軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

価値③

あ、アザレアとゼンダ様……。

見つけたけれど、きっと今、ふたりは将来を誓い合っている真っ最中だ。

出てくるまで待ってようかな。

とにかく、邪魔しないようにしなくちゃ……。

そう思って、バルコニーに背を向けたのだが、その直後、勢いよくバルコニーへと続いている扉が開かれた。

「カミレちゃん!」

私の腕を掴み、アザレアはバルコニーへと引っ張っていく。

「ゼンダ様は、中で待っていてくださいまし!」

まさかのアザレアとバルコニーで二人きりの状況に、思わず首を傾げてしまう。

「ここでゼンダ様と将来を誓い合っていたんじゃ……」

「違いますわ! ここにいれば、カミレちゃんとレフィト様が一緒にいらっしゃると思って待っておりましたの!」

「え?」

「だって、カミレちゃんはともかく、レフィト様はこういうのお好きでしょう?」

ん? そうなのかな?

そんなのただの迷信だって言いそうな気もするけど……。

あ、でも「せっかくだから将来を誓い合おうよぉ」とか言って、やるかもしれない。

ということは、好き……なのかな?

「……そうかも?」

「ですわよね! 私、絶対にそうだと思って、確実にカミレちゃんに会えるように先回りしてましたのよ! って、あら? レフィト様はいらっしゃいませんの?」

「うん、レフィトは今ちょっと別行動をしてるんだ」

「そうなんですのね。では、今はどなたと一緒に?」

「ネイエ様とカナ様、リカルド王子、それからカガチさんだよ」

そう答えた瞬間、アザレアは不思議そうな顔をした。

「何だか、変わった顔ぶれですわね」

うん、私もそう思う。

って、そうじゃなかった。アザレアに謝らないと……。

「あのね、さっきのことだけどね──」

「申し訳ありませんでしたわ!」

「えっ⁉」

「さっきも言ったけれど、あれは私のわがままで、まだ戻れると言ってくれたカミレちゃんの優しさを踏みにじったんですの」

眉を下げ、アザレアは後悔を滲ませた。

アザレアは何も悪くないのに……。

「違うよ。私ね、アザレアちゃんが『そばにいてほしい』って言葉を望んでいるって分かってたの。それでも、選んでもらおうとした。不安だったの、私のせいでアザレアちゃんがこれから先、嫌な気持ちになるのが。私がアザレアちゃんの未来を選択してしまうかもって思ったら、怖かったの」

私は臆病だから、自分を守ろうとした。

選択を委ね、相手の意見を尊重することは、私にとっては楽な道だから。

「そう……ですの。私はカミレちゃんが大好きだから、選ばれたかった。カミレちゃんは、私のことを大切に思ってくれているから、選ぶのが怖かったんですのね。……それって何だか、両想いのすれ違い展開みたいですわ」

そう言って微笑むと、アザレアはギュッと私を抱きしめる。

「私、カミレちゃんが大好きですの。ずっとずーっと一緒にいたいですわ」

「ありがとう。私も、アザレアちゃんが大好きだよ。私だって、ずっとそばにいてほしいよ」

マリアンのところに行かないでほしい。

明るく笑う、素直で優しいアザレアが好きなのだ。

「私たち、相思相愛ですわね」

「うん、そうだね」

私もアザレアも、不安だったんだね。

良かった。すれ違ったままにならなくて……。

体を離し、アザレアは目に涙をためて笑う。

その姿を見つつ、ふっとあることに気が付いた。

「もしかして今、私とアザレアちゃんで将来を誓い合ったことになるのかな?」

「まぁ! たしかにそうですわね。これで、カミレちゃんと幸せになれますわね。でも、レフィト様に嫉妬されてしまうかしら」

「…………そんなことないと思うよ」

「カミレちゃん、今の間はなんですの?」

いや、だってねぇ。このことを誰かから聞いたレフィトが、ものすごーく笑顔で闇落ちしそうな予感がするんだよね。

「そういうアザレアちゃんだって、ゼンダ様が嫉妬するかもよ?」

「なら、ゼンダ様ともここで将来を誓いますわ!」

「それってありなの?」

「何回までって言われてませんし、いいんじゃありませんの?」

そう言われると、そんな気もするけど……。

まぁ、そもそも迷信だし、一緒に幸せになるということを叶えるのは、自分たちだしね。

「婚約者とは、よほどのことがない限り一緒にいられますけど、お友だちはそうじゃありませんもの。嫁ぎ先によっては、なかなか会えなくなるのもよくあることですわ。だから、もし一人としか誓い合えないのだとしたら、そのお相手はゼンダ様ではありませんわね!」

きっぱりと言い切ったアザレアにちょっと意外だなと思う。

舞台のワンシーンとか、すれ違い展開とか言うくらいだから、恋愛もの大好きだと思ってたんだけど、それはそれってやつなのかな?

「あ! でも、ネイエ様とも将来を誓い合いたいですし、お相手が一人限定だと困りますわ!」

わたわたと慌てたように言うアザレアに、知らず知らずに口角が上がっていく。

「やっと、笑ってくださいましたわね」

「……へ?」

「ずーっと、深刻なお顔でしたわよ。私、カミレちゃんの笑ったお顔が大好きですの!」

「アザレアちゃん……」

アザレアの明るさは、私のことを支えてくれる。

私も、アザレアのようになれたらいいな……。

「私もアザレアちゃんの笑った顔が大好きだよ」

「ふふっ、私たちの愛は永遠ですわね!」

「ねぇ、ネイエ様とも将来を誓わない?」

「名案ですわ! ネイエ様はすぐそこにいらしゃるのかしら?」

「うん。いるはずだよ」

バルコニーから中に入ると、アザレアちゃんと一緒にネイエ様の手を掴む。

「ちょっとネイエ様をお借りしますね」

状況が読めていないネイエ様を間に挟み、バルコニーへと戻ると、アザレアちゃんと同時に口を開く。

「「ネイエ様、大好きです(わ)! ずっと一緒にいてください(まし)」」

ネイエ様はポカンとした表情をしたあと、すごーく嬉しそうに笑う。

「私もカミレちゃんとアザレアちゃんが大好きよ。ずっと仲良くしてね」

レフィトへのこと、時間が短そうだと言っていたこと、気になることはあるけれど、それでもずっと仲良くしていきたい。

どうか、ずっと一緒にいられますように。

そう願わずにはいられなかった。