軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

悪役令嬢にざまぁされたくないので、準備を始めましょう③

マリアンは貴族の令嬢のトップで、元々取り巻きは婚約者である王子を含めて五人いた。

そこからレフィトが抜け、空いたところにパンセくんが入ったのだろうか。

「聞きたいことがあるんだけど……」

「ミレイヤ、私たちも入ろうか。話は、席に着いてから、ゆっくり聞くよ」

ミレイヤって誰? と一瞬だけ思ったが、すぐに自分が変装中だったことを思い出す。

優雅にエスコートされ、あっという間に席へとついた。

そして、まさかのボックス席に震えた。

「ねぇ、本当にサーカスなんだよね?」

「そうだよぉ」

私の知っているサーカスと、こっちのサーカスが違いすぎる。

貴族相手にサーカス? と思ったけど、こういうことか!! と妙に納得してしまった。

「それで、何が聞きたいのぉ? あ、大きな声を出さなければ、隣には聞こえないけど、変装はそのままね」

すっかり話し方と声が戻ったのに、見た目はそばかすのある青年のままなため、脳が誤作動を起こしている。

けれど、レフィトの言う通り、変装を取るわけにはいかない。ボックス席って、前方部は開けてるから、見ようと思えば、別の席から見えるんだよね。

「マリアン様の取り巻きたちと、婚約者について聞きたいんだ。教えてくれる?」

「いいよぉ」

楽しげな声色でレフィトは言う。

今まで、私はマリアンにばかり注意が向いて、他の人を見てこなかった。

彼等のことを、最初は攻略対象者という括りで見て、その後はマリアンの取り巻きと見た。

彼等の婚約者たちに関しては、存在は認識していた。だけど、意識はしてこなかった。ゲームでは、出てこなかったから。

彼女たちもひとりの人間で、人生があって、感情があるときちんと認識したのも最近だ。私も彼等のことを言えないくらい、最低なのだ。

「マリアン様の取り巻きと婚約者の関係性をまずは知りたい。あと、王子とマリアン様の関係性も……」

「んじゃ、まずは一番説明が簡単な王子から行こうかぁ」

「うん。お願いします」

王子の名前は、レオンハルト。

ここ、アルストロメリア王国の第一王子で、何事も起きなければ、レオンハルトが国を継ぐ。

ゲームでの性格は、ザ・王子様といったテンプレ感 溢(あふ) れるものだった。

ゲームと現実では、どう違うのだろうか。

「王子とマリアン嬢の関係性は、悪くはないよぉ。仲は良いと思うよ。ただ、完全にマリアン嬢が主導権を握っている感じかなぁ。王子本人は、そのことに気付いてないけどねぇ」

「手のひらの上で転がされている感じ?」

「そうそう。王子って、マリアン嬢が喜ぶことなら、自分の気持ちも他者の気持ちも犠牲にして、何でも叶えようとするからねぇ。それが自分だけで済むなら、まだマシだったんだけどねぇ……」

レフィトが言わなかった言葉の先。それは国に関わってくることかもしれない。

想像して、顔が引きつった。

以前、レフィトがいざとなったら隣国で暮らそうと言っていた意味が分かってしまった。

このままだと、レオンハルト王子が王位をすんなりと継承できるとは思えない。王位継承争いが起こるかもしれない。

仮にすんなり継承できたとしても、国のトップが誰かの手のひらの上で転がされている国なんて、恐ろしくて住みたくない。その相手がマリアンなら、なおのこと。

「この国、大丈夫なの?」

「さぁ。どうだろうねぇ。いざとなったら、捨てないととは思っているよぉ。カミレよりも優先して守るものは、この世に存在しないからさぁ」

にこりと微笑んだ仮面の奥の瞳に、のみ込まれてしまいそうだ。

「ま、実際はそこまでにはならないんじゃないかなぁ。国王も馬鹿じゃないしね。案外、よく見てると思うよぉ。あのおっさん」

「──!!??」

国王様相手に、おっさん!!??

正気とは思えない。万が一にでも誰かに聞かれたら、不敬罪だよ?

「オレ、王子の監視係でもあるからさぁ」

「…………はい?」

「学園での王子のことを、国王に報告するんだよぉ。オレの他にも、何人かいると思うよ。誰かは知らされてないし、余計な 詮索(せんさく) をすると、下手すれば命に関わるからしないけどねぇ」

「……命に関わるの?」

私、この話を聞いちゃったけど、大丈夫だよね?

「カミレには、オレに関する隠し事はしないって、国王に宣言してあるから、大丈夫だよぉ。ちゃんと了承は得ているしね」

「知らなくても良いことは、内緒にしてもらえると助かります」

「何で敬語なのぉ?」

楽しそうにレフィトは笑うけど、私はそれどころではない。

そのうち国家機密まで知ってしまいそうで怖い。

世の中、知らない方がいいことなんて、たくさんあるんだから。

「王子に関しては、そのくらいかなぁ。マリアン嬢さえ関わらなければ、まともだよぉ」

そこが関わらないとか、あり得ないだろう。

つまり、まともじゃないってことだ。

「次は、誰にしようかぁ。 銀縁眼鏡(・・・・) のデフュームと、婚約者のネイエ嬢がいいかなぁ」

わざわざ銀縁眼鏡を強調し、レフィトは笑った。

「カミレは、デフュームのことお気に入りだもんねぇ?」

笑っているのに、不穏な空気が流れてくる。

あれ? この話って解決したんじゃなかったの?