作品タイトル不明
379.両手にイケメン
ドスッ。バスッ。
「なんなの!?なんなのよー!!」
あたしは、壁に力いっぱい枕やらクッションを投げつけた。それを、あたし専属の侍女が見ていて、ビクッとしてたけど関係ない。
ここは乙女ゲーム『ドキドキ♡花よりワタシ』の世界で、あたしはヒロインなのに、どうしてゲーム通りにいかないの?
ゲームでは文官科だとか騎士科だとか、そんな学科なかったもん。なのに、攻略対象者が皆んなバラバラだったり、すでに卒業していたり……あたしの編入が遅かったから?それとも、あたしの学力が足らなくてCクラスだから?
でも、そんなのゲームなんだから、修正を効かせなさいよ!
あわよくば逆ハー目指していたのに、推しのフレッド殿下だって未だに会えてないし……。やっと会えたのはゲームで良く見たお忍びの時の変装で、金色の瞳に変えてるんだと思ったのに、獣人の攻略対象者のラムダだしさー。ゲームで見たスチルがハッキリと思い出せないのが、ここに来てネックになるなんて。確かに、ラムダも良いけど、やっぱりフレッドが良い!!
そのフレッドが騎士科だからって言うから会いに行っても公務だって全然いないし。フレッドに会えないと『氷の貴公子』の近衛隊にも会えないじゃない!!2番目に好きなのに!!
スパイス屋の孫は、おばあさんを神殿に連れて行けば、親密度が上がるはずなのに、怪我もしてないし超元気だし。
ハーフエルフは、好き嫌いが激しくて、しかも母親の母国のエルフの国が食糧難だから、ヒロインが料理を教えてあげれば親密度が上がるんでしょ?だから、好き嫌いが激しくても大丈夫なようにお菓子の作り方教えてあげようと思ったのに、食糧難は終息?なんで?やっぱりゲームみたいに料理を差し入れするべきなの?
1番謎なのは、野暮ったい平民の攻略対象者。ボサボサ、ロン毛で分厚いメガネで不潔なのをあたしがイケメン男子に変えてあげたら、親密度上がるはずなのに、既にイケメン男子になってるし!でも、陰気臭いのはイケメンでも同じかも。
悪役令嬢の公爵令嬢は、全然虐めてこない!虐めてこないと、あたしが被害者になってフレッドに泣き付けないじゃない!!
それもこれも、地味デブメガネのランペイルの長女が、ちゃんと役割やらないからよ!いくら容姿が変わっても、使えない奴は本当に使えない!!性格ブスなのよ、きっと。だから、家令にランペイル家の人間に虐められてるって、嘘ついたらそれを信じて襲撃してくれた。獣人双子を庇った、ランペイルの従僕見習いが怪我した。ふふふ、ザマーミロよ。これで、ランペイルのブスがゲーム通りにあたしを虐めて来たら、きっと元通りよ。
もし、それでもこないなら、あのブスを呼び出してあたしを階段から突き飛ばしてもらえば良いわ。それから、公爵令嬢の指示だって言えば、そうしたらきっと軌道修正できるはず。
そう言えば、ラムダがこの前のお茶会で会って以来会ってないけど、どうしたんだろ?サボり?
あの時のお茶会で、何とかっていう伯爵令嬢がラムダに話しかけてたなぁ〜。いつもラムダと一緒にいる、目つきの悪い狼が追い払っていたけど、結局2人でいなくなったような……。格好良くてもチャラいのはなぁ〜。
やっぱりフレッド一択ね!!
あっ、でもでも、フレッドと仲良くしているの見て『氷の貴公子』のアランドルフがヤキモチ妬いちゃったら……それはそれで、嬉しいかも〜なんて。キャッ。
だから、さっさと公爵令嬢指示じゃなくても良いから、ランペイルのブスが、あたしのこと虐めてこないかな〜。あっ、ブスから虐められたことを、アランドルフに話したら、きっと慰めてくれるわ。ふふふ。大人の男性だもの、きっと色々と優しいはず。
あーん、もう、どうしよう。
フレッド一択とか無理〜。大人の色気のアランドルフも捨てがたいー!!
逆ハーじゃなくて、両手にイケメンでも、良いかも〜。いや〜ん。早く2人とイチャイチャした〜い。
*****
ーーーアルバート殿下の執務室にて。
ブルッ。「「っ!!」」
「どうした?フレッドにアランドルフ。」
同時に後ろを振り返った2人に、声を掛けるアルバート殿下。
「あっ、いや、何か寒気が。」
と、フレッド殿下。
「自分もです。何か気持ちの悪い感じの。」
と、アラン兄様。
「2人共、風邪の引き始めじゃないですか?……はい、ハチミツリモン。今日は、早めに休んだ方が良いですよ。」
2人にストレージからハチミツリモンを出して渡す。
「すまん、ジョアン。」
「ありがとう。」
「件の男爵令嬢が2人の事、考えていたりしてな。あっははは。」
冗談でアルバート殿下が言うと、2人共ハチミツリモンを飲みながら顔を顰める。それを見て、私、キャシーちゃん、エレーナ先輩、ルーカス様、リュークさんは苦笑する。
「兄上、冗談でも止めて下さい!」
フレッド殿下が言うと、アラン兄様も頷く。
「あっははは、悪い悪い。……ともかく、先程の件だが父上と宰相に説明をし、来月の社交シーズン開始の夜会で正式にフレッドとエレーナ嬢の婚約を発表する。王家主催の夜会だから、きっとブラン男爵も来るだろう。【魅了】にかかっていなくとも、あそこは正妻と嫡男を事故で亡くしているから、件の男爵令嬢を同伴するだろう。」
アルバート殿下の話に、皆んなが頷く。
「兄上、ありがとうございます。無理を言って申し訳ありません。」
「いや、ただ、くれぐれも気をつけるように。……で、ジョアンは先程、リバークス侯爵達と何やら話をしに行ったと聞いたが、何かあったのか?」
と、アルバート殿下に聞かれる。
「あー、ちょっと気になった事がありまして……。」
「何がだ?」
「なぜ飴ちゃんが、フレッド殿下とラムディール殿下を間違えたのかな?と気になって。確かに、髪色は同じですけど、瞳の色が違うし、しかもゲーム内で顔を見ているはずなのに。」
「確かに。で?理由はわかったのか?」
「結局、リバークス侯爵の公安隊の方でもわからなかったんですけど、その後、お父様の助言で王妃様に確認したら、わかりました。ゲーム内では、フレッド殿下がお忍びで出かける際に、魔道具か何かで瞳の色を黄色に変えていたらしいです。」
「「あー、アレか。」」
アルバート殿下とフレッド殿下が声を揃える。ルーカス様も知っていたのか苦笑している。
「確かに幼い頃、お忍びで出掛ける際にその魔道具を使っていたが、アレは捨てた。」
「「「「「は?」」」」」
「あの魔道具は、元の第二王子派から貰った物だったんだよ。ほら、ジョアンもよく知る、元近衛隊にいた、あの伯爵令息だよ。」
と、アルバート殿下。
「「「あー。」」」
その元近衛隊を知る、私とアラン兄様、リュークさんが納得する。
「まあ、あの魔道具を捨てたから、フレッドが男爵令嬢と会わなかったのかも知れないな。やはり、ジョアンが皆の運命を変えてくれたんだな。」
「だから、偶然ですって。」
無意識でやったことで、褒められるのは恥ずかしい。
でも、それで皆んなが飴ちゃんとの接点がなくなったのなら、良かった。