軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

258.良い考え

ベルのお屋敷に戻ると、ベルパパが執務室で待っていると言うので着替えて、ベルと共に向かう。

トントントン。「失礼します、ベルです。ジョアンもいます。」

「入りなさい。」

ベルパパの執務室に入ると、重装備と使い込まれた斧が飾ってあった。若い頃にパーティーを組んでいて、ベルパパはタンクを務めていたからだそうだ。

ベルは、ソファーに座ると先程冒険者ギルドで聞いた話をベルパパにし始めた。

ドンッ。「何!?ドンの奴、そんなことを言っていたのか!」

ベルパパが執務室の机を叩き怒る。

「はい。あまりにもジョアンに対して失礼ですわ。」

「いや……でも、ギルマスはバーストギルドの事を考えてーー」

「ジョアン!!そうだとしても、アレはおかしいわ!しかも、あのオッサン、人畜無害そうな顔をしてお父様にも報告しない上に、勝手にジョアンに交渉しようとしたのよ!許せない!!」

ベル……いつも静かなあなたが、怒ると怖いことがわかったよ。オッサンって……間違ってはいないけど……。

「まあまあ、ベル落ち着きなさい。ジョアン嬢、本当に申し訳なかった。」

「いやいや、頭をお上げ下さい。……まあ、私も法外な報酬希望額を出させて頂いたので。」

「ほお〜、いかほどか聞いても?」

「危険手当と叱責手当を含めて大白金貨4枚。犯人の検挙1人につき小白金貨3枚です。」

「大白金貨4枚……わっはははは。そうですか、そうですか。自他共に認める、節約家のドンに……クッククク。……いやいや、さすがに……クッククク。」

「もぉ〜、お父様こそ落ち着いて下さい!」

「あー、申し訳ない。いつも飄々としている奴の驚いた顔を想像したら……クッククク。」

「もぉー!……そう言えば、ジョアン?あのオッサンに言っていた、ランペイル領の同じような事って何?」

「あー、アレねぇ……。」

ベルのオッサン呼びをスルーして、私が冒険者登録後すぐに関わった、王都の冒険者と人身売買グループの摘発について説明する。

「「………。」」

ベルとベルパパは、その事件で私が囮になったことについて驚き、言葉を発する事ができ……

「……さすがランペイル家。犯罪者に対して情けは無用とする考えと行動は、尊敬致します。しかも契約獣まで、主であるジョアン嬢の為にできる事をするとは。」

「はあ〜。ランペイル家の皆様の勇姿をこの目で見たかったわ〜。」

……てました。しかも、私が囮にとかじゃなく私の家族への評価が高い……。

「あは、はは、は……。」

「それにしても、今回のことはほってはおけない。早急にどうにかしないとな。一度、皆にも話しておこう。」

応接室に、私とベル、ベルファミリー、ジーン兄様、ゾーイさん、サラ、ザック、私兵団団長のガイルさんが集まった。

ベルパパから話される王都の冒険者の話とギルマスのやらかしに、ハンスさんとガイルさんは今にもギルドに向かいそうな勢いだ。

「ハンスもガイルも落ち着きなさい!まずは、その王都の冒険者をどうするかだ。」

「証拠を掴まないと言い逃れするだろうな。クッソ!」

ハンスさんは怒りを露わにしている。

「しかし、きっと我々が出向いても尻尾を出さないでしょうし……。」

「確かに、ガイルの言う通りだ。奴らのターゲットは、新人や女性だと言うし……。」

「お父様!!私が囮になります!!」

「「ベル!?」」

「しかし……。」

ベルパパとハンスさんがベルの言葉に驚いている。ベルパパは、何とも言えない顔でベルを見ている。

ベル……たぶん、今回私たちは囮になれないよ……。

「ベル、ちょっと良い?」

「ジョアン?」

「あのね……王都の冒険者が何をするかわかってる?」

「ええ、カツアゲとセクハラですわ。」

「……あのさ、私たちにその要素がない。ギルマスと談笑している段階で新人には見えないし、ツルペタの10才に欲情すると思う?」

「ツルペタ……あっ!……思わない。」

私とベルの会話に、男性陣は目を逸らしている。

「すみません、お父様……。」

「あっ、いや、ベルの気持ちはありがたく受け取る。ジョアン嬢も、申し訳ない……。」

その後、話し合いの結果、サラとゾーイさんが囮をする事になった。2人は明日から冒険者ギルドに通い、王都の冒険者が釣れるのを待つ。

「あーあ、私も役に立つかと思ったのになぁ〜。」

「ベル、しょうがないよ。」

少し不貞腐れてテーブルに突っ伏しているベル、パール、ロッソと一緒にテラスでお茶していると、ベルママとイザベラ様がやってくる。

「まあ、何です?ベル。背骨がなくなってしまったのかしら?」

「あっ、お母様。ごめんなさい。」

「今、お兄様から聞いたわ。ジョアンちゃん、ごめんなさいね。あの、馬鹿ドンが失礼な事を言ったみたいで。」

「いえ、大丈夫です。……イザベラ様は、ギルマスのことご存知なのですか?」

「ご存知も何も、幼馴染なのよ。昔はもっと白くて細くて、いつもイジメられてたのよ。それをお兄様と私が良く助けてたし、ドンが冒険者になるまでずっとここの私兵団で訓練させていたんだもの。」

「「そうなんですか?」」

これはベルも初耳だったようで、私と一緒に驚いている。

「それで?どうしてベルは落ち込んでいたのかしら?」

「だって……女性冒険者として囮になりたかったのに、その……まだ女性としての魅力が足りないって……。」

「「あー。」」

ベルママもイザベラ様も、その理由に納得した。

「私もお手伝いしたかった……。」

「あら?じゃあ、手伝えば良いじゃない?」

「叔母様?」

「だって、王都の冒険者達は新人冒険者もターゲットにしているのでしょう?新人冒険者になればいいのよ。」

「でも、ギルマスと談笑している所を見られている可能性があるから新人には見えないかも……。」

「大丈夫。私に良い考えがあるわ。ちょっと待っていてね。」

そう言うと、イザベラ様はテラスを後にした。

「叔母様の良い考えって何かな?」

「さあ?」

「うふふ、私はわかったかも……でも内緒。ふふふふ。」

ベルと私が悩む中、ベルママだけ微笑みながらお茶をしていた。