軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

許すとか許さないとか その後①

話し合いがあった次の週の月曜日。今日、私は十日ほど休んでいた学園に復学する。

ログロスは謹慎処分のため、残り少ない今学期を学園に来ることはない。

「ねぇ、もう包帯はいらないんだけど……」

「だーめ。まだ必要だからぁ」

馬車を降りるタイミングで、私の鞄をレフィトが持つ。

「荷物持つのも禁止だよぉ」

「大丈夫だよ。それくらい持て……」

私を見る琥珀色の瞳が不安げに揺れているのに気付き、ぐっと言葉をのみ込む。

「ありがとう。今日だけお願いしようかな」

「──うん! あと絶対に走ったりしちゃ駄目だよぉ」

「分かった。気をつけるね」

怪我は、もうほとんど治っている。

レフィトもそのことを知っているはずだけど、まだすごく心配をしてくれている。

心配のしすぎだと思うけど、逆の立ち場なら同じことをしたかもなぁ。

なんて思っていれば、レフィトが校舎の方に視線を移す。つられて私同じ方向を見る。

すると、猛スピードで走ってくるピンク髪が……。

「へっ!?」

何事?

勢いを落とすことなく、そのピンク髪は私の前まで来ると──。

「────カミレちゃんっっっ!!」

ギュッと私に抱きついた。

「アザレアちゃん。おはよう」

抱きしめ返しつつ笑いかければ、アザレアの目にはみるみる涙がたまっていく。

「カミレちゃん! お怪我はどうですの!? 私、とっっても心配で……って! あぁぁぁ!! 痛い!! 痛々しいですわ!!」

私の頭の包帯を見ながら、アザレアは眉間にシワを寄せ、心配だと隠すことなく言う。

「大丈夫だよ。心配かけて、ごめんね」

そう話しつつ、アザレアの頭を撫でようとした。ところが──。

「怪我人相手に騒ぐなよ」

「離れようねぇ」

髪に触れる前に、ゼンダ様はアザレアちゃんの腕を引いて私から離し、私は私でレフィトに後ろから抱きしめられる。

「ゼンダ様っ!」

「レア、約束と違うぞ」

「だって、カミレちゃんの姿を見たらつい……」

「ついじゃねーだろ」

注意をされ、しゅんとしているアザレアと、仕方ないなぁという顔のゼンダ様。

「……ごめんなさい」

「謝る相手は俺じゃないだろ。カミレ嬢、いきなりレアが悪かった。怪我の具合はどうだ?」

「おかげさまで、だいぶ良くなりました。包帯も念のためと言った感じです」

私の言葉に、アザレアとゼンダ様はホッとした顔をする。

「レア、良かったな」

アザレアはコクコクと何度も頷き、小さく鼻をすする。

「良かった……。本当に良かったですわ。お見舞いにも行きたかったのですが、いろいろと大変だとネイエ様とゼンダ様からうかがって……」

「ありがとう、アザレアちゃん」

安心してほしくて笑いかければ、アザレアの目には再び涙が溜まっていき、私に抱きつこうとした。

けれど──。

「カミレちゃ────ぐぇっ」

その瞬間、ゼンダ様に首根っこをつかまれた。

「何するんですの!?」

「怪我人に勢いよく抱きつこうとするな、馬鹿」

「ば、馬鹿って! もっと言い方ってものがあると思いますわよ!?」

「じゃあ、相手が怪我人だって忘れるな、馬鹿」

「キーーーーっ! 腹が立ちますわっ!!」

ずいぶんとゼンダ様が保護者化してきたな……と思ったけれど、ケンカップルは健在らしい。

二人を見てホッコリしていれば、私を後ろから抱きしめているレフィトの腕の力がほんの少し強まった。

「ねぇ、カミレ。二人のこと置いてっちゃおうよぉ」

甘えたように言いながら、顔をのぞき込まれる。

「ちょっと待ってよう。……って、あれ?」

「どうしたのぉ?」

「この状況でどうやって抱きつくつもりだったんだろう?」

レフィトごと抱きしめるつもりだったのかな?

そうなったら私は、サンドイッチの具みたいに両側から挟まれれるのだろうか。

レフィト、絶対に不機嫌になるよね。

でも、それはそれで幸せな気もする……。

「ふふっ」

想像して、笑いがこぼれた。

そんな私を見て、レフィトは琥珀色の瞳を優しく細める。

「何笑ってるのぉ?」

「んー、楽しいなぁって思って」

「そっかぁ。……カミレと二人きりの方がいいけど、こういうのも悪くないかもねぇ」

へにゃりと笑う顔は、いつもより少し幼く見える。

やっぱり、今みたいなレフィトのそばの方が安心するな。

王城では頼もしかったけど、へにゃりと笑うレフィトが一番レフィトらしい。

「アザレアちゃん、ゼンダ様。そろそろチャイムが鳴るので、行きましょう」

「まぁ! もうそんな時間!? 急がないとですわね」

四人で教室まで向かって歩く。

すると、私を避けるように廊下にいた生徒たちがよけた。

ひそひそと話す声がする。

「マリアン様を怒らせたって本当かしら」

「私は、ログロス様に怪我をさせられたって聞いたわよ」

「でもそれって、わざと本人が転んでログロス様に責任を押し付けたって……」

「じゃあ、ログロス様が謹慎になったのはハオトレ嬢のせいってことか」

「え!? 違う違う。ログロス様がハオトレ嬢を突き飛ばした勢いで大怪我したんだって。頭からすごい血が出てたんだぞ」

不躾な視線を浴びせられるけれど、間違った噂の中に正しい情報も入っている。

一方的に悪女呼ばわりされないことを意外に思っていれば、隣から舌打ちが聞こえた。

「ジロジロひそひそと……。邪魔くさいなぁ。あいつ等の目、潰してきてもいい?」

「ぜ、絶対に駄目だからね!」

「えー。でも、カミレが減る」

「減りません!!」

唇を尖らせ、レフィトは不満げな顔をする。

「今更、何を言われたって気にならないから平気だよ。でも、怒ってくれてありがとう」