軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

それぞれの恋③

「ねぇ、カミレ。心配なのは分かるけど、お願いだからオレの方も見てよ」

その言葉にハッとしてレフィトを見上げる。

「オレ、頑張ったよ?」

「うん、ありがとう」

何があってアグリオとラムファ様が決別したのかも、それがどんな意味を持つのかも、私には分からない。

それでも、レフィトが誰かのためにと動いたことが嬉しい。

「頑張ったね」

バルコニーへと着き、ふたりきりになったタイミングで柔らかなクセのある黒髪を撫でれば、琥珀色の瞳が嬉しそうに細まっていく。

「大丈夫? 寒くない?」

そう言いながら、レフィトは自身の上着を脱いで私の肩へとかけてくれる。

「これじゃ、レフィトが寒いでしょ」

上着を返そうとするけれど、ふわりと微笑まれ、ギュッと抱きしめられる。

「くっついていたら、あったかいから大丈夫だよぉ」

「うん、あったかいね」

私もレフィトの背中に腕を回す。

そうすれば、レフィトの腕の力がほんの少し強まった。

「カミレ、好きだよ」

「私もレフィトが好き。大好きだよ」

少し震えていたレフィトの声に、私も抱きしめている腕の力を強める。

「……何かあったの?」

「んーん。ただ、自分の気持ちを素直に伝えられて、返してもらえるのって、幸せだなぁって改めて思っただけだよぉ」

「そっか……。そうだよね、当たり前じゃないもんね」

レフィトの中で、アグリオとラムファ様を見て何か思うことがあったのかもしれない。

「カミレ、ずーっと一緒にいようねぇ」

「うん、一緒にいよう」

一緒にいてくれる? でじゃなくて、いようと言ってくれたことが嬉しくて、抱きしめられている腕の中で、わずかな隙間さえもなくすようにレフィトへとくっつく。

そうすれば、幸せそうに笑うレフィトの声が聞こえる。

「冷えちゃうし、戻ろうかぁ」

「え? 踊らなくていいの?」

「カミレが風邪をひいたら大変だからねぇ」

レフィトの体は離れ、中に入ろうと促してくれる。

だけど、私は何だかまだレフィトとふたりでいたくて、離れてしまった体に抱きついた。

「心配してくれて、ありがとう。でも、レフィトと踊りたい。……わがまま聞いてくれる?」

「わがままなわけないよぉ。そう言ってくれて、嬉しい……」

そう言って、レフィトはへにゃりと笑う。

私の大好きな笑顔に、すごくドキドキする。

「オレと踊ってくれますか?」

一歩離れ、手を差し伸べてくれる。

レフィトがあまりにもかっこよくて、夢なんじゃないかとさえ思ってしまう。

「はい、喜んで……」

けれど、触れた指先から伝わるレフィトの体温が、現実なのだと教えてくれる。

室内から聞こえる少し小さなオーケストラの演奏に合わせて、レフィトと踊る。

「何年経っても今日のことを思い出すんだろうなぁ」

「うん、いろいろあったね。建国祭に向けて、みんなが協力してくれたことも、フィラフ君に会ったことも、アザレアちゃんとけんかしちゃったことも、アザレアちゃんとネイエ様とずっと一緒にいようって誓い合ったことも、他にもたくさん」

何より、大好きな人にエスコートしてもらって、社交界デビューをして、こうして踊れている。

自分が悪役令嬢にざまぁされるヒロインだと気が付いた時の私が知ったら、驚くんだろうな……。

「ねぇ、 そのアザレア嬢とネイエ嬢と誓い合ったって何?」

「バルコニーでの迷信らしいよ。知らない?」

頷いたレフィトに、バルコニーで将来を誓い合うとずっと一緒にいられるという迷信について説明をした。

さっき誓い合ったし、てっきりレフィトは知っているかと思っていたけれど、そうではないようで、唇を尖らせ、少し拗ねたような表情をする。

「それ、オレがカミレとやりたかった……」

「さっきやったよ?」

「そうだけど、一番にやりたかったなぁって」

他の人とやらないで……ではなく、一番かぁ。

今日は、レフィトが変わったのだとすごく実感できる。

レフィトの世界、どんどん広がっていくね。

「迷信に頼らなくたって、レフィトと私はずっと一緒にいるでしょ? だから、いつか離れなくてはいけなくなるかもしれないアザレアちゃんとネイエ様と誓いたかったの」

「そっかぁ……。一緒にいるって願い、叶うといいねぇ」

優しく笑うレフィトに、頷く。

「でも、カミレの一番近くはオレだからねぇ。そこは譲らないよ」

「当たり前でしょ。私だって、レフィトの隣は私じゃないと嫌だよ」

変わったところもあれば、変わらないところもある。

ずっと同じではいられないし、人との関係は形を変えていく。

それでも大好きだから、ずっと一緒にいたいと永遠を願うのだ。

曲が終わり、レフィトを見上げれば、琥珀色の瞳が熱を持っている。

目を閉じれば、小さくうなる声がしたあとに、頭に優しく口づけを落としていく。

「……え?」

驚いて目を開ければ、熱のこもった瞳のまま、レフィトは微笑んだ。

「今、唇にキスしたら、誰にもカミレのことを見せたくなくなっちゃうから……」

言葉の真意が分からなくて、首を傾げてしまう。

「カミレを独り占めしたいっていう気持ちを我慢できなくなりそうなんだぁ。オレだけのカミレでいてほしいけど、みんなと笑っているカミレも好きだから。キスは、もう誰にも会わなくていい時にさせて?」

その言葉に、顔に熱が集まっていく。

「もう少ししたら、戻ろっかぁ」

顔を赤くしたまま小さく頷けば、レフィトは優しく微笑んだのだった。

~第三章END~