作品タイトル不明
292.感謝
ーーアフタヌーンティータイム。
リビングに行くと、二日酔いメンバーが疲れ切った顔でソファーに座っていた。
「皆んな、まだ具合悪いのでは?」
と聞くと
「いや、大丈夫だ。完全に酔いは醒めている。」
とお父様が言う。
「……酔いは醒めたが、心臓が止まるかと思ったぞ。」
「お祖父様、一体何が?」
「ワシとスタン、ギルは、リンジーとナンシーから、寝ている所に冷水をぶっかけられた。」
「「えっ!?」」
「僕たちは、母上と叔母上から同じように冷水をかけられて、その後、寝巻のまま浴槽に落とされたよ。」
我が家には、大人が5人ぐらい入れる大浴場がある。私が前世の銭湯について話したら、翌日には大浴場が出来ていた。ちなみに週1回は、使用人や私兵団も利用できる為、疲れが取れると皆んなから好評だ。
「え?浴室までどうしたんですか?」
「兄上はアーサーに、俺は笑いを堪えたベンに、エリックがマイクに。ヴィーは……。」
「お、俺は、……に。」
「え?誰に?」
「……母上に。」
「「……ぶっ!!」」
ヴィーの言葉に、ベルと吹き出してしまった。
ジュリー叔母様は、【身体強化】を使ってヴィーを運んだらしい。
「えーっと、昨日は私の誕生日を祝ってくれてありがとうございました。それで、ご報告がありまして……。その前に……ディメンションルームって知ってますか?」
「ジョー、知ってるも何も学院の演習場がそうじゃないか。」
ノエル兄様に言われて思い出す。確か、王都のど真ん中で魔法演習などが出来ない為に、空間魔法で作り出した所だと。
「あっ、そうか。あれか。」
「で?ジョー、それが、どうしたんだ?」
ジーン兄様が、話を促す。
「えっと……私のストレージ内にディメンションルームが出来ました?」
「「「「「「「「「「はー!?」」」」」」」」」」
「どういうことだい?ジョアン。」
「誕生日プレゼントだそうです。アシストからの。」
「「「「「「「「「「ああ。」」」」」」」」」」
既にプレゼントで【アニマルトーク】を貰っていたこともあって、アシストからのプレゼントという点はすんなり受け入れられた。
「それで、ストレージ内にディメンションルームとはどういうモノなんじゃ?」
「それが……。ストレージ内で生活が出来るらしいです。だから、ストレージの中に契約獣を入れて運べるし、テントなしで野営出来るらしいです。」
「えっ?つまり、ストレージの中に入れるって事よね?」
ジュリー叔母様が身を乗り出して聞いてくる。
「た、たぶん。そういうことだと思います。」
「じゃ、じゃ、じゃあ、何人ぐらい入れるのかしら?生活出来るって、どこまで?お風呂は?トイレは?料理ーー」
「ジュリエッタ、落ち着きなさい!ジョアン、わかっていることは生活出来るってことだけなのよね?」
「はい、お祖母様。最初に、アシストに確認しておけば良かったんですけど、ともかく報告した方が良いかと思いまして。」
ガーッと捲し立てるジュリー叔母様に圧倒されて何も言えなくなっていると、お祖母様が助け舟を出してくれた。そして、私の答えに頷き、今からアシストに確認したらいいと提案してくれた。その方が、聞き忘れもないだろうと。
ーーアシストちゃん。
ーーはーい。ディメンションルームについて答えたら良いの?
ーー何でわかったの?
ーーだって、昨日、驚いた後何も聞かれなかったから。
ーーあー、ごめん。えっと、まず、ディメンションルームには何人入れるのかな?
ーー何人でも大丈夫だよ。でも、今のルームの大きさは30㎡ぐらいだよ。あっ、ちなみに荷物が置いてあるストレージとは空間が別だからね。ルームからストレージのモノを取り出せるけど。
ーーなるほど。あと、生活出来るってお風呂とか、トイレは?あと料理は?
ーー出来るけど、排水設備がないよ?
ーーあー、なるほど。あっ、出入りの仕方は?それに、出るタイミングって、どうやって外を確認するの?
ーー入る時は『ディメンション』って言えばドアが出るよ。出る時もドアを開ければ良いし、タイミングは、中のドアに手をかければ周囲を確認出来るようになるから。あっ、ちなみにジョアン以外が勝手に出ることは出来ないから。
ーー凄いね。
ーーLet's try it anyway!(ともかくやってみよう!)
ーー……何でネイティブな発音?
ーーなんとなく?ともかく試してみてね〜。
アシストから聞いた情報を、固唾を飲んで見守っていてくれた皆んなに伝える。そうなればもちろん、やろう!と皆んな言い始めるわけで……。
思えば、今もそうだけど、今までも私の言うことやる事に皆んな否定的な事なんて言わないなぁ〜。何だったら、楽しんでくれるし……。
転生したのが、ランペイル家で本当に良かったなぁ〜。ベルやエリック様にも感謝だなぁ〜。
「ジョアン、どうしたんだ?大丈夫か?」
お父様が驚いたように聞いてくる。他の皆んなも心配そうに私を見ている。
「ん?あれ?」
ベルが隣からハンカチを渡してくれた。自分でも気づかない内に涙を零していたらしい。
「ごめんなさい。何か今までのこと思い出していたら、いつの間にか涙出てたみたいで……。」
「今までのこと?」
「はい。今もそうですけど、今までも私の突拍子もないことを言ってもやっても、誰も否定的な事言わないし、受け入れてくれるから……。本当にランペイル家に産まれて良かったし、ベルやエリック様と出会えて良かったなぁ〜と思っていたら……。」
「ジョアン……。そんな当たり前じゃないか。注意はしたとしても否定的な事なんか言うわけないだろう?家族なんだから。それに、前世の記憶持ちは知識をひけらかす人間もいると聞く。ジョアンは、そんな事しないだろ?それどころか、その知識で皆んなを幸せにしているぞ?甘露芋農家だって、孤児院だって、ニコラスだって、ジョアンがアドバイスをしたから今があるんだ。」
「お父様……。」
「ジョアンに感謝しているのは、私もバースト領もだよ?正直に言えば、最初は言ってることや行動に驚いたけど……。でも今は、ジョアンと一緒にいることが楽しいんだよ。」
「ベルゥ〜。また、泣いちゃうから。」
「ジョーといると飽きねーよ。次から次へとやらかしてくれるしな。」
「まっ、今じゃ何をやらかしてくれるか期待してる時もあるし?」
「ジーン兄様、ヴィー。……涙、止まったわ。でも、ありがとう。」