軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

貸しのつもりが、何故こんなことになったのでしょうか?⑤

だけど、それを王族が口にするのってどうなの?

それに──。

「では、もしもの時はマリアン様もレオンハルト王子の盾になるのでしょうか?」

つまり、そういうことなのだ。

マリアンも王子と結婚すれば王族にはなる。けれど、守る優先度でいえば王子が上のはず。

「──っ!」

マリアンたちが息をのむ。

次の瞬間、デフュームの手が私へと伸び、レフィトに叩き落とされた。

「誰にそのような口を聞いているのですか!? マリアンは国の宝です。誰よりも守るべき存在。それは、国民の総意でしょう!」

鋭い声を出すデフュームをちらりと見たあと、普段なら真っ先に動くログロスに視線を向ければ、困惑した顔をしている。

「……何で怒らせるようなことをいうんだ?」

「え?」

戸惑いを隠すことなく言われ、胸がざらりとする。

「だって、わざとだろ。俺たちが怒ることをわざと言ってる」

「そう……ですね。私もあなた方と同じだからです。自分の大切な人が軽んじられたら、腹が立つから。だから、さっきみたいな言い方になりました」

ログロスは眉間にギュッとシワを寄せ、私を睨む。

「何でだよ! カミレは、俺の勉強をみてくれたじゃないか! どれだけ時間がかかっても根気よく教えてくれたのに……。カミレだけだったんだよ! 俺が馬鹿なのを、馬鹿にしなかったやつ!! なのに──」

「それは、私とレフィトに敵意を向けられてなかったからです」

視線を逸らすことなく伝える。

時には、敵意に敵意を返す。

私だけのことで治まらないのであれば、なおのこと。

「そんなの、カミレがマリアンの良さを知らないからだ。今からでも、こっちに来いよ。マリアンなら受け入れてくれる」

「何言ってるのかなぁ?」

私が答える前に、レフィトが口を開く。

その腕を引っ張って止めるけれど、微笑まれるだけ。

「カミレとオレに、お前たちは必要ないんだよぉ。まして、今まで敵意を向けてきた相手の下に入るなんて、するわけないよねぇ?」

いつもと変わらない間延びした口調なのに、レフィトの 纏(まと) う空気の冷たさが増した。

マリアンたちの後ろから、こちらの様子を見ている生徒たちの顔色が悪い。

「レフィト、落ち着いて……」

「大丈夫、落ち着いてるよぉ。落ち着いてるから、この程度なんだよ」

「そうかもだけど、ここ教室だから」

いつもなら、しぶしぶながらもレフィトは引いてくれる。

けれど、今日は小さく笑うのみで、纏う空気は変わらない。

「助けもせず、ただ見てるだけの人なんて気にする必要ある?」

「あるよ」

王族相手に歯向かっている私の味方なんて、しては駄目なのだ。

こっちに来ようとするアザレアちゃんを必死に押さえているゼンダ様も、静観しているネイエ様も正しい。

私も、二人がこっちに来ることを望んでないもの。

「ねぇ、レフィト。入学したばかりの時は、誰も助けてくれないどころか、私が悪いという空気だったのに、今は違うの。それって小さなことかもしれないけど、大きな変化なんだよ」

確実に変わってきている。

味方とまではいかなくても、敵意ばかりではない。それは、少し前までだったら考えられなかったこと。

「ログロス様、私はそちらには行きません。私もですが、マリアン様も望んでいませんよ。そうですよね、マリアン様?」

「──っ! そんなことないわ!!」

首を横に振りながら、悲しげにマリアンは言う。

「では、私がマリアン様のそばに行ったとして、レフィトやログロス様と親しくするのはいいんですか?」

「当たり前よ。みんなが仲良くするのは、素晴らしいことだわ」

「そうですか。じゃあ、そばに行かなくても、このままレフィトやアザレアちゃん、ネイエ様と親しくしててもいいですよね?」

そう言い切れば、マリアンは 訝(いぶか) しげな顔をする。

「みんなが仲良くするのは素晴らしいのであれば、マリアン様の元でなくても、親しくして問題ないですもんね」

にっこり微笑みながら伝える。

まさか、自分が中心じゃなきゃ駄目だなんて、女神のようにお優しいマリアン様が皆の前で言えるはずない。

「……それって、私を仲間外れにするということかしら?」

「そもそも仲間じゃないのに、仲間外れはできませ──」

「もう黙れっ!」

──ゴッ!

「カミレっっ!!」

レフィトの焦った声がする。

いきなりログロスに押され、受け身も取れないまま転んだ私は、ぶつけた頭を触る。

そうすれば、手にはぬるりとした感触があり、その手を見れば赤に染まっている。

あぁ、机の角にぶつけたのか。運が悪いな……。

「カミレちゃん、動かないで! 誰か、医務室に行って先生を呼んできて!!」

ネイエ様とアザレアちゃんが飛んできてくれる。

頭がズキズキと痛い。けれど、ここで黙っていては大ごとになる。

「……大丈夫です。頭は血が出やすいだけですから」

そう言う私の頭を、レフィトはハンカチで押さえてくれる。

「ありがとう」

レフィトを見れば、ぼろぼろと泣いていた。

「大丈夫だよ」

たぶん、縫うことになるだろうけど……。

「大丈夫じゃない。すぐに病院に行こう」

「うん。でも、その前に──」

マリアンたちを見る。

「大変だわ。お医者様、私の方で手配するわね」

「学園にも話しておくよ」

マリアンと王子は心配そうな表情を浮かべて言う。

「けっこうです。学園の方への説明はネイエ様にお願いしますので。医者もいつもかかっているところに行きます」

「でも……。そうね、慣れたところが安心よね。心配だから、どちらのお医者様に診てもらうのか教えてもらえるかしら?」

「お気遣いなく。レオンハルト王子、マリアン様。あなたたちの仲間であるログロス様の手により、私は怪我をしました。後日、第三者を入れた話し合いを望みます」

有耶無耶(うやむや) になんかさせない。

第三者については、レフィトとネイエ様に相談しよう。