作品タイトル不明
170.物騒な家族
話を聞きたいということで、3階のギルマスの部屋に通される。そこには私の他に、受付のお姉さん、スキンヘッドさん、眼帯さんがいる。最初は酒場のテーブルに行こうとしたが、野次馬が多くて止めた。
「で、どういうことだ?」
「どういうことも何も、私は登録に来ただけですよ。最低加入年齢はクリアしてますし……。でも、こちらのお姉さんが無理だって、ジュースを奢るから帰れって……その時、キラービーがお姉さんを刺そうとしてたので排除しただけです。」
「あー、なるほどな。理由はわかった。ただ、キラービーをやったのもまぐれかも知れねーけどな。ここのギルドは他のギルドより登録するのは難しいぞ?登録のテストだって、こんなヤツらが相手になるんだぞ?」
と、ギルマスは顎でスキンヘッドさん達を指す。
そう言うギルマスだって、コワモテの髭面じゃない。ほら、スキンヘッドさん達が、お前が言うなっていう顔で見てるわ。
「はい。でも、自分の住むランペイルギルドが良いです。テスト受けさせて貰えませんか?」
「じゃあ、テスト受けて無理なら諦めるんだな。おい!ジャッカル、お前が相手な。こいつは、ここのギルドのCランカーだ。全力でいけよ。立会いはギルマスの俺とそこにいるDランカーのコダック。あとは……おい、リリー酒場に誰かいないか探してこい。」
「はい。」
返事をし酒場からお姉さんが連れて来たのは、さっき見かけた頬にギザギザの傷のある人。Bランカーのギースさんと言うらしい。
冒険者ギルドの裏手にある体育館のような実技試験場へ通される。
お姉さんは、私を心配そうに見る。
「お嬢ちゃん、本当に大丈夫?無理しちゃダメよ?」
「ありがとうございます。お姉さん、危ないから離れてて下さいね。」
お姉さんが、立ち会いをする3人の近くに来たのを確認しギルマスが、
「時間は無制限だ。準備はいいか?」
ジャッカルさんは、とても重たそうな両手剣を構えた。私はコートを脱いで、右手に片手剣を握る。
「始め!!」
ギルマスの掛け声で試験が始まる。
私は先手必勝とばかりに間合いを詰めるが、ジャッカルさんはジャンプして両手剣を振り下ろす。私は片手剣で受け止め脇に流す。
おっも……。さすがCランカー。
でも、ここで負けるわけにはいかない!!
回し蹴りをして、空いている左脇腹を狙うが一歩後退して躱される。
やっぱり、身長差か……。じゃあ、小さいからこそ出来ることをしようかな。
素早く片手剣をストレージに仕舞う。
私はジャッカルさんの頭上よりも高くジャンプして、ストレージから先端を潰したクナイを取り出し、両手で計8本ジャッカルさんの頭に投げつける。ジャッカルさんがそれを剣で弾く間に上から後ろを取る。クナイを弾き終わったジャッカルさんが振り向きざまに袈裟斬りを仕掛けた瞬間に、私はジャッカルさんの脚の間を潜り抜け、前から喉元と心臓に既に片手ずつ腰に装備してた先端が尖っている方のクナイを突きつけていた。
「止め!!」
ギルマスの声がかかる。
ギルマスがコダックさんとギースさんに問いかける。
「今の試合、挑戦者勝利でいーか?」
「異議なし!」
「異議なし!」
「今の試合、不正はねーな?」
「不正なし!」
「不正なし!」
「よし!じゃあ俺はランクEが妥当だと思うが?」
「でも、Cランカーのジャッカルに勝ったから、俺はランクDが相応しいと思う。」
「俺はランクEだな。」
「よし!この度の挑戦者をランクEと認定する。やったな。」
「やったーーー!!ランクEゲットーーー!!」
私がぴょんぴょん跳ねて喜ぶと、ギルマスが不器用そうにワシャワシャと頭を撫でてくれる。
再び、ギルマスの部屋に移動して手続きを行うことになった。受付のお姉さんがお茶を持ってきてくれたけど、カチャカチャと震えてる。
「さっきは、ごめんなさい。おどろかしてしまって……。」
「い、いえ、私もごめんなさい。小さいからってちゃんと話も聞かずに……。それから、ありがとう。キラービーがあんな近くにいたなんて気づかなかった。あっ、私はリリーよ。宜しくね。」
リリーさんが、冒険者ギルドの利用の仕方を教えてくれる。
基本的な依頼の受け方、報告の仕方など。ギルド内にはカウンターの左奥に資料室があって、依頼について調べることができるそうだ。酒場では酒類以外に、ソフトドリンク、料理が注文できる。さっきは気づかなかったが、階段下には売店があってポーションや依頼に必要なアイテムを販売している。
2階には、ギルマスの部屋だけでなく、会議室や仮眠室があるそうだ。そしてギルドの裏手には先程行った実技試験場だけでなく、解体場と納品所が設置されているそうだ。
リリーさんがプレートを発行するからと、部屋を出て行く。お茶を飲みながら、リリーさんの説明が終わるのを待っていたギルマスが話し出す。
「改めておめでとう。まずはお前の名前を聞かせろ。」
ジャッカルさん、コダックさん、ギースさんもこちらを見ている。
「はい。ジョアン・ランペイルと言います。これから、宜しくお願いします。」
「あー、スタンリー様の娘か。どーりで強いわけだ……。」
「「「あー。」」」
皆んなが納得する。
「ジーンの妹か……。アイツも強いからな。」
コダックさんが頭を掻きながら言う。
「んで、お嬢は誰に師事してんだ?あそこだとエル様あたりか?」
ギルマスが聞く。
「いえ、ナンシーとお祖母様です。」
「「「『氷華の悪魔』……。」」」
「えっ!?ナンシーのこと?」
「あー、ナンシーさんとリンジー様に師事してんなら、この強さもしゃーねーな。ナンシーさんは、ここのS。リンジー様はSSだからな。」
「「「SS……。」」」
「あの、ギルマス……もしかして、そのSSって『獄炎の魔女』っすか?」
ギースさんの問いかけに無言で頷くギルマス。
お祖母様……『獄炎の魔女』って。ナンシーも『氷華の悪魔』だし、ウチの家族はそんなに物騒なのかな?
でも、格好良い!!