作品タイトル不明
230.達成報告と解体場
達成報告の為にギルドのスウィングドアを開けると、時間帯もあって報告に来ている冒険者が多い。酒場の方も夕方ということもあり、繁盛しているようだ。
「ジョー!」
呼ばれた方向を見ると、酒場でジーン兄様、ヴィー、エリック様が手を振っている。
「2人も依頼受けてたのか。」
「うん。今から達成報告するところ。」
「何の依頼だったんだ?」
ヴィーに聞かれる。
「ビッグボアの討伐。それと、ついでにジャイアントスネークを狩ってきた。」
「「「はっ!?」」」
「いやいやいや、ついでのレベルじゃねーよな?Cランクの魔獣だぞ?」
「あー、でも、ついでには変わらないかな?」
「……ちなみにどのくらいの大きさだったんだ?」
「今から達成報告するから、一緒来る?」
「「「行く!」」」
達成報告をする為に、受付カウンターに並ぶ。程なく順番が回ってきて、甘露芋農家さん達からサインをもらった依頼書とギルドカードを提示する。
「はい。これで達成報告完了よ。お疲れ様〜。」
「あの、リリーさん?ついでにジャイアントスネーク狩って来たんだけど……?」
「はい!?ジャイアントスネーク?ウエストウッズ?……ちょ、ちょっと待ってて……えっと、確かここに……あっ、あった。これじゃないかしら?」
リリーさんが取り出したのは、ジャイアントスネーク討伐の依頼書。なんでもウエストウッズに山菜を採りに行った人が、襲われたらしい。その時に人は無事逃げることができたらしいが、山菜を入れていたカゴを飲み込まれた。そのカゴの中には土で汚れないように外していた金の指輪を入れていたらしく、どうしても取り戻したいという依頼。
「あー、それかも。討伐部位ありますよ?」
「でも、胴体はウエストウッズに置いて来ているわよねぇ〜。どうしようかしら……。」
「胴体もありますよ?」
「えっ!?あるの?」「「「なんで!?」」」
「ジョアン、何であんなの持って来たんだ?皮だけ剥がして来たら良かっただろ?」
「ヴィー!……アレは、美味いらしいよ。」
「マジか!?ってか、何で小声なんだ?」
「誰かに聞かれて、無駄な討伐は避けたいから。」
「あー、他の冒険者が危なくないようにかい?」
「違いますよ、エリック様。乱獲されたら食べる機会が減っちゃう!」
「ジョー……。」「「『ジョアン……。』」」「「ジョアンちゃん……。」」
その場にいた全員が、ジョアンの言葉に呆気に取られる。
「と、ともかく胴体ありますよ。解体場で指輪あるか見てもらいますか?」
「そうね。じゃあ、指輪が出てきたら依頼達成で良いかしら?」
「「はい!」」
「じゃあ、解体場行きましょう。そこでビッグボアの討伐部位の角も確認させてね。」
「はーい。」
解体場に行き、討伐部位をストレージから取り出す。
「まずは、ビッグボアの角……はい。」ゴトッ。
「これまた立派な角じゃな。本当に相変わらず規格外じゃな、お嬢さんは。」
そう言うのは、解体場の主と言っても過言ではないポム爺。なんでも我が家の暗器職人トム爺の幼馴染らしい。若い頃は一時期、一緒にパーティを組んでいたそうだ。
「えへへ。それから、ジャイアントスネークの頭ね。」ドサッ。
「うっわ、めちゃくちゃデカい……。2人でよく倒せたな。」
「ジーン兄様、パールもいたから。」
「いやいや、だとしても凄いから。」
「あっ、それと胴体ね。……うんしょ。……ヴィー、ちょっと引っ張って。」
「あー、了解。いくぞ、そーれ……えっ?……デカッ。」
「ほら、頑張って。まだ半分もいってないよ。」
「嘘だろ!?ちょっ、ジーン兄、エリック様手伝って。」
「「お、おう。」」
皆んなで『大きなかぶ』のように、うんとこしょとジャイアントスネークを引っ張りだす。
「「「「「………。」」」」」
胴回りが直径30cmほど長さは10mぐらいの大きさに、皆んなは黙ってしまった。
「……がっははは。これはなんとも、大物を 殺(や) ったもんじゃな。」
「でしょ〜?皆んなで頑張ったの。あっ、それでねポム爺、皮は素材で売りたいんだけど身は欲しいんだ」
「構わんが、何をするんじゃ?」
「食べるの。」
「なんじゃと?ジャイアントスネークなんぞ、生臭くて食えたもんじゃないじゃろ。」
「上手いこと調理すると美味しいんだよ。作ったらポム爺にも持ってくるから。」
「……ワシはいらんがのぉ。まあ、解体したら届けてやるわい。」
「ありがとう!身は全部私のだからね。」
「ちょっと待った!その前に指輪を見つけて欲しいの。」
リリーさんがポム爺に説明をして、他の手の空いている解体人と共に腹を割いていく。
腹開き……関西風ねぇ〜。
武家社会だった関東では「切腹」を連想させる腹開きは縁起が悪いから背開きだもんねぇ〜。
開き始めて30分、お目当ての金の指輪は無事に見つかった。ということで、こちらの依頼も達成したことになる。
一度の依頼で2つ同時達成にベルとハイタッチする。
「はい。じゃあ2人共プレートを返すわね。このままだと、またすぐに昇格試験かしらね〜。もぉー、本当に規格外なんだから。」
リリーさんは苦笑する。
「ホント?リリーさん?」
「ええ。でも、そんなに無理しなくて良いのよ?」
「うん。無理はしてないから大丈夫だよ。」
「そう?それなら良いんだけど。」
ジョアンが喜んでいるのとは逆に、ジーンとヴィンスは焦っていた。このままでは、あっという間に追いつかれ下手したら抜かされてしまう。それは、兄として年上の従兄弟としてプライドが許せない……。
「ジーン兄……。」
「うん、もう少し依頼をこなさないとヤバいぞ。これは……。」
「授業終わったら王都でも依頼やらない?」
「ああ、本当だな。来週からやるか?」
「やる!」
「よし!」
ジーンとヴィンスがそんな話をしていることは、パールだけが聞いていた。
『ふふふ。ジョアンがジーン達を抜かすのはすぐね。』