軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

悪役令嬢にざまぁされないように、協力した方がいいですか?③

馬車は建物内に入り、その中で馬車から降りた。

なるほど、建物の一階部分で乗り降りをすれば、外部から見えないってことかぁ。

降りた場所からすぐに階段もあるし、他の人に可能な限り会わなくて済むようになってるってわけね。

……あれ? ドレスコードの意味ってあるの?

「レフィト、こんなに誰にも会わないなら、いつもの服装でも大丈夫なんじゃない?」

「んー。ここはねぇ、ドレスコードを守れるような人しか利用できないんだよねぇ」

「お金持ち専用ってこと?」

「そうなるかなぁ」

執事のような服を着たおじ様に案内してもらいつつ、ひそひそと会話をしていれば、階段を上がってすぐに扉があった。

「こちらになります」

それだけ言うと、執事のおじ様は去ってしまった。

「なんか、必要最低限だね」

「そういう店だからねぇ」

あぁ、あれこれ詮索しない。関わりは最低限。

それが売りなのかぁ。

階段を上がってすぐに部屋なのだから、他の部屋もそうなのだろう。秘匿性は高いけど、何だか悪いことに利用されそうな場所だ。

「開けるよぉ」

そう言いながら、レフィトが扉を開ければ、既にお相手は待っていた。

「お越しいただき、感謝します。カミレさん、ついでにレフィト様も」

席を立ち、微笑みながらネイエ様は言った。

おっとりと優雅なのに、レフィトの扱いがぞんざいなのが気になる。

「ついでって、何かなぁ? オレも来るって分かってたよねぇ?」

「えぇ、もちろんよ。でも、執着のし過ぎは見るに堪えないわよ?」

「ネイエ嬢のそういうところ、直した方がいいと思うよぉ? 不快だからさぁ」

「あら、お褒めにあずかり光栄だわ」

ふふふ、とネイエ様は笑っている。

レフィトも顔に笑みを乗せている。

怖いから、普通に止めて欲しい。この争い、永久に続きそうなんだけど……。

「あの! どういったご用件でしょうか?」

思い切って言えば、ネイエ様から微笑まれた。

同性なのにドキリとしてしまう。

「立ち話もなんですから、まずは、おかけになって?」

「あ、はい……」

言われるがままに座ろうとすれば、レフィトが椅子を引いてくれる。

「ありがとう」

「どういたしましてぇ」

そう言いながら、レフィトは自分の椅子を引くと、私の近くへと寄せた。

レフィトの座るはずだったスペースがポカリと空いて、もう一つ椅子が入りそうだ。

「近くない?」

「いつも通りだよぉ」

「いや、そうなんだけど……」

人前でやることではないと思うんだよね。

ほら、ネイエ様がすごい冷たい視線を……レフィトにだけ向けてないか?

ん? ここも犬猿の仲なの? ログロスだけじゃなく?

「ずいぶんと、人が変わったわね」

「そう? でも、ネイエ嬢には関係ないよねぇ」

「あら、昔からの知り合いに言う言葉かしら」

「たかが知り合いだからねぇ」

「そのたかが知り合いからの忠告よ。変装は完璧だけど、その異様なレフィト様の執着で、あなたが誰だかわかってしまうわよ?」

広げた扇子で口元を隠し、ネイエ様はクスクスと笑う。

正体がバレた原因が私ではなく、レフィトだと言われたことに驚きつつ、そーっとレフィトを盗み見れば、笑顔が怖い。

表情は笑っているのに、目がまったく笑っていないのだ。

「忠告は有り難く受け取っておくよぉ」

「そうしてちょうだい。これから長い付き合いになるでしょうから。ね、カミレさん?」

「んぇっ!! は、はい……」

な、長い付き合いになるのか?

サーカスの時に共闘した時は良い人だと思ったけど、クセ強すぎない?

それに、アザレアたちに私がいるからマリアンが成績で悩んでいると言ったことも気になる。

信頼……してもいいのだろうか。

「カミレさん」

「はい!」

しまった! 思ったよりも大きな声が出てしまった。

恥ずかしい……。

「先日のサーカスで助けてくださり、ありがとうございました」

「い、いえ……」

「おかげで、ジャスミンちゃんが犯人にされなく済みました」

ネイエ様は深々と頭を下げた。

「やめてください! 私一人では、どうにもならなかったですから。ネイエ様とレフィトがいてくれたからです」

「いいえ。あなたが助けようとしてくれたからです」

ハッキリとそう告げられると、何だか照れくさい。

「何か、お礼をさせてください」

「いえ。お礼が欲しくて、首をつっこんだわけじゃありませんから」

「しかし……」

ネイエ様はなかなか引き下がってくれず、しばらく押し問答をしていれば、レフィトが呆れたように口を開いた。

「カミレがいらないって言ってるんだから、引き下がりなよぉ。お礼がしたいとか言いながら困らせるの、やめてくんない?」

止めてくれるのは、すごくありがたい。ありがたいけど、逆に断りにくくなってしまった。

とりあえずレフィトにお礼を言いつつ、妥協案を考える。

「えっと……、ここで頼んだものをおごってもらってもいいですか?」

「そんなことですか?」

「そんなことじゃないですよ。こういうお店は絶対に高いですから」

お水をもらって、注文しない予定だったからね。

レフィトに阻止されてた気もするけど。

「ネイエ様は、このお店に来たことは?」

「何度かありますよ」

「もし良かったら、おすすめを教えてくれませんか?」

メニュー表を開き、いくつかのオススメをネイエ様は教えてくれた。

正直、どれも美味しそうだ。

せっかくだから、お茶はリラックス効果のあるものにしよう。

「よし、決めた! ローズティーにします」

「一緒に甘味もどうですか?」

「じゃぁ、お言葉に甘えて……」

図々しいかな……と思いつつ、甘いものの誘惑には勝てなかった。

ネイエ様、ごちそうさまです。