作品タイトル不明
182.餅つき大会
ーーー翌日。土の日。
今日の午後には、お祖父様たちが帰る。
帰る前に、草餅を食べさせてあげたいなぁ〜と思いながら、朝食を取っているとダイニングにグレイがやって来て、ダニエルさんが臼と杵を持って来てくれたと言う。
朝食も早々に、厨房へ行くとそこには待っていたモノが鎮座していた。
「おっ、来たな。」
ケンさんたちが待っていたと言う。
「あれ?ダニエルさんは?」
「もう帰ったよ。なんか徹夜したらしくてさ、帰って寝るって。」
「えっ?マジか。悪いことしちゃった……。」
「まあな……頑張って作って、出来たの持って行ってやったら良いよ。」
そう言って、ケンさんが慰めるように頭をポンポンしてくれた。
「うん。頑張って美味しいの作る!!」
「で、まずは何したら良いんだ?」
「まずは餅米を蒸す!」
「「了解。」」
水を吸った餅米は、かなり重いのでアーサーとベンがやってくれる。そして、餅米を蒸している間、臼と杵を外に持っていく。さすがに厨房では狭すぎる。
「ジョー、これがそう?」
リビングから私たちを見つけ、家族が外へ出てくる。昨日、ダニエルさんの所に行った報告と商会の相談をした時に、餅の作り方から杵と臼の使い方、草餅のことを説明していたので、みんな気になっていたらしい。
「はい。そうですよ、ジーン兄様。今、餅米を蒸している所です。」
「「蒸し上がりました〜。」」
そう言ってアーサー達が第一弾の餅米を持って来てくれた。
「えっと、まずは…これで潰すんだったよな。」
「そう。最初に米の形がないように潰してからだよ。」
餅米が冷めてしまうと、固まってしまうので時間との勝負。なので、先に口頭でチーム料理人には説明していた。
「なぁ、ジョーもし潰さなかったら出来ないのか?」
「あー、それだと半殺しになる。」
「「「「「「「「「「「半殺し!?」」」」」」」」」」」
「ど、どういうことなんじゃ?」
お祖父様が何故か焦っている。
「え?どういうことって、そういうこと?」
「いや、だから何で半殺しになるんじゃ?誰から?」
「は?……あー、そうか。あははは。」
「いやいや、笑うとこじゃないよね?」
「す、すいませんノエル兄様。ぶっあははは……。半殺しっていう食べ物です。あはは……米を半分潰したから、クッククク……半分殺したって事で。たぶん、一般的には『ぼた餅』って名前なんです。」
「「「「「「「「「「へぇー。」」」」」」」」」」
「じゃあ、餅はなんて言うんだ?」
「皆殺し。」
「なんて物騒な名前なんだ……。」
「でもお父様、美味しいですよ。」
「うん。それは認める。私は磯部焼きなら、いくらでも食べれるからな。」
「よし、全部潰れた……えっと、皆殺しになったぞ。」
「ふふふっ。じゃあ、アーサーつき手ベンが合いの手で。」
「ふんっ、ふんっ……、ふんっ、ふんっ……。」
「………はいよっ、………はいよっ。」
2人で息ぴったりに餅をついていく、途中で茹でて刻んだヨモギも入れきれいな緑色の餅になっていく。
さすが、2人で冒険者のパーティ組んでるだけあるわ。
初めてなのに、息がぴったりだわ。
あっという間に、つきあがったわ。
第一弾の草餅をストレージにしまっていると
「ジョー、ジョー、俺もやりたい!兄上、補助してくれよ。」
「えー、ジーンに殴られそうで怖いんだけど……。」
そう言いながらも、兄様たちも息を合わせてついていく。その周りを双子ちゃんがピョンピョン跳ねながら応援してる。
「にー様がんばれー。」「にー様、ファイトー!」
可愛い双子ちゃん、プライスレス。
「あー、ヤバい。……腕が上がらない。」
「ジーン兄様、早くしないと固まっちゃいます。」
「んなこと言ったって……グレイ、お願い。」
「じゃあ、合いの手はナンシーだね。」
そう言って、お兄様たちはグレイ夫婦と交代する。でも……
「先程より固くなってますわ。あなた、スピード上げていきますよ。」
「ああ……俺が合いの手なんだ……。」
ナンシーがつき手、グレイが合いの手だった……。
「はい!はい!…はい!はい!…はい!はい!」
「……うわっ。……あぶなっ。……ヤベッ。」
先程のアーサー達とは比べ物にならないぐらいのスピードと、合いの手の掛け声とはちょっと違うグレイの声。
あ〜、奈良で見た高速餅つきみたいだわ。あれ以上に早いけど……。
それにしても……グレイ、よくあのスピードでついていけるなぁ〜。感心するわ。
「ふぅ〜、ジョアン様どうですか?」
「えっ、あっ、……うん、ばっちり。2人ともありがとう。」
「いえいえ、これは良い鍛錬になりますね。」
「そ、そう?」
ナンシーは、鍛錬になるとか涼しい顔して言ってるけど、彼女の足元には息を切らしてハァハァ言ってるグレイがしゃがみこんでる。スタンリーが、心配して声をかける。
「だ、大丈夫か?グレイ。」
「は、はい。な、なんとか大丈夫です。」
餅がつきあがり、厨房へ移動してストレージから餅と丸めておいた餡子を取り出す。
「じゃあ、打粉として片栗粉を出して。」
「はーい。」
「一度、私がやってみせるね。……あっつ。まず、ちぎった餅を、こうやって…….円形に広げ掌に置いて餡を載せて、端を摘んで捻って閉じ巾着の様に包み丸めるの。で、ひっくり返して更にコロコロって丸めたら捻って閉じた方を下にして置いたら。チャッチャラーン、完成〜。」
「「「「おお〜。」」」」
「じゃあ、熱いうちにやってみよー!」
「「「「おー!!!!」」」」
「そう言えば、もう一回分の方はどうするんだ?草入れなかった方。」
ケンさんが作業をしながら聞く。
「ふふふっ。ヨモギね。アレは、のし餅にしようかと思って。」
「「「「のし餅?」」」」
「うん。バットの中に入れて乾燥させて、四角に切ればのし餅。それを焼いて食べるの。ほら、磯部焼きの時みたいに。」
「「「「なるほど〜。」」」」
「というわけで、バット、バット、バット〜。……って呼んだら、返事したら便利なのにね。」
「「「「は?」」」」
「あっ、気にしないで作業続けて……。」
気を取り直して、バットにいれてドライをする。
天日干しじゃないから、あっという間に大量ののし餅ができた。