作品タイトル不明
獣人族の男の子たちの学園生活 出発
僕の名はブロン。
ゴール、シール、そして僕の三人でガルガルド貴族学園に入学した。
今は三人で教師をやっている。
どうしてこうなったのか?
……
細かいことは気にしない。
村でそう教わった。
村長もそう言ってた。
大事なのは過程じゃない。
結果だ。
最終的に村の利益になればいい。
といっても手段を選ばないのは問題だろうけど。
とりあえず、生徒と教師ではやれることが段違いだ。
僕たちが生徒であるより教師であるほうが村のためになるだろう。
そう信じたい。
それに、教師だからと言って、何も学んではいけないわけではない。
空いている時間に自主的に勉強したり、他の先生の授業に出たりすることはできる。
うん。
頑張ろう。
教師になって半年が経過するけど、いまだに空いている時間がないのが問題だけど。
さて。
ガルガルド貴族学園の入学は春にするが、卒業に決まった時期はない。
卒業条件はあるが、それさえ満たせばいつでも卒業できるので揃わないのだ。
ただ、学園に通うのは貴族の関係者。
魔王国では冬に大規模な 叙任(じょにん) 式があり、その叙任に 伴(とも) なう人事異動に備えて、秋の終わりぐらいに大勢が卒業していく。
僕たちのやっているクラブ活動に参加していた数人が卒業した。
「つきあわせて、すまんな」
訳)短い間でしたが、お世話になりました。
「ふっ、これで愚かな環境とはおさらばだ」
訳)卒業したくない。
「貴殿……いや、先生の顔もこれで見納めだな」
訳)どうしてもっと早く教師として学園に来てくれなかったのか。
残念です。
学園に残りたいと思っても家やお金の事情で残れなかったりする。
寂しいが仕方がない。
クラブ活動も卒業だから、貴族語もOK。
卒業後も頑張ってほしい。
ゴールとシールが盛大に卒業を祝おうと宴会を計画したので賛同する。
でも、会計関連を僕に投げるのは間違っていると思う。
ゴールもシールも得意じゃないだけで、できるんだからやろうよ。
適材適所って言葉を使えば許されるわけじゃないからね。
そして冬。
先生によって授業の有無が決められるのだけど、冬は総じて授業が少なくなるらしい。
だからか、普段よりクラブ活動時の密度が凄い。
そうそう、クラブ活動の名前だが、これまでは“生活クラブ”だったのだが、僕たちの授業が“生活”なので紛らわしいと事務から変更を相談された。
結果、“生活クラブ”は“統治研究クラブ”に名前が変わった。
略称は“統治研”だが、これだと統治方法を研究するクラブみたいじゃないかな?
やってること、大工と農家と狩人だけど?
実態との差は問題にならないのだろうか?
それに、すでに入部している人たちが困惑するような……
親に報告する時に“生活クラブ”よりは“統治研”のほうが響きが良いから、こっちのほうがありがたい?
そんなものか。
問題が起きたら改めて変更しよう。
「先生、聞きましたか?」
僕より遥かに年上の生徒に敬語を使われるのにも慣れた。
「なにかあったのかい?」
「北の森にダンジョンが見つかったんですよ」
「ダンジョン?」
「ええ。
すでに何組かの冒険者が入っていますが、まだまだ稼げるみたいです。
どうです」
「どうですって……まさか?」
「はい。
俺たちは行くつもりです」
君たち、確か秋に立ち入り禁止になった森に入って授業出席禁止一年になった五人組だよね?
「 懲(こ) りてないのかい?」
「今回は北の森への立ち入りは禁止になっていませんよ?」
「それはそうだが」
「前回は確かにご迷惑をお掛けしました。
ですので、今回は先に同行をお願いしようかと!」
「えっと……」
「残念ながらゴール先生は外出、シール先生は女性陣に追いかけられています」
「そっか」
仕方がない。
五人だけで行かせてトラブルになるよりは面倒じゃないだろう。
「よし。
まずは冒険者ギルドに行くぞ。
そこで準備と情報収集だ」
できれば、案内できる冒険者を雇おう。
“ミアガルドの斧”のコークスたちがいれば、彼らに引率をお願いして僕は離脱というのもありだな。
冒険者たちへの報酬の支払い?
それぐらい僕が出そうじゃないか。
村長からもらったお金じゃないぞー。
僕が学園の事務手伝いをして稼いだお金だ。
冒険者たちを雇うのに 躊躇(ちゅうちょ) がないぐらいは儲けている。
まあ、この手伝いのせいで勉強できないのだが……
実務に勝る勉強はないとか言われて、一応は納得はしている。
冒険者ギルドに行くと、“ミアガルドの斧”のコークスたちがいた。
彼らもダンジョンの話を聞き、そこに行こうと準備している最中。
丁度良かった。
だが、生徒五人がダンジョンに潜るのには反対された。
危ないと。
僕もそう思う。
そのまま説得してくれるなら、色々と楽でいい。
だが、生徒五人も引き下がらない。
なので試験となった。
試験をクリアできなければ、諦めて帰れ。
クリアできれば、ダンジョンに連れて行ってやろう。
「それも雇われてじゃなくて、俺たちの仲間としてな」
その言葉に生徒五人は頑張った。
試験はクリアできなかった。
「ううっ、先生。
僕たちは悔しいです」
残念だったな。
「今回は約束通り諦めます」
素直でいいことだ。
「僕たちの分まで、先生。
よろしくお願いします」
……
え?
「よし、ブロン。
行くぞ」
コークスが僕の肩を叩く。
いや、掴んでいる。
「お前の戦闘力は知っているが、取り分は半々だ。
こっちは六人で行くから勘弁してくれ。
アイテム類の優先権は渡そう」
ま、待て。
「僕は試験を受けていないぞ」
「お前を落とす試験があるなら、それは試験のミスだと思う」
「まったくです。
先生、土産話を待ってます!」
僕は今、ミアガルドの斧のメンバーと共に、北の森の奥にあるダンジョンの入り口前にいる。
どうしてこうなった?
だが、“混ぜ物”が出た件もあるし、森にあるダンジョンを調べておくのも悪いことではないだろう。
幸いなことに調べる技術はミアガルドの斧のメンバーが持っている。
盗めるだけ盗もう。
「よーし、出発だ!」
コークスの掛け声に僕は待ったをかける。
細かいことは気にしないの精神だが、一つだけ確認したい。
いや、どうしてリーダーではなくコークスが掛け声を出したかではなく。
「君たち、あの五人組を使って僕を巻き込んだわけじゃないよね?」
「そんなことをするわけないだろ」
そうか。
よかった。
「ただ、あの五人組にダンジョンの話をしたのは俺たちだ」
……
ダンジョンに潜る前のメンバーを殴るわけにはいかない。
無事に戻ったら、覚えておくように。
よし、出発。