワーフの国ですよね?」

「ええ。そうよ。あそこの女王とは懇意だから、私から一筆書いてあげるわ。……ウォルター。」

「はい、奥様。こちらになります。」

いつ準備したのか、ウォルターさんがレターセットを持って来ていた。

「じゃあ、その間にジョアンちゃんも準備しちゃいましょう。今、ストレージに着替えはあるの?」

と、王妃様。

「うん、一応。冒険者服もあるしドレスも一式、あとは町娘風やら男装用やら色々と。」

「男装用って、あの噂のショウ君?」

「どの噂かは知りませんけど……そうです。」

「わぁ!見たい見たい!!」

「えっと……。」

と、お祖母様に視線を送ると無言で頷かれた。

まさか、ここで男装することになるなんて……。

まあ、お祖母様も許可してくれたから大丈夫かな?