軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

問題いろいろ〜レフィトside〜②

「ねぇ、カミレちゃんとレフィト様にお願いがあるのだけれど……」

「お断りかなぁ」

にこりと微笑むネイエ嬢に嫌な予感がして、瞬時に断る。

すると、ネイエ嬢は笑みを深めた。

「私の代わりにラムファの様子を見て来てほしいのよ」

「ネイエ嬢とカナ嬢の友人でしょぉ? オレたちには関係ないよねぇ」

「でも、アグリオ様とラムファのこと気になるでしょ? 打ち解けるチャンスよ?」

「うーん、カミレのそばにいる奴が増えると嫌だから、パスかな」

へらりと笑えば、ネイエ嬢は扇子を広げて口元を隠す。

「今なら、マリアン様の周りを崩せるのよ?」

「そんなにやりたいなら、自分でやればぁ?」

「……やれるものなら、やってるわよ」

そう呟いたネイエ嬢は、一瞬だけ泣きそうな顔をした。

あー、これは行かなきゃかぁ……。

ちらりとカミレを見れば、ものすごく心配そうな顔をしてネイエ嬢を見ている。

今の表情が演技だとしたら……。そう思ってしまうのは、オレの考えが捻じれているからだろうか。

「……レフィト、打ち解けるは置いといて、とりあえず様子を見に行かない?」

「アザレア嬢のことはいいの?」

オレの言葉に、カミレは視線をさ迷わせる。

「まずは様子を見に行って、そのあとすぐにアザレアちゃんのところに行くよ」

「……それ、関係が捻じれない?」

アザレア嬢は、カミレを求めた。

完璧な仲直りとまではいかなくても、和解の雰囲気がふたりの間にはある。その状態で、先に他の令嬢の様子を見に行ったら、アザレア嬢がどう思うかなんて答えは明白だ。

ネイエ嬢の策略にまんまと嵌められた気がして、舌打ちが出そうになるのをどうにかのみ込む。

「カミレは、アザレア嬢のところに行きなよ。オレが、アグリオとラムファ嬢のことを見てくるからさぁ」

「……え?」

「お人好しなのはカミレのいいところでもあるけど、優先順位を間違えたら駄目だよ。それと、その優しさに付け込んでくるような人にも気を付けないとねぇ」

ネイエ嬢に視線を定めて笑えば、何のことかしら? と言わんばかりの笑みを返される。

本当に狡猾で嫌な女だ。

だけど、そういう人物が必要なのも分かっている。善人だけでは、カミレを守れない。

そして、ネイエ嬢はカミレを害する気持ちが今のところはない。むしろ気に入っていて、何かあれば守ってくれるという点においては信頼をしている。

「ネイエ嬢、オレがそばを離れている間、当然カミレを守ってくれるんだよねぇ?」

「当たり前でしょう」

「もし守れなかったら、相応の報復をするからぁ」

「ちょっ、レフィト⁉ 何言ってるの?」

オレだけをアグリオとラムファ嬢のところへ行かせようとしているネイエ嬢の企みに気付いていないカミレは、オレを止めに入る。

けれど、オレを見上げると、心配そうな顔をした。

「レフィト、大丈夫?」

その言葉の意味が分からなくて首を傾げれば、カミレは右手でそっとオレの左頬を包んだ。

「痛いって、顔してるよ?」

「…………え?」

首を傾げれば、カミレは困ったように眉を下げて笑う。

「ねぇ、レフィト。もう少し自分の気持ちにも耳を傾けてあげて……。どんな顔してるか、自分でも分かってないでしょう?」

「何言って……」

「報復するって、本当は言いたくなかったんじゃないの?」

「そんなことないよ。カミレを守るためなら何でもする。これからもずっと……。カミレだけが大切だから」

心からそう思っている。なのに、何でだろう……心がざわざわする。

「うん。私の大切な人もレフィトだよ。でも、レフィトにはもう大切な人が他にもできたんじゃないの?」

「……そんなことない。オレには、カミレしか必要ない」

そう言って笑おうとしたけれど、顔が強張ってうまく笑えない。

「大丈夫だよ。変わることは、怖いことじゃないから……」

青空のような瞳を細めて、カミレは微笑む。

だけど、オレはこのままでいたいんだ。オレの世界はいつだってカミレとその他で、カミレ以外はいらない。

大切なものは一つで十分で、それさえあれば幸せに生きていける。

「お願い、オレの世界を壊さないで……」

ギュッとカミレに抱き着き、すがるような声が出た。

そんなオレの背中には、カミレの腕が回る。

「ごめん、急かしすぎたね……。大丈夫だよ。今のままのレフィトで」

「うん……」

変わりたくなんかない。

変わった先は、もしかしたら落とし穴のようにぽっかりと闇が待っているかもしれないし、変わったことで、カミレを失うことになるかもしれないじゃないか。

やっと手に入れたオレだけの宝物。カミレがいてくれれば、それでいいはずなんだ。

「カミレは、アグリオとラムファ嬢のこと気になる?」

「ううん。ネイエ様には申し訳ないけど、一緒にアザレアちゃんのところに行こう」

……嘘だ。オレのためにと、カミレに嘘をつかせてしまった。

それなのに、オレを優先してくれたことに、心が満たされていくのを感じる。

大丈夫だ。カミレはオレを選んでくれる。一番に置いておいてくれる。

オレの世界はふたりで完結していて、壊れることはない。

「オレ、アグリオとラムファ嬢のこと見てくるよぉ。嘘つかせてごめんね。オレのために、ありがとぉ」

オレを見上げているカミレは、さっきと変わらず眉を下げて困ったように笑う。

でも、その瞳の奥にオレへの心配が見えて、やっぱりオレはそのことに満たされてしまうんだ。