軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

家庭訪問

一村(いちのむら) 住人、オーガス。

彼はマルコス、ポーラの交代要員として、時々シャシャートの街のマルーラに移動している。

彼の得意料理は焼き鳥串。

炭火でじっくりと 炙(あぶ) り焼く技術と、改良に改良を重ねた二種類のタレが評判となり、彼がマルーラにいる時は焼き鳥串の日と一部では言われているらしい。

「二種類のタレ?」

「醤油ベースの甘タレと、塩タレです。

あと、自分で塩を振って食べたいお客さま用に数種類の塩を用意しています」

「なるほど。

なにか問題はあるか?」

「串が不足気味です。

今は俺が一村にいる時に作っているのですが、タレの研究もあるので……」

「ニュニュダフネやハーピー族に手伝ってもらうのは駄目なのか?」

「ニュニュダフネさんたちには手伝ってもらっていますが、カレー粉の調合のほうにも手を取られていまして。

ハーピーさんたちは……その、手先が不器用というかありませんから」

そうだった。

ハーピー族は手が翼だったな。

「ハーピーさんたちは足で作ることもできるのですが、さすがに食べ物関連ですので……」

「そうだな。

やめておこう」

衛生観念が根付いたようで嬉しい。

しかし、串不足か。

ああいった作業は、本来なら子供の仕事にするらしいが……

一村の子供はまだまだ小さいからな。

「そういえばラミア族の長が、ラミア族の子供向けに何か仕事はないかと言っていた。

彼女たちでよければ、そちらに紹介するが?」

「よろしくお願いします」

「うん。

他に問題は?」

「あとは……焼き鳥串の値段ですね」

「値段?」

「ええ、鶏肉の仕入れ価格からどうしても高価になってしまいまして……

それと、仕入れが一羽単位なので、どうしても部位による消費量に差ができ、それも値段に影響します」

今のところ串一本で、中銅貨五枚~二十枚と幅が広くなり過ぎているらしい。

特に串一本の値段差は、会計の時が大変だそうだ。

「なるほど。

じゃあ、串一本の値段を揃えよう」

「え?」

「部位によって串の長さを変えるんだ。

もちろん、焼き台に問題がない長さでな」

「あ、なるほど」

串作りの手間が増えるが、そこはラミア族の子供たちに頑張ってもらおう。

「さらに、串の間に別の物を挟んで調整する」

「串の間に?」

「今、一本の串に鶏肉はいくつ刺している?

八つ?

それを五つにして、間にネギを挟む」

ネギマだ。

「こうして肉の消費量を抑えて、値段を調整する」

「な、なるほど!

わかりました。

それで値段調整をやってみます」

「ネギの増産が必要ならこっちで手配しよう」

「よろしくお願いします」

「それで、最初の話に戻るのだが……」

「俺が勇者って話ですか?

またまたご冗談を。

はははははははは」

聞いてもらえなかった。

一村住人のなかに、数人の勇者がいる。

それは確定した。

なので告知したいのだが、呼び出して告げるのは違うだろうと俺が家に訪問することにした。

したのだが、周囲から反対があった。

「え?

村長が足を運ぶ功績を残したいのでしょうか?」

いやいや、家に行くだけでしょ?

「村長が足を運ばなかった家の者が落ち込むかと……」

説得されて、予定変更。

呼び出すのではない。

俺が各村の全ての家に、個別訪問することにした。

なんだろう。

自分で仕事を増やしてしまったパターンだ。

呼び出せばよかったかな?

まあ、各村の住人とは少し距離があったし、勇者告知のカモフラージュにもなるし構わないか。

自分が勇者であることを隠したい者もいるだろうし。

とりあえず、俺が家庭訪問すると伝えたら、各村の家で大掃除が始まった。

……すまない。

みんなの仕事も増やしてしまった。

夏の暑い日なので、熱中症には注意するように。

そうして始まった家庭訪問。

大樹の村は後回しで、一村から順に行う。

目的を忘れないように、勇者告知をと思ったのだが……

「子育ての役に立ちますか?

立たない?

でしたら、いりません」

「雷を発生させることができるのは気づいていました。

ですが、森のウサギはこれを軽くかわします。

これが勇者の力って言われても……」

「現在、甘口派と辛口派が対立。

そこに超辛口派が参入したことで複雑な様相を呈していまして……

これがそれを収める、カレー粉の増産計画書です。

よろしくお願いします。

勇者?

それになると、妻が甘口派になってくれたりしますか?

いえ、辛口は辛口で認めているのです。

ですが超辛口は食べ物ではないレベルで……」

「辛味スパイスが完成しました。

これを 塗(まぶ) すことで、カラアゲも焼き鳥も辛くなります。

もちろん、カレーも。

ふふふふふ。

あ、劇物ですので目に入ると危ないですよ」

「勇者?

私が?

………………お願いします、お願いします。

村から追い出さないでください。

私の居場所はここなんです。

村から追い出さないでくださいぃぃぃぃ」

「私と夫は、村長のための勇者となります。

村長が魔王を倒せというなら、努力しましょう。

勇者であることを秘匿しろというなら一生隠し通します。

さあ、ご命令を!

…………

できればご命令を頂けると嬉しいのですが……

はい、これからもジャック村長代行に協力し、一村の発展に 努(つと) めます」

勇者告知に、成果らしい成果はなかった。

大半の者がオンリーワン魔法に関して、気づいていなかったのもある。

まあ、相談事があったら遠慮なく言ってほしい。

……

とりあえず、他の家を訪問するか。