軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

悪役令嬢にざまぁされたくない令嬢の婚約者は、笑みを浮かべる〜レフィトside〜①

「えっ!? 同情? 可哀想!!??」

どういうこと? と、聞かんばかりの声に、少しホッとする。

自分から聞いたくせに、頷かれるのが怖い。

憐れまれたくなくて、カミレの視界を奪った。

もし、空色の瞳に、オレへの憐れみが含まれていたら……。想像するだけで、どうにかなってしまいそうだ。

「えっと……、どこに同情する要素があったの?」

困惑した声に、塞いでいた手をどけた。

その瞳を確認しても、戸惑いと困惑のみが映っている。

「家族と義務でしか食事をしたことがないんだよぉ? 可哀想でしょぉ?」

やめておけばいいのに、試すようなことをしてしまう。

馬鹿だと思うのに、やめられない。

オレ、すごい面倒くさいやつだよなぁ……。

否定されるのを期待して、肯定されることに怯えている。

「可哀想……かぁ」

悩むカミレを眺めるオレの顔は、きちんと笑えているだろうか。

いや、今、笑っている方が変なのかなぁ。

普通って難しい。普通になりたいわけじゃないけど、カミレに嫌われたくないから、常識の範囲内に収まりたい。

自分でも分かっているんだ。オレのカミレに抱く想いは、常識の範囲を越えているって。

カミレは、どこまでそのことに気が付いているのかなぁ。

気づかないで欲しい。けど、そんなオレに気付いて、それでもいいと言って欲しい。

自分で自分が分からなくなる。ぐちゃぐちゃだ。

「レフィトは、可哀想……なのかもしれない」

静かな声に、息が詰まった。

恐れていた一言だ。

ぐちゃりと何かがへしゃげるような、それでいて、期待しすぎていた自分を馬鹿だと思うような、呆れと、失望、抱えきれないほどの後悔が胸に広がっていく。

「そっかぁ。変なこと聞いて、ごめ──」

「待って。話はまだ終わってないから」

もう聞きたくなんかない。

それなのに、カミレはまだ話を続けようとする。

オレを突き落とそうとしているわけじゃない。カミレを試したから、こんなことになった。

自業自得だ。

勝手に期待して、勝手に失望したんだ。

騎士団長の子息でも、侯爵家の長男としてでもなく、オレを見てくれただけで、十分だったはずなのに。

好きだと言ってくれて、幸せなのに。

それ以上を望んだ。欲張った。そのことが、間違いだったんだ。

「可哀想なのかもしれないっていうのは、客観的に考えた話だから」

「…………えっ?」

「大して知らない人から同じ話を聞いたら、そう思うかもなぁって思ったんだよね」

どういうこと?

他の人の話なら、可哀想だけど、オレだけ可哀想じゃないってこと? それはそれで、複雑なんだけど……。

「レフィトの話を聞いてね、私が思ったのは、可哀想じゃないんだ。もっと早くに出会って、そばにいたかった……なんだよね」

な……に、それ?

「可哀想とは、思えなかった。ただ、その時にレフィトのそばに誰かがいてくれたら、支えたいと願ってくれている人がいたなら、いいな……とは思うんだ」

そう言ったカミレの瞳は、涙の膜が貼って、キラキラとしている。

「きれいごとなのは、分かってるんだけどね」

瞬きひとつでこぼれそうな、カミレの想いに唇を落とす。

カミレの心は、いつだって綺麗だ。

オレのぐちゃぐちゃな気持ちなんて、簡単に引き上げてくれる。

「きれいごとなんかじゃないよぉ。カミレの言葉は、いつもキラキラだから」

カミレといると、オレまでキレイな存在になれるんじゃないかって、錯覚するんだ。

ありえないのにね?

何度も、何度も、カミレの顔に唇を落とす。

愛おしくて、可愛くて、好きで、好きで、好きで……。

気持ちが溢れて、止まらない。

あぁ、早くオレだけのカミレにならないかなぁ……。

結婚さえすれば、ずっとそばにいられるのに。

でも、その前にカミレの周りをキレイにお片付けしないとねぇ。

その準備は、着々と進んでいる。

「レフィト…………」

弱々しい声に、カミレを見れば、すっかり茹で上がったかのように赤い。

「真っ赤だねぇ」

そう言いながら、唇のギリギリ触れないところに口付ける。

ここなら、セーフだよね?

ファーストキスはロマンチックにするという約束は、もちろん守るよ。

「早く、カミレとキスしたいなぁ。楽しみだねぇ」

「────っ!!??」

また赤くなった。可愛いなぁ。

頬が緩むのを隠すことなく、真っ赤なカミレを眺める。

冷静になってみると、カミレが簡単にオレを裏切るわけないのになぁ……と思えるのだから、不思議だ。

「カミレさぁ、オレに自分の好きなところないかって聞いたでしょぉ?」

あの時、カミレを好きになったところだけが、誇れるところだと言った。だけど──。

「オレ、カミレを守れるくらい強くなってた自分のことは、嫌いじゃないよぉ」

うん。頑張ってきた自分をほんのちょっとは認めてもいいんじゃないかって思えるよ。

それも、カミレと出会えたからだ。

カミレと出会えたから、オレの人生は変われた。

もう、前のようには戻らないし、戻れない。

そのためには、手段を選ぶつもりはない。

これからが、楽しみだなぁ。まさか、オレとネイエ嬢が手を組むとは思ってないだろうし。

いつまでも、自分たちが優勢だと思っちゃ駄目だよねぇ。

「レフィト、悪い顔してるよ?」

「そんなことないよぉ」

まだ赤さの残る可愛い顔で、オレを見る空色の瞳。

その瞳に悲しみは似合わない。

まだ城勤めを諦めてないみたいだし、念のため、学園外の掃除も着々と進めないとだねぇ。

手駒は揃いつつある。卒業までに決着をつけないとだねぇ。