作品タイトル不明
203.夕食会
入寮式は、学院の講堂で行われた。
この講堂は、明日の入学式の場所でもある。そこへ、入寮する生徒と先生、そして生徒代表が何人かいた。前世で言うところの生徒会の様な人たち。
その中には、知った顔が……まさか生徒会長が、ノエル兄様だったなんて、聞いてない……。
入寮式では、学院長の長々とした話、男子寮女子寮の各寮長の挨拶と説明、そして生徒代表ノエル兄様の話を聞き終わった。堂々と話すノエル兄様は、妹ながらも格好良いと思った。
この後3刻間後には、夕食会という名のパーティーがあるらしく制服からドレスに着替えなければならない。お茶会にも参加したことのない私にとって、屋敷以外では初めてのパーティーとなる。
寮へ戻ろうとした時に、ノエル兄様に呼び止められる。
「ジョー、どう?驚いた?」
「はい。どうして生徒会長だってこと、教えてくれなかったんです?」
「だって、驚かせたかったから。……で、どう?やっていけそう?」
「ん〜、まだわからないですけど……でも、部屋の隣がベルなんで大丈夫です。ベルのメイドさんとサラたちも同級生で仲が良いし。」
「ベル嬢が隣なら、良かったね。」
「あっ、ちゃんとアラン兄のペンダントつけるんだよ。」
「はい。」
「僕もパーティー参加だから。じゃあ、後で。」
*****
ドレスアップを完了する。
今回の装いは、私の瞳と同じく水色でノースリーブのプリンセスライン。首元はラウンドネックで、上半身はタニが頑張って編んでくれたレースを重ね付けし、ウエストにはバックリボンを付けている。髪の毛はハーフアップにして貰い、これまたタニが作ってくれたレースで結ぶ。
『可愛いわよ、ジョアン。』
『うん、ホント可愛いね〜。』
「ありがとう、パール。ロッソ。」
『あのペンダント、忘れないで。』
「あっ……。」
パールに言われて、すっかり忘れていたペンダントを付ける。
「ジョアン様、ベル様がお迎えに来られました。」
「はーい。」
通常のパーティーだと、エスコートする男性が必要だが、今回は新入生歓迎会のようなものだそうで、エスコートは必要ないらしい。だから、ベルと約束をした。
「お待たせ、ベル。……わあ〜、綺麗ね〜。」
ベルの装いは、濃緑の瞳に合わせたエメラルドグリーンのグラデーションで、ノースリーブのプリンセスライン。首元はハイネックで、ウエストを濃緑のリボンで結んでいる。赤茶色の髪の毛は、編み込んでアップスタイルに。
「ありがとう。ジョアンも可愛いわ。」
「えへへ、サラに頑張って貰った。」
サラの特殊メイクのお陰で、ちゃんと良いとこの令嬢に見える。
講堂に来ると、先程とは打って変わって華やかな装飾が施されている。
そこへ続々と着飾った新入生がやって来る。平民の生徒には、無料のドレスやスーツのレンタルとヘアメイクがあるそうで、皆んなドレスやスーツで着飾っている。ただ、着なれないからか皆んな恥ずかしそうにしている。
ベルとドリンクを取り、談笑していると入口の方がざわつく。何かと見ると、入寮式にも参加していた生徒代表や数人の先生が入って来るところだった。
その中には、ノエル兄様も。
「あーー。」
「どうしたの?ジョアン。」
「あー、あそこの中で背の高い人いるでしょ?さっき代表挨拶した。」
「うん、いるね。シュッとした人でしょ?それが?」
「アレ、ウチの上の兄様。」
「えっ?あっ、そう言えば挨拶の時にランペイルと。」
「そう。それでね、今にこやかに笑顔で会話してるけど他所行きの顔だなぁ〜と思って。」
「そうなの?」
「うん。中身は魔術バカだよ。」
「あーー、そうだったね。」
文通をして、家族の話もしていたのでベルは納得してくれる。
そんな話をしていると、話題のノエル兄様が近付いてくる。
周りの女の子達は、ノエル兄様を見てポーッとしてる。なんなら、数人の男の子もポーッとしている。
「ジョー、楽しんでる?」
「はい。あっ、ノエル兄様、こちらがベルです。」
「初めまして、ベル・バーストと申します。」
「話は聞いているよ、これからもジョアンのこと宜しくね、ベル嬢。」
「はい。こちらこそ、宜しくお願いします。」
「ベル嬢の兄のハンス殿とは、生徒会で面識があるんだよ。お元気かな?」
「えっ?そうなのですか?兄は……元気すぎて困るぐらいです。」
「あはは、ハンス殿らしい。卒業して領地に戻ってしまったから、なかなか会う機会もなくてね。宜しく言っておいてくれ。」
「はい、ありがとうございます。」
再び入口の方がざわつく。でも、先程よりも黄色い声が多い。
「あっ、来たな。」
「ノエル兄様、何が来たの?」
「もう少しでわかるよ。」
そう言って私にウインクをする。
いやいや、いくら兄様でもそれは恥ずかしい。
も〜無駄にイケメンなんだから!
「あっ、見つけた!」
「ゲッ!」
人だかりの中から出てきたのは、フレッド殿下だった。まさかの登場の上に、私を指差すのでつい本音が出てしまった。
フレッド殿下は私に近づくと
「お前、『ゲッ!』とはなんだ。」
「あら、 私(わたくし) そんな事言いまして?殿下の聞き間違いじゃありませんこと?」
「チッ……まあ、いいや。」
あっ、コイツ舌打ちしやがった……。
「殿下、そろそろ。」
そうフレッド殿下に話しかけたのは、アラン兄様だった。
アラン兄様は、私と目が合うとニコッと笑ってくれる。仕事していると無表情なのに、不意に見せてくれる笑顔は優しい。
あ〜、何これ?キュンキュンするんですけど?
やっぱり近衛隊の制服着ると格好良さ倍増だわ。
「おお、わかった。ジョアン嬢、俺のスピーチちゃんと聞いておけよ。」
「えっ?出来るんですか?」
「出来るわ!」
フレッド殿下の後ろで、声を出さずに笑っているリュークさんをアラン兄様が肘で小突いていた。
フレッド殿下が、ステージの方へ行くと
「ジョ、ジョアン、フレッド殿下と知り合いなの?」
私と殿下の会話を見ていたベルから聞かれる。
「え?あー、うん。お父様と陛下が同級生で。小さい頃から面識ある……って、ノエル兄様どうして教えてくれなかったんですか!」
「え?面白いかなぁ〜と思って?」
「もぉー、面白くないですよ。まあ、アラン兄様に会えたので良かったですけど。」
「アラン兄様って、さっきの近衛隊の方?」
「そう。ベルのこと紹介したいけど、邪魔なのいるしなぁ〜。」
「クッククク……ジョー、一応王族だから『邪魔』はダメだよ。念のため防音の魔道具発動してて良かったよ。」
「さすが、ノエル兄様。」
「そりゃ、誰が聞いているかわからないからね。」
まあ、邪魔なのが フレッド(ガキ大将) で良かった。もし、 アルバート(腹黒) だったら、更に面倒だもの。