作品タイトル不明
283.ダガーとブラッド
後期に入って、私は相変わらず授業のない時間や放課後はベルやパールと共に冒険者ギルドに通っていた。
王都には冒険者ギルドが3店舗ある。同じく王都とは言え、各店舗ごとに特色がある。貴族屋敷街に近い王都東は、建物から内装から良く言えば煌びやか、悪く言えば金の無駄遣いが良くわかる。そして、ここのギルドが金さえ払えばランクを売るような事をしている為、王都全体の冒険者ギルドの価値を下げていると言っても過言ではなかった。一方、平民街にあるのが王都西。ここのギルドは、公明正大な仕事ぶりが売りだった。
そしてジョアンが王都で通うのは、学院から1番近い冒険者ギルド、王都南。学院に通う多くの生徒が利用しているため、平日は生徒が多い。
今日も、午後から武術のクラスだったが、先生達の都合で授業がなくなったので冒険者ギルドに向かうため寮で着替え、ベルとパール、ロッソと外へ出るとダガーとブラッドがいた。
ダガーは、王都出身の平民で、濃緑色のソフトモヒカン、くっきり二重の灰色の瞳。同じ年にしては、身長が高くて近くで話すと首が疲れる。ブラッドは、橙色のウルフカット、細いつり目は茶色の瞳。身長は私より頭1つ大きいぐらいだ。
学期末のテストで、いざこざがあったものの、あの出来事から武術クラスの男子はジョアンとベルに一目置くようになり、時にはジョアンやベルにアドバイスを求めるようになっていた。
「あー、来た来た。ジョアン、ベル!」
ダガーが女子寮から出てきたジョアン達を見つけて、手を振る。
「あれ?ダガーにブラッド……何?ストーカー?」
「「誰が、ストーカーだ!!」」
「あははは、嘘嘘、ごめんごめん。で、どうしたの?」
「いや、ちょっと頼みがあってAクラスに行ったら、もう帰ったって言うから。待ってたら来るかなと。」
「「頼み事?」」
「ああ、立ち話もなんだから……昼飯食ったか?」
「ううん、まだ。屋台で串焼きでも食べようと思ってたから。」
「俺たちもまだ食ってないから、一緒に良いか?」
「うん、もちろん。あっ、奢ってくれても良いよ?」
「は?何でだよ。」
「えっ?レディーだから?」
「「は?どこがだよ。」」
「いやいや、見るからに?」
「「ぶっ、あっははは。どこがだよ。」」
解せぬ。
腹を抱えて笑うって、失礼じゃない?
ーーしょうがないわよ。レディーには見えないもの。
ーーちょっと、パールまで……。
ーーいや、だって見るからに冒険者じゃない。それにジョアンだし。
パール、念話でまで言わなくて良いじゃない……。
ダガーとブラッドがようやく笑い終えた頃
「おーい、何してんだ?」
男子寮の方から、ソウヤとリキがやって来た。
「あれ?ソウヤ達もギルド?」
「ああ、どっかで何か食べてからな。で、何してんだ?」
「あー、ちょっとジョアン達に頼みが……ソウヤ達も出来たら手伝ってほしい。」
「「は?」」
6人は中央マーケットで各々食べたい物を購入して、近くの公園で集まる事にした。
「で?頼み事って何?」
ジーン兄様から以前教えてもらった、行きつけの串焼き屋のオーク串を食べ、フルーツジュース屋で買ったジュースを飲みながらダガーとブラッドに尋ねた。
「ん?あー、あのさ……いきなりで悪いんだけど、孤児院を手伝って欲しい。」
「「「「は?」」」」
「俺ら、前に依頼で西の孤児院の屋根とか修理や掃除に行って、そこの子供たちやシスターと仲良くなったんだけど……院長先生もシスターも風邪で寝込んでいるらしくって……。」
「あー、それで手伝って欲しいってこと?」
「そうなんだ。俺らの母さんがご飯の時だけ作りに行ってたんだけど……。母さん達も風邪うつったみたいで……。」
「その……料理は無理だろうから、掃除とか手伝って欲しくて。」
「お前達の母さんが寝込んでて、今ご飯はどうしてんだ?」
「家では、食べに行ったりしてるらしい。俺は寮だから妹に聞いただけだけど。孤児院は、買い置きしてあるパンがあるらしい……。」
「院長先生たちが寝込んでいる事って誰か報告した?」
孤児院は、その土地の領主が運営している。王都の孤児院は、西と北と2か所にあるが、どちらも国が運営していたはず……。
「いや、院長先生も寝込んでいて誰に報告していいかわからなくて……。」
「んじゃあ、報告は私からするよ。」
私は、掌にミニペガサスを出して手紙の内容をイメージする。
送り先は、アミーさんこと王妃様だ。掌からミニペガサスが消えて、無事に配達に行った事を確認する。
「……ジョアン、誰に報告したんだ?」
ブラッドが不思議そうにか聞いてきた。
「あー、たぶん孤児院の運営者?そんなことより、孤児院に行こう!あっ、その前にマーケットで食材買って行かなきゃね。」
「いや、でも料理できる人いないんじゃねーの?」
リキが言う。
「えっ?私、出来るよ?」
「「「「えっ?出来んの?」」」」
「うん。なんなら、得意だけど?」
「えっ?じゃあ、昼にテラスでストレージから出して食べてるランチって自分で?」
「あれ?ソウヤ、知ってたの?うん、自分でだよ。」
「「「「……。」」」」
私の答えに、なぜか無言になるソウヤ達。
「ん?」
私が首を傾げていると、ベルが無言の理由を教えてくれた。
「ジョアン、一般的に貴族令嬢は料理しないよ。」
「あっ、そうか。じゃあ、私とベルは一般的じゃないのか。」
「えっ?ベルも出来んの?」
「私は、ジョアンほど上手じゃないよ。」
「「「「マジか……。」」」」
「まあ、ともかく買い出しに行こう。」
私達は、その後、二手に分かれて買い出しに行った。
私ーーもちろんパールとロッソーーとダガー、ソウヤは、肉屋と八百屋に。ベルとブラッド、リキはパン屋と牛乳屋に。代金は、私が立て替える。
買い出し後は、孤児院に集合予定。