軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

もう二度と傷つけさせたりしない③〜レフィトside〜

それからオレは国王への上申書だけではなく、ラルトルス辺境伯家に抗議書を送った。

ついでに、ログロスの婚約者であるカナ嬢のアーモルド伯爵家にも今回の騒動に関する手紙を出してある。

言い逃れできないよう、根回しもした。

さぁ、自らの罪を償ってもらおうか。

「……ねぇ、レフィト。まさか、話し合いを王城でするなんてことはないよね?」

「んー、そのまさかだよぉ」

馬車が向かっている方向で察したのだろう。

カミレが顔色を悪くして言う。

「な、何で!?」

「何でって、ログロスの責任は王子の責任だからだよぉ」

「そりゃ、レオンハルト王子にも原因がないとは言わないけど、王城って……」

言葉を詰まらせ、眉を下げながら窓の外を見たカミレだが、すぐにオレの方を見る。

「話し合いの第三者って、誰!?」

「国王かなぁ」

そう答えた瞬間、カミレは頭を抱えた。

「え、ちょっと待って。国王様って、あの国王様だよね。国王ってあだ名の人物がいるとか……いや、そんな不敬ありえないし……」

しばらくぶつぶつと独り言を呟いたあと、恨ましげな視線を向けられる。

「聞いてないんだけど」

「言ってないからねぇ。大丈夫だよ。今日はオレに任せてぇ。バッチリ準備してあるからぁ」

へらりと笑いかければ、カミレの顔色は更に悪くなる。

「まさか、包帯を外させないのって」

「怪我が治りきってないからだよぉ」

「そ、そうだよね!」

「でも、包帯があった方が追い詰められるよねぇ」

今日は徹底的に追い詰める。

逃げ道なんて残さない。

「……レフィト、すごく怒ってくれてるんだね」

「当たり前でしょ」

「やりすぎは駄目だからね」

「分かってるよぉ」

オレにとって、必要な分だけしかやらないよ。

安心させるように笑いかければ、疑いの目を向けられた。

***

案内されたのは、謁見の間だった。

つまり、今回のことは国での公式記録に残るということ。

重厚な扉が音を立てて開けば、高い天井の下、玉座だけが三段高く設けられている。そこには、国王と王妃が座っていて、 レオンハルト(王子) やマリアン嬢、ログロス、ラルトルス辺境伯等は既に揃っている。

一斉に向けられる視線の中、カミレとともに足を踏み出せば、敷かれた赤のカーペットがカミレのヒールの音を吸い込んだ。

明らかに動きが硬くなっているカミレをエスコートし、部屋の左右に置かれている椅子の方へと向かう。オレ等の隣の席には親父が立っていて、その横に並ぶ。

「お待たせしたようで、申し訳ございません」

国王に向かい挨拶すれば、手で制される。

「時間前だ。気にすることはない。さて、時間より少し早いが始めるとしよう。皆、席に着くがよい」

その声に、皆が揃って椅子へと腰をかける。

通常であれば、一人ずつ国王へと挨拶をしていくところだが、カミレの怪我を理由に省略してもらった。

国王自身も今回に関しては、挨拶を行うことへの重要性を感じていなかったようで、オレの要望はすんなりと通った。

「カミレ・ハオトレ子爵令嬢、怪我の具合はどうだ?」

国王の声が謁見の間に響く。

「は、はい! おかげさまで──」

「頭を三針縫いました。詳細につきましては、騎士団所属の医師であるハイレンに診断書をいただいてきています」

オレがそう言って紙面を取り出せば、従者がそれを受け取りにくる。

「うむ。発言と内容に誤りはないようだ」

「一週間経ちましたが、当然ながら完治はしておりません。カミレ自身は学園への登校を望んでおりますが、危険と判断し、現在は休んでいます」

じろりとログロスの方を見れば、視線を逸らされる。

さすがに罪悪感というものがあるらしい。

「ルドネス侯爵家から、私の婚約者であるカミレ・ハオトレ嬢への傷害の罪をログロス・ラルトルス辺境伯家に問います。また、レオンハルト第一王子はその場にいたにも関わらず、側近候補であるログロス・ラルトルス辺境伯息を御することができず、ましてや私の婚約者へ王子自身も攻撃的な態度を取られていたことに対し、玉座を引き継ぐ者としての器に疑問を呈させていただきます」

言い終えて王子の方に視線を向ければ、信じられないという顔をしている。

「──ま、待ってください。父上、誤解です。あれはカミレ嬢にも問題があります」

「順に申し開きは聞く。レオンハルトは黙っていなさい」

温度のない声で国王は言うと、王子は押し黙る。

国王はそんな王子に視線すら向けず、カミレの頭に巻かれている包帯を見る。

「怪我をして、大変だっただろう。座っているのがつらくなれば、いつでも言いなさい」

「お気遣いいただき恐縮です。ですが、私のことですので、最後まで参加させていただきます」

そう答えるカミレに、国王の瞳の中に好奇心が見て取れる。

国王は優秀な人物を欲しがる節がある。

会えばこうなることは予想していたけれど、カミレに目をつけられるのは困るんだよねぇ。

そもそも息子である王子が加害側なのだ。国王とて、その保護者なのだから例外ではない。

「無理はしないように。では、事実確認を行っていく」

「俺から説明させていただいても、よろしいですか?」

王子が名乗り出て、国王は頷いた。

意外なことに、事実を隠すことなく王子は話していく。

既にこの件は国王も調査してるだろうし、正しく話す方が得策だと気付いていたのか。

マリアン嬢さえ関わらなければ、相変わらず一番傷の浅い選択をするんだぁ。

「カミレ・ハオトレ子爵令嬢、今回のことは本当に申し訳なかった。ログロスにも言い聞かせて、今後このようなことは起きないようにする。どうか、怒りを鎮めてはもらえないだろうか」

あーぁ、自分が謝罪すれば許されると疑わないところも変わらないのかぁ。

その姿に落胆しながらも、別の感情が湧いてくる。

本当に残念であり、最高だよ。