作品タイトル不明
お祭りっぽいお祭り
祭りの季節がやってきた。
一村、二村、三村、四村、温泉地、そして南のダンジョン、北のダンジョンから人が集まってくる。
来賓として、ドース、ライメイレン、ドライム、魔王、ユーリ、ビーゼル、グラッツ、ランダン、ホウ、始祖さん、フーシュ。
あと五村から先代四天王の二人。
ずいぶんと人が増えたが、五村を見た後だとそれほどと思わない不思議。
まあ、錯覚なのだが。
現在の人数は……数え切れない。
「八百人を超えたぐらいです。
予定より少し多いですが……問題はありません」
横にいた文官娘衆の一人が教えてくれた。
四村から、夢魔族がいつもより多く来たようだ。
夢魔族ということで服装等が子供の教育にと思ったが、普通の村娘の格好をしている。
ゴウやベルが、祭りに参加するなら場をわきまえた格好をするようにと指導した結果だそうだ。
服はゴロウン商会に頼んで中古の服を購入して用意した。
ただ、普通の服では隠し切れない色気があるのは……どうしたものか?
胸とかお尻とか……
見ていたら、その視線を遮るように俺の前に立った者がいる。
アンだ。
笑顔が怖い。
別に悪いことをしていたつもりはないが、謝るべきことは謝る。
「すまない。
えーっと、そろそろ時間かな」
「……そのようです。
所定の位置に」
俺は了解と事前に打ち合わせしていた場所に移動した。
その俺の横に、文官娘衆数人が並ぶ。
文官娘衆の一人が少し高く作られた舞台に上がり、挨拶。
諸注意を説明した後、俺の出番。
俺はいつもの格好ではなく、ザブトンが作った新しい服。
今日の為に作ったと言われると、着ないという選択肢は選べない。
真っ白なスーツ系の服に、金や赤の糸が各所を飾っている。
背中には表が真っ白で、裏地が赤のマント。
頭には金の王冠。
超目立つというか、なんというか。
でもって祭り仕様なのか、手には旗棒。
もちろん、旗棒には旗が取り付けられている。
派手な刺繍の大樹が描かれた旗を。
気分は、ビジュアル面を大事にするバンドのボーカル。
いや、これは応援団の団長なのか?
だったら、頭には王冠ではなく帽子でよかったと思うけど?
なんにせよ、浮いてるよね?
この格好。
俺の困惑を肯定するように、俺の姿をみた住人たちが静まり返っている。
あー……さっさと終わらせよう。
「それでは、今年の祭りを始める!
みんな怪我のないように!」
俺の宣言は、大歓声で応えられた。
ありがとう。
気合入ってるなぁ。
ちょっとビックリしたぞ。
今年のお祭りは、三部構成。
内容も、各部で変更される。
第一部は子供の部。
内容は、障害物競走。
平均台や跳び箱、坂登り、網くぐりなど一般的な障害に加えて、頭脳を使うパズルやなぞなぞ、観客に向けてモノマネをして当ててもらう障害などが設置されている。
全員で楽しめることをコンセプトにしている。
ただ、勝ち負けも大事なので、レースメンバーはある程度、体力頭脳が拮抗するように決められた。
ケンタウロスの子供たちが全体的に強かった。
網くぐりとか厳しそうに思えたが、意外とスルスルと進んでいた。
モノマネのお題はクジで決められるので、ここは運。
モノマネを当てるのは誰でも良いのだが、大抵は親か同じ種族の者が回答席に出る。
そして巻き起こる爆笑と混乱の渦。
リザードマンの子供よ、鶏のモノマネはそんなに難しいか?
ハーピーの子供に、ライオンのモノマネは厳しいんじゃないかな?
「お父さん嫌いっ」
モノマネがわかってもらえず、怒り出す子供。
気持ちはわかるが、そのセリフは止めよう。
お父さんが泣いているぞ。
え?
俺が回答席に行くの?
走るのは……アルフレートの組か。
よ、よし、こいっ!
父と子の絆を見せてやろう!
……
アルフレートの視線が冷たい。
いや、正解はしたけど五回ぐらい間違えたからだろうか。
その俺の横で、ティゼルのモノマネをティアが一回で当てたものだから……
すまなかった。
あと、土人形のアースはそこで何を……あー、ウルザのモノマネがわからず、途中でハクレンと交代させられたことに落ち込んでいるのね。
いやいや、お前は頑張ったと思うぞ。
第二部は大人の部。
内容はリレー競争。
障害物はなく、普通のコースで勝負となる。
チームは自主的に決めてOKなので、大抵が各村や種族で固まって出場する。
当然、種族差が激しいのだが、特に気にしなくて良いことになった。
足の速いチームは、足の速いチーム同士での勝負を求めるからだ。
勝って当然の勝負は、やっても意味がないということなのだろう。
参加チームが話し合い、出場レースが定められた。
リレーではバトンの受け渡しが重要だが、種族の都合でバトンをもてない者もいる。
クロの子供たちやハーピー種だ。
その者たちは、バトンではなくタッチでもOKとなった。
ただし、クロの子供たちの場合は前足と前足、ハーピー種は羽と羽と定められた。
レースは盛り上がった。
ミノタウロス族と巨人族のレースは遅いが迫力があった。
ケンタウロス族とクロの子供たち、そして飛び入りの馬チームのレースは、接戦だった。
勝ったのはケンタウロス族チーム。
クロの子供たちは、前足と前足のタッチでもたつくシーンが多かった。
馬チームは背中にザブトンの子供を乗せてバトンを保持、ザブトンの子供がバトンごと移動するバトンワークをみせてくれた。
ただ、道中の不利が多少あり、負けてしまった感じだ。
足の速いユニコーンの雌が参加していれば勝てただろうが、妊娠中なので不参加。
うん、当然。
参加したいといっても駄目。
やる気さえあれば、何度でも出場できるし、連続で走るのは禁止だけど同じレースに数回出てもOKというルールなので、色々なチームが作られてはレースが行われた。
目立ったというか、目立つのが魔王、ビーゼル、グラッツ、ランダン、ホウの五人がメンバーをそれぞれ集めたチームによるレース。
各種族一人までで、本人も走ることを条件に八人のチームが作られた。
俺は魔王チームで走ることになった。
他チームからのブーイングが酷い。
いや、俺の足はそれほど速くないから……
そうじゃなくて、俺がいる事で他のメンバーを集めやすいと。
なるほど。
魔王チームのインフェルノウルフは……ウノか。
やる気満々だな。
ザブトンの子供やケンタウロス族も、足が速いらしい。
あと、ギラル。
あれ?
あ、遅れて来たのね。
グラルのモノマネは……あー、見られなかったのね。
可愛かったぞ。
で、ギラルの足は……速いと。
なるほど。
魔王はもう勝ったつもりでいるが、俺がハンデにならなければいいのだが……
うう、プレッシャー。
結果、ビーゼルのチームが一位。
魔王チームは三位だった。
ハンデは俺だけでなく、魔王もだった。
「短い距離を瞬間的に動くのは得意なのだが、そこそこの距離を走るのはちょっと……」
あと、他のチームが遠慮なく勝ちにきてたしな。
まあ、楽しかったから問題なし。
第三部は自主参加の部。
競技は盆踊り。
これは勝ち負けのない普通の盆踊りだ。
俺の提案。
説明が大変だった。
「輪になって踊るのですか?
その場でくるくる踊るではなく?」
「全員が同じ振り付けなのですか?」
「伴奏は太鼓や鳴り物を中心に……承知しました」
言葉ではなかなか伝わらなかったが、輪の中央に 櫓(やぐら) を立て、実演することで理解が広がった。
今では大樹の村の住人は盆踊りをある程度、理解している。
とりあえず、まずは見本ということで、大樹の村の住人だけで開始。
参加者全員が一丸となって踊る姿は美しい。
ただ、櫓の上では太鼓を鳴らす予定だったのだが、なぜか俺がその櫓に立つことになった。
なぜだろう?
まあ、その方がスムーズだからと言われたら反対はできない。
俺が無理を言って盆踊りにしてもらったのだ。
頑張ろう。
音楽がちょっと独特だが、そこに文句はいうまい。
俺の考えていた盆踊りとはちょっと違うが、満足だ。
日が暮れた。
盆踊りは参加者がいる限り、夜通し行う。
なので、いつもの祭りの後の宴会もスタート。
倒れるまで踊らないように。
適当に休憩もいれてね。
伴奏者も交代で。
はい、そこ、子供たちが参加するからスペースを作ってあげて。
意外にも、お酒が入って酔った後の方が参加しやすいらしい。
最初は遠慮していた者も、参加し始めている。
振り付けもそう難しくないしな。
櫓を囲む輪が三重になっている。
うーん、魔王の踊りは目立つな。
ドースやギラル、死霊騎士も。
振り付け無視のフリースタイル。
……問題なし。
それを見ていたからか、クロの子供たちやザブトンの子供たちが集まり、四重目の輪を作りはじめた。
お前達も参加してくれるのか。
クロの子供たちは……独特のダンスだな。
途中、ジャンプが入るのか。
全然、問題ないぞ。
上手い下手ではなく、気持ちが大事だからな。
おおっ、ザブトンの子供たちも独特のダンス。
ははは。
可愛らしいぞ。
ところで、俺はいつになったらこの櫓から降りられるのだろうか?