軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

秋の終わりとドラゴンの姿

収穫が終わり、武闘会が開催された。

武闘会に合わせ、魔王国の学園に行っている獣人族の男の子たち、ゴール、シール、ブロンの三人がビーゼルと共に帰ってきた。

もちろん、一時的にだ。

武闘会が終われば、すぐに帰る。

ちょっと寂しい。

その三人が俺の前にやってきて、挨拶。

少し見なかっただけだが、ずいぶんと大人っぽくなったものだ。

しかし、シールが俺を見る目が……尊敬? 畏怖? なんだろう?

学園で何かあったのかな?

表情に出てしまったのだろうか。

挨拶のあとでゴールが説明してくれた。

なんでも、シールは複数の女性からアプローチされているらしい。

物理的に。

……

物理的?

「勝負だ。

私が勝ったら夫になれ。

私が負けたら妻になろう」

ああ、なるほど。

そういう方向ね。

で、シールはその勝負を?

「全部受けて勝ちました」

あー、それは悪手だな。

付き合う気がないなら何かしらの理由をつけて勝負を避けるべきだった。

「結果、学園内ではシールの傍に常に三人の女性がいる状態で……」

「よく三人で収まったな」

「その三人が、他の挑戦者を叩き潰しているので」

「……それは頼もしい三人だな」

「シールには勝てませんでしたけどね」

「ははは。

まあ、嫌われるより気に入られていることを喜んで、前向きに頑張るしかないだろう」

「ええ、だからこそシールはあの目を村長に向けるのだと思います」

どういうことだろう?

まあ、いいか。

「シールはわかったが、お前やブロンは?」

「僕は一人の女性とお付き合いを。

ブロンも同じです」

……

学園に行かせた理由に、奥さん探しがあったのは認めるが……

こうも順調だと驚く。

コミュニケーション能力、高いんだな。

その能力をこの村にいた時に……年齢的に厳しいか。

まあ、まだ若いんだ。

焦らずに将来のことを考えて欲しい。

ん?

結婚する前には俺の許可をもらいにくる?

それは嬉しいが別に俺の許可は……ああ、父親代わりね。

了解。

その時はしっかりと判断させてもらおう。

武闘会はいつも通り来客が集まり、ほどよく被害が出た。

みんな慣れたなぁ。

獣人族の男の子三人は戦士の部に出場。

一回も勝てなかったけど、いい笑顔だった。

「これだよな」

「ああ、全力を出しても勝てない相手だらけ」

「というか、どうやったら勝てるんだ?」

「修行しかないだろう」

騎士の部の優勝者は、ウノ。

ルーやティアが出産後で出場を遠慮したこともあるが、前よりも強くなっている。

優勝の冠を頭に載せ、万雷の拍手の中、パートナーのクロサンが待つ場所に誇らしげに歩いていった。

トロフィーは俺が屋敷のホールに飾っておこう。

優勝者はウノだったが、戦いで目立ったのがダガ。

剣の使い方が、いつもと明らかに違った。

話を聞くと、ピリカの剣術だそうだ。

五村(ごのむら) に行くたびに、修行だなんだで一緒にいるので見て覚えたそうだ。

「使ってみた感じ、ピリカの言うように対人戦特化です。

ウノ殿やマクラ殿を相手にするのは向かないでしょう」

リアに辛勝し、ウノに負けたダガの言葉。

ガルフもピリカの剣術を見て覚えたのだが、組み合わせに恵まれず一回戦でウノと当たってしまった。

「基礎的な動きで組み立てられているから堅実だ。

この剣術を覚えるだけで、対人戦に関してはある程度まで強くなれる。

しかし、改良の余地も大きい。

言って悪いが初心者用の剣術のイメージだな。

剣聖を名乗る者が使う剣術が初心者用ってことがあるのか?」

ガルフは素振りをしながら何か考えている。

敗戦のダメージはなさそうだ。

たぶん、会場が解放されたあとにでも誰かに勝負を挑むのだろう。

怪我がないようにお願いしたい。

ちなみに、今は魔王が人間形態のギラルを相手に戦っている。

うんうん、この悲鳴。

武闘会の名物になってきたなぁ。

新しく加入した文官娘たちにとっては初めての武闘会だったが、特に問題はなかった。

「無心。

無心よ」

「何も考えないように」

「仕事。

そう仕事に集中すれば全て忘れられる」

すごく真面目で優秀だった。

前からいる文官娘たちに良い影響を与えてほしい。

いや、サボっているとは言わないけどな。

うん、ただ最近、余裕が出てきたというか……すまない、はっきり言おう。

俺を誘惑するんじゃない。

特に赤ちゃんを抱いている時は駄目だって紳士協定が結ばれただろう。

母乳が出もしない胸を見せびらかすんじゃない。

あと、新しく入った者の半数はシャシャートの街の店に向かわせるから楽なのは今だけだからな。

武闘会が終わった翌日。

来賓たちが帰っていく。

獣人族の男の子三人もだ。

昨晩はアルフレートたちに捕まって質問攻めにされたのだろう。

かなり疲労した感じだ。

質問だけじゃなくて試合もやったのか。

お疲れさま。

土産はビーゼルに預けておいた。

向こうで受け取ってくれ。

ああ、野菜を多めにしておいた。

足りなければ、ビーゼルに伝えてくれ。

魔王たちや獣人族の男の子たちは早々に帰ったが、ドース、ライメイレン、ドライムはしばらく滞在した。

理由はヒイチロウ。

ライメイレンが言うには、そろそろだそうだ。

なにがそろそろなのか?

それはヒイチロウがドラゴンの姿へ変化すること。

ライメイレンが頻繁にヒイチロウの世話をしていたのは、ヒイチロウが可愛いのもあるだろうけど、ヒイチロウが人間の姿で生まれたからだ。

人間の姿で生まれても、ドラゴンはドラゴン。

成長するに従って人間の姿では御しきれないパワーを持つ。

簡単に言えば、ヒイチロウはパワーのコントロールができない子供ということだ。

ヒイチロウが腕を振り回すだけで周囲の者を殴り倒す可能性もあるし、ヒイチロウの体も耐えられるとは限らない。

そういった不必要な事故を避けるため、ライメイレンはできるだけ傍にいてくれていた。

ライメイレンが自粛していた時はハクレンが常に傍にいたのだが、他のことが一切できなくなるので早く自粛を撤回してほしいと願っていたな。

ともかく、そういった心配も一度ドラゴンの姿になってしまえばある程度、解消できるそうだ。

そして、ライメイレンの見立てではそろそろらしい。

ヒイチロウがドラゴンの姿をイメージしやすいように、ドース、ライメイレン、ドライム、ハクレンがドラゴンの姿で待機している。

ヒイチロウは無邪気に、ドラゴン姿のライメイレンの尻尾に登ろうとしているのだが……本当にこれでドラゴンの姿になるのかな?

そう疑問に思った瞬間、ヒイチロウの姿が三メートルぐらいの小型ドラゴンになった。

おおっ!

可愛い。

おっと、違った。

雄々しい。

うん、カッコイイぞ。

ヒイチロウは自分の姿が変わったことにパニックになることもなく、翼を広げたりしている。

問題はなさそうだ。

ライメイレンの説明では、まずはこれで一安心。

あとは人間の姿とドラゴンの姿を自在に変化させられるように訓練するだけだそうだ。

難度はドラゴンが人間の姿になるよりも易しいらしいので、それほど心配はしていない。

心配していないが……あれ?

ヒイチロウ、飛ぼうとしていないか?

うおいっ、ちょっ、飛んでる飛んでるっ!

ハクレン、ライメイレン、取り押さえて。

人間の姿に戻ったヒイチロウには、小さなドラゴンの 角(ツノ) と尻尾が残っていた。

出会った頃のラスティを思い出す。

このタイミングではハクレンを思い出したいが……襲ってきたイメージしかない。

考えれば、大人しくなったものだ。

ヒイチロウだけでなく、ウルザたちの面倒まで見ているしな。

いいことだ。

ちなみに、ラナノーンにも同じ心配があるのでラスティが傍を離れない。

ラナノーンのためとはいえ、俺としてはちょっと寂しい。