作品タイトル不明
236.内緒でお出掛け
私が手紙をスージーさんに託した翌日、学院から寮へ戻ると王妃様から返事が届いていた。
「……。」
……美梨ちゃん、暇なの?
というか、絶対鰻もどき丼を食べたいんだな……。
「ジョアン様?」
手紙を渡されて一言も発さず、ジッと手元をみている私を心配したサラから声がかかり、ようやく顔を上げる。
「ん?あっ、ごめん。まさか、翌日に返事来るとは思わなくて。」
「あー、確かに。間違いなく異例ですね。」
「だよね〜?で、内容は……ふふふ。」
「ジョ、ジョアン様?」
「あっ、ごめんごめん。サラ、ちょっと出掛けるわ。」
「えっ?今からですか?」
「うん。それから、キャシーちゃんの所に先触れをお願い。着替え次第伺いたいって。」
「わかりました。アニー、着替えの方はお願いね。」
「うん。」
着替えが終わって、キャシーちゃんの部屋を訪ねる。
キャシーちゃんの部屋は、淡いピンクの壁紙に、白の猫足の家具、ベッドは天蓋付きといかにもお姫様の部屋だった。でも、キャシーちゃんに合っていて、全然嫌な感じがしない。
「ジョアン、急にどうしたの?」
「あのね、ちょっと私とお出掛けしない?」
「お出掛け?今から?」
キャシーちゃんだけじゃなく、ビビさんも驚きを隠せない。
「うん。王妃様主催のお茶会までに、ちょっと会っておきたい人がいて。その人が今からなら大丈夫って。」
「会っておきたい人?……もしかして。」
「うん、たぶんキャシーちゃんの想像通りだと思うよ。」
「じゃ、着替えないとーー」
「あー、大丈夫。その人の家に行くわけじゃないと思うから。」
「で、でも……。」
「私みたいなワンピースで大丈夫だよ。」
「そうなの?」
「うん。」
*****
待ち合せ場所は、王都のランペイル邸だった。
でも、今から外出届けを出すのは色々と面倒だし、王妃様と会うことがどこから漏れるかわからない。……となれば、転移するしかない。でも、キャシーちゃんに話していいか私では判断がつかない。
「ん〜、キャシーちゃんに話していいか、やっぱり一回お父様に聞いてくる。」
「そうですね。」
「キャシーちゃんが来たら対応お願いね。」シュン…。
王都の屋敷から、転移扉でお父様に理由を説明し確認を取るとキャシーちゃんなら話しても良いと許可が貰えた。
シュン…。
帰りは念のため、サラとアニーの部屋に転移する。
ガチャ。「お戻りですか?」
「うん。キャシーちゃんは?」
「先程、お越しでお待ちです。」
「ありがとう。」
「ごめんね、キャシーちゃんお待たせしちゃって。」
「大丈夫よ。」
「行く前に話しておきたいことがあるの。」
「何かしら?」
「今から、王都のランペイル邸に行くんだけど……私のスキルを使って行くの。」
「スキルを使って行く?どういうことかしら?」
「私……《転移》が出来るの。」
「え?《転移》って、高位魔術師の中でも極一部じゃあ?」
「うん。らしいね。でも、出来るんだ、私。それでね、この事は極一部の人しか知らないの。家族以外だと王族とベルだけ。だから、キャシーちゃんもこの事は内緒にしてくれるかな?」
「そ、そんな重要なことを私に?」
「うん。だって友達だし。あっ、でもウチのお父様からも許可貰っているからね。」
「友達……。ありがとう。絶対に誰にも話さないわ。」
「良かった。じゃあ、私の手を握って。」
「こ、こうかしら?」
「うん。じゃあ、サラ後はお願いね。」
「かしこまりました。」シュン…。
シュン…。「到着〜。ようこそ、ランペイル邸へ。大丈夫?キャシーちゃん?」
「えっ、ええ。本当に一瞬ですのね。」
「おかえりなさいませ、お嬢様。」
「あっ、ただいま〜。こちら私の友達のキャシーちゃん。」
「こんな時間に申し訳ありません。カッター公爵家長女、キャサリーヌ・カッターと申します。」
「ご丁寧にありがとうございます。私はこの屋敷の家令、リアムと申します。まだ、彼の方はお越しではありません。それまでこちらでお茶でも。マーサ。」
「はい。侍女長のマーサと申します。お嬢様、まずはお座り頂ければ……。」
「あっ、そうだね。キャシーちゃん座って。」
しばらくすると
「お嬢様、いらっしゃいました。」
「はーい。じゃあ、キャシーちゃん行こうか。」
「は、はい。」
「大丈夫だって。でも、驚くかも知れない……。」
「えっ?」
ガチャ。「失礼します。」
「ジョアンちゃーん、久しぶり〜。」
「アミー様!」
笑顔で手を振る王妃様に、それを窘めるスージーさん。
私にとってはいつもの光景。でも、キャシーちゃんにとっては……うん、やっぱりビックリするよね。
「キャシーちゃん、大丈夫?アミーさん!TPO!」
「あっ、ごめーん。んんっ……お久しぶりね、ジョアン嬢。そして、キャサリーヌ嬢。」
「あっ、ご、ご無沙汰しております。王妃様。」
キャシーちゃんが綺麗なカーテシーで挨拶をする。
「あっ、ここではアミーと呼んでくださる?お忍びですから。」
「か、かしこまりました。アミー様。」
「あら、様付けもいらなくてよ?」
「……はい、アミーさん。」
「で?ジョアンちゃん。どうしたの?」
「はぁー、もう素でいくんですね?」
「だって、お忍びだし。キャサリーヌ様がここにいるって事は、ジョアンちゃんが気を許しているお友達なんでしょう?」
「まあ、そうですね。じゃないと、キャシーちゃんを転移で連れて来てアミーさんに引き合わせてはいないですね。」
「じゃあ、大丈夫でしょ。で?どうしたの?」
「あー、来週の王妃様主催のお茶会について聞こうかと思って。」
「あ〜、アレね。そろそろ本格的にアルの婚約者を決めないとって思ってね。……ってことは、キャサリーヌ様が連れて来るご友人はジョアンちゃん?」
「そうなりますね。私的には行きたくないんですけど……。大好きなキャシーちゃんの頼みなんで行きますよ。」
「ジョアン……。」
「で、ジョアンちゃんはそのお茶会について何か心配なことが?」
「心配事って言うか……他の候補者について聞きたかったのと、もしキャシーちゃんが婚約者になったとして本当に幸せになれんのかな?って。」
「ジョアン!?な、何を。」
「だって、アルバート殿下の気持ちはわからないもの。確かに政略結婚かも知れないけど、それでもキャシーちゃんが幸せになれないなら私はアルバート殿下にキャシーちゃんは渡せない!」