軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

397.新人料理人ショウ

準備をして王都に戻り、王城まではスノーに乗って行く。今や顔見知りとなった門衛さんに挨拶をし、第ニ騎士団の厩舎へ向かう。

「ジョー。スノー。ここだ。」

厩舎の前では、連絡をしていたジーン兄様がこちらに向かって手を振っている。

「ごめんなさい、ジーン兄様。無理を言ってしまって。」

「いや、大丈夫だ。スノー、ごめんな。なかなかジェネラルに帰れなくて、ゼクスに会わせてやれなくて。」

『良いの。仕事だもの。』

「ありがとう。あー、ちょっと待ってろ。今、連れてくるから。」

ジーン兄様が厩舎に入り、しばらくするとゼクスを連れて戻って来た。2頭は再会すると、今までの寂しさを補うように寄り添っている。それを見て、私もジーン兄様も幸せな気持ちになった。

厩舎の馬番にスノーの事を頼み、私は厨房へと向かう。

「お邪魔しまーす。」

「あっ、ジョアン様。ちょうど良かった。味見お願いします!」

声をかけてきたのは、王城の副料理長のモーリスさん。

「はーい。……ん、今日のは美味しい!」

「良かった〜。ようやくジョアン様の味に近づけましたかね?」

味見したのは、ランチ予定のカレー。フルーツやスパイスの加減で、味が変わるので何度も何度も練習していたのは知っていた。ちなみに前回は甘過ぎて、前々回はなぜか苦かった。そして今回やっとカレーとして成立した。

ストレージからファンタズモで仕入れて来た魚を出していく。今回は、寿司を握るのに時間がかかりそうなのでネルパパに魚をサク状態にしてもらっていた。ご飯は酢飯用に少し硬めに炊く。

「何で通常より硬めなんですか?」

「後で、酢と砂糖で味を付けるから。通常に炊くとご飯がべちゃべちゃになっちゃうの。」

「なるほど。」

と、モーリスさんは納得しながらメモを取る。

米を炊いている間に、寿司酢とネタの準備をする。それが終わると、ストレージからタラをドドーンと出す。前世の時のタラは平均で50〜60cmだったが、こっちではその倍はある大きさだ。それを5尾。モーリスさんや他の料理人達に手伝って貰いながら、タラを捌いていく。

「あーー、ちょっと待った!!アラと白子はコッチに入れて、捨てないで!」

「えっ!?ゴミでしょ?」

「違う違う、鶏ガラと同じでいい出汁でるから!」

「「「「へぇ〜。」」」」

「じゃあ、騎士団用のスープ、どんがら汁を作ります。」

「どん……がら?」

「魚のアラを使ったメソ汁のこと。まずは、タラの身、アラ、白子を一口大に切り分けて、ハッサイ(白菜)と豆腐は適当に切って、ネーギは斜め切りにするの。鍋に出汁昆布と水を入れて火にかけたら、沸騰する直前に昆布は取り出してね。その鍋にアラを加えて中火で煮たてながら、丁寧にアクを取り除くよ。面倒だけどね。」

「確かに、これは面倒かも知れない……。」

それもそのはず、1.2mほどあるタラを使ったスープは、ゆうに100人前はある鍋が3つ。アクを取るだけで一苦労。

「アクが取れたら、メソと酒粕をーー」

「酒粕って?」

「あー、えーっと、 東(あずま) の国のお酒を作った時に出る、搾りかす?」

「へぇ〜。で、なんで入れるんだい?」

「酒粕はね、食べると身体がポッカポカになるから、今の時期にはピッタリなんだよ。整腸効果もあるしね。」

「あー、だから騎士団用のスープなのか。」

「うん。身体が資本でしょ?」

「で、メソと酒粕を溶いて味を整えて、タラの身、白子、ハッサイ、豆腐、ネーギを加えて弱火で煮込んで、全体に味がなじんたら出来上がり〜。……味見どうぞ。」

「「「「「うっま!!」」」」」

「ん〜、いい味出てる。」

そこへ休憩上がりのアシュトンさんがやって来た。

「おっ、何を食べているんだ?」

「アシュトンさんも、はいどーぞ。」

「……うっま!なんだコレ!?普通のメソ汁よりも味に深みがあるし……酒か?」

「惜しい!正解は酒粕。」

アシュトンさんにも酒粕の効果を説明する。

「なるほどな。ジョアン様、後でで構わないので、ほかにも酒粕のレシピがあったら教えて欲しいんですが……。」

「もちろんです。」

「「「「「ありがとうございます!」」」」」

*****

ご飯が炊き上がり、寿司酢を混ぜたら冷めるまでアシュトンさんと共に各騎士団の兵舎にどんがら汁を運ぶ。本当は、大変だから下っ端に運ばせると言われたけど、ストレージがあるからと我儘を言った。

「本当にいいんですか?そんなこと、ジョアン様にさせて。」

横を歩くアシュトンさんが申し訳なさそうに言う。

「良いの良いの。なかなか兵舎なんて見れないし。」

「はぁー。俺、あとで怒られるんじゃないのか?」

「なんで?」

「いや、だってあんな所にご令嬢をお連れしたら……。」

「大丈夫、大丈夫!その為に、変装したんだから。」

「なにも、そこまでしなくても……。」

料理人達が揃ってダメだと言うから、私は久々にショウに変身した。1番小柄な料理人の子からコック服を借りて、ウィッグと変声チョーカーをつけたら、あーっと言う間に新人料理人ショウの出来上がり〜。

だって一度、各騎士団を見てみたかったんだもん。

兄様達に言っても、なぜか絶対ダメだ!って言うし。

ジーン兄様とエリック様に会わなかったらバレないでしょ。

「男に見えても可愛い過ぎるんだよ。これじゃあ、飢えた狼の巣穴に子ウサギを連れて行くようなもんだろ……。」

私は楽しみ過ぎて鼻歌を歌っていた為に、アシュトンさんが何か呟いていたのには気づかなかった。