軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

悪役令嬢にざまぁされないように、手を組んだ方がいいですか?②

いや、正確にいうと前世の私の仲間かもしれない。

前世で、インターネットやSNSが普及してなくて、周りに推し語りができる人がいなかったら、私も同じように布教活動をしていた気がする。

そのくらい、眼鏡キャラにハマってた。

好きについて語りたい、仲間が欲しい気持ち、すっごく分かる……。

「さて、布教活動もしたところだし、本題に入ろうかな。時間も限られてるわけだしね」

ひょいとサンドイッチをつまみながら、リカルド王子は言う。

その言葉に、ネイエ様は大きなため息を溢した。

「今日じゃなくて、別日にお呼びくだされば良かったではないですか」

「それだとカミレ先輩に会いづらいし、レフィトは理由を付けて断ってくるからね。逃げにくいタイミングを狙わないと」

「カミレとイチャイチャしたかったのに、最悪だよぉ。オレの憩いの時間を邪魔したんだから、大した用事なんだよねぇ?」

「僕にとっては大した用事だけど、他人にとっては知らないよ」

そう言いながら、リカルド王子は私を見た。

えっと……、私のことは会ってみたいだけじゃなかったの?

「カミレ先輩、ここにある料理は、好きなだけ持って帰っていいからね」

「いいんですか?」

「うん。ハオトレ家って貧乏でしょ? 施(ほどこ) しは、必要だと思うんだ」

「……見返りは要求しますか?」

「しないよ」

「ありがとうございます。お言葉に甘えて、いただきますね」

ラッキー。言い方は気になるけど、言質は取ったし、もらえるものは有り難くちょうだいしておこう。

夕食に家族で食べても、あまりそうな量だ。二食分くらいの食費が浮くんじゃないかな。

「あの、何か?」

これで話は終わったはずなのに、リカルド王子が愉しそうに私を見てくる。

やっぱりなし……とか? からかって遊んだだけなのかな。

「カミレ先輩のそういうところが、マリアン嬢の神経を逆なでするんだろうね」

「え?」

「学力優秀で可愛らしい顔立ちに、素直な反応。ちょっとした嫌味や嫌がらせで、泣きでもくれれば、気が晴れたかもしれない。それなのに、お礼を言われ、 貴族(自分たち) の常識も通じない。嫌われるべくして、嫌われたって感じだね」

すごく嬉しそうにリカルド王子は言ったが、何かがその頬をかすめて行った。

リカルド王子の右の頬には赤い筋が入っており、その後ろの壁には、普通の力では絶対に刺さらないであろうものが刺さっている。

「お口チャックしようかぁ?」

レフィトが次のフォークを手にしつつ、笑みを深めた。

もしかしなくても、あの壁に刺さっているフォークは、レフィトの仕業だろう。

これは、さすがにマズイんじゃ……。

何を言っても気にした様子はなかったけど、怪我をさせてしまった。

侍従さんという目撃者もいる。

サァーっと血の気が引くのを感じながらも、罪を重ねる前にレフィトを止めなくては……、と口を開いた。

「レフィ──」

「すぐに暴力で訴えると、モテないよ?」

…………へ?

これも、気にしてないの?

「モテる必要ないから。カミレに暴言を吐いて、殺されなかったことをカミレに感謝しなよぉ? カミレが嫌がるから、殺されてないんだからねぇ?」

「暴言なんて吐いてないよ。褒めただけだろ。兄さんたちと敵対してくれる人は貴重なんだから」

え? えぇ!!??

状況理解がまったく追いつかないんだけど。

言っていることも、言葉としては 理解(わか) るのに、意味がわからない。

「でも、気分を害したなら謝るよ。カミレ先輩、ごめんね」

「いえ……」

うーん。悪意なく、人の神経を逆なでしてるってこと……かな?

クセが強くて、性格に難がある、レフィトとネイエ様はそう言っていた。

たしかに、そうかもね。

でも、マリアン御一行の方が、余程性格に難があるように思える。

リカルド王子は、感性が独特過ぎるし、基準がすべて自分なんだ。自分の言葉が、相手にどう思われるかわからないのか、わかる気もないのか……。

前者っぽい気がするなぁ。

「リカルド王子は、レフィトを罰するおつもりですか?」

「何で? そんなことする必要ないよ」

そう言うと、壁に突き刺さり、未だに刺さった振動で揺れているフォークを引き抜いた。

「はい、証拠の品」

「……ありがとうございます」

フォークを手渡してくれた後は、壁に空いた穴を修繕するように侍従に指示を出している。

「カミレ先輩は、僕の味方になってくれる?」

単刀直入な質問。

王族らしさも、貴族らしさも感じない。

味方を求めてるけど、目的もわからない。いや、何となく見当はついているけど。

「兄さんに勝って、僕が国王になりたいんだ」

無邪気に言われた言葉に重みはない。

けれど、内容的には激重だ。

私は、ざまぁされないで、レフィトと生きていきたいだけなんだよ。

そのために、戦う決意がやっと固まったばかりなんだよ。

頼むから、もうちょっと展開を遅くして欲しい。

まさか、これは悪役令嬢版のメインストーリーに沿ってるとか?

いや、今重要なのはそこじゃない。

断って不興を買うのは、まずいの?

それとも、気にしないの?

とりあえず、保留とか?

そもそも、私を仲間にする意味って何?

あ、レフィト? レフィトを味方にするため?

うぁぁぁぁあ。どうすればいいのぉぉぉぉぉぉお!!??