軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

村長は日帰り

ふう。

なんとかなった。

それが俺の感想だ。

いやいや、危なかった。

予想以上の人の集まり。

それもこれも、騒動を静めるためとはいえ、安易に無料と言ってしまった俺のうっかりが原因だ。

反省。

そして従業員のみんな、助けに来てくれた村のみんな、ありがとう。

マイケルさんたちやゴールディ、他にも手伝ってくれたお店の常連客にも感謝だ。

店の中に店を配置する案も、驚かれはしたが受け入れてもらった。

俺としてはフリーマーケットのイメージだったが、フードコートになってしまった。

まあ、カレーの無料提供に怒った近隣の飲食店の者が来るだろうと予測して、そういった者たちから勧誘すると決めていたのだから、そうなっても仕方が無いか。

この件は、驚くほど綺麗に話が進んだ。

いや、マイケルさんの息子、マーロンが優秀なのだろう。

大したものだ。

マーロンの従兄弟のティト、ランディも手際が良い。

マイケルさんが鍛えたのかな。

次世代も安泰だな。

羨ましいことだ。

俺の息子たちも……いやいや、今は元気に育ってくれたらいい。

普段は日が落ちると同時に店を閉めていたが、今日はちょっと遅め。

カラアゲや酒を販売したので、なかなかお客が帰らなかったのだ。

さすがにカレーの無料提供は終了している。

「村長、そろそろ帰らないとまずくないかい?」

始祖さんが俺に言ってくる。

俺はこの街に来る時に、絶対に日帰りすると村に残った者たちと約束していた。

できれば店を閉めるまで一緒にいたかったが、仕方が無い。

また明日だ。

俺は明日の準備しているマルコスとポーラ、それとマイケルさんたちに挨拶し、村に戻った。

追加の食材を運んできた者や、援軍で来た者たちも一緒に。

ただ、ガルフだけは残る。

大丈夫だとは思うが、万が一に備えてだ。

「悪いな」

気にするなと、請け負ってくれた。

助かる。

村に戻り、遅めの夕食。

お店の従業員たちは交代で食べていたが、俺たちは遠慮していた。

ゆっくり食事を楽しめる空気じゃなかったしな。

ただ、ツマミ食いというか試食はなんだかんだした。

特に鬼人族メイドたちに作らせて販売したカラアゲ。

無料のカレーがライバルなので、最初は全然売れなかった。

なので、掃除を手伝ってくれたお客たちにサービスで配った。

誰かが食べていれば、釣られる者が出るだろうと。

俺や従業員たちも食べた。

マイケルさんたちも食べた。

誰の表情が良かったのかな。

中銅貨一枚で小振りのカラアゲ三つ。

高いのか安いのかわからないが、かなり売れた。

同時に横でドワーフたちの売っているビールも。

ビールのお供は、カレーよりもカラアゲのほうが人気だったな。

思い出しながら食べ終えた後は報告。

遅くなった事情を説明する。

援軍を呼びに始祖さんが戻った時に伝えているので大きな混乱はない。

明日、もう一度行くことを伝えて終わった。

うん。

全員、納得してくれて嬉しい。

翌日、昨日と同じメンバーでシャシャートの街に移動。

始祖さんには本当にお世話になる。

ミノタウロスとリザードマンたちは無理に付き合う必要はないんだぞ?

手伝ってくれるのは助かるけどな。

マルコス、ポーラ、ガルフ、マイケルさんたちが待っていた。

店はすでに開かれ、お客もチラホラといる。

思ったよりも店を開くのが早い。

マルコスとポーラは大丈夫か?

徹夜じゃないだろうな。

ガルフの言葉を信じるなら、ちゃんと寝ているそうだ。

ともかく、同行している鬼人族メイドたちに厨房の手伝いをお願いした。

ドワーフたちも昨日と同じく酒の販売に。

まあ、朝っぱらから……注文が入ったな。

待っていたのかな?

お店はこれまで、一日で二千食のカレーを販売していた。

カレー一杯が中銅貨五枚なので、毎日の売り上げは中銅貨一万枚。

その内、従業員の給料が一人につき一日で中銅貨三枚。

二百人……正確には二百と七人いるから、合計六百と二十一枚。

一日で中銅貨三枚は安いと思ったけど、衣食住が全てこちら持ちなので多過ぎるぐらいだとマイケルさん。

そんなものか。

パンを始めとした仕入れに、毎日中銅貨三千枚。

さらに、列整理にゴールディたちを雇ったり、ゴミ類の処理代だなんだかんだで毎日五百枚ほど使っているらしい。

なので、残りの五千と八百七十九枚の中銅貨が、毎日の利益。

ざっとした計算だが……

マルコスとポーラが店を始めて三十日ぐらいなので、現在の利益は十七万と六千枚ぐらい?

初期投資として、食器、従業員の衣装代、エプロン代、ミニボウリングの追加生産で……合計三十万枚ぐらい使っているからまだ赤字と。

なるほど。

確かに建物の建設費を入れれば、圧倒的な赤字だろうな。

いやいや、恐縮する必要はない。

よくやっている。

というか、毎日二千食って凄いぞ。

営業時間は……一日十時間ぐらいだろ?

つまり平均、一時間に二百杯。

一分に三~四杯売っている計算になる。

確かに、これだけの従業員が必要になるな。

その数多い従業員たちは、こちらの用意した従業員用の専用宿……まあ、寮だな。

そこで寝泊りしている。

寮は三階建てで、部屋数は各階に十二。

三十六部屋で二百と七人。

一部屋に五人から六人を押し込むことになるが文句は出ていない。

部屋の中をカーテンで仕切って、個室っぽく使わせてもらえるだけでも十分に贅沢なのだそうだ。

そんなものか?

寮にトイレはあるが風呂はない。

なので寮の隣に風呂が建設されている。

従業員は清潔じゃないとな。

その従業員たちも、全員が全員、日中に活動しているワケではない。

夜に仕込みを手伝う者や、寮の管理をする者、風呂の管理をする者がいる。

そういった者を省き……普段は百二十~百三十人ぐらいが店に行く。

昨日はそれよりも多かったと思うが、色々と限界が近かったのかもしれない。

従業員、もっと雇わないと駄目かな?

さて、一応、今日から通常状態だが……

南西エリアが賑やかになっている。

さっそく屋台だなんだと運び込んでいるのだ。

営業までできている者は少ないが、活気がある。

当然、トラブルも。

対応にはゴールディが行っているが……トラブルを止めるのにも人数がいるな。

ミノタウロス、リザードマンたちに見回りを頼んだ。

武器で脅さないように。

刃物は置いて、棒で。

マイケルさんの息子のマーロンも、南西エリアを飛び回っている。

よろしくお願いします。

山エルフは昨日の作業の続き。

ハイエルフは……仕切り作りは終わっているので、山エルフを手伝ってもらうか。

いや……この広さだ。

俺はミニボウリングが設置された場所をみる。

うん、村にあるミニボウリングと同じサイズだが……ここなら普通のサイズのボウリングで構わないだろう。

普通のボウリングの正確な長さは知らないが、若い時に行った記憶を頼りに距離を決める。

間違っていても、誰からも怒られないだろう。

ミニボウリングは撤去と思ったが、常連らしき者たちから熱い視線を感じたので場所を移動して残すことになった。

「まあ、遊具が多いに越したことはないからな」

ハイエルフたちにレーン作りを頼む。

俺はピンとボールを作ろう。

家を一日で建てるハイエルフたちだ。

半日もすれば、距離二十メートル、幅一メートルのレーンが綺麗に並ぶ。

現在十レーン。

もっと多く並べられるが、とりあえずだ。

理由は人手。

投げたボールを返す人、倒れたピンを立てる人と全てが人力なのだ。

一応、レーンに十センチぐらいの高さと、その横ガーターゾーンのさらに横にミゾを作った。

ミゾは手前が深く、奥が浅い。

奥でボールを受け取った者が、そのミゾにボールを置くことでボールが投球者の元に戻る仕掛けだ。

これで多少は楽になるだろう。

あと、ボウリングピンを楽に並べられる枠も用意した。

穴の空いた厚みのある板だ。

板を置き、その穴にピンを入れることで定められた位置にピンが立つ。

ピンを並べる速度が向上するだろう。

ボウリングの試し投げは……常連たちがウズウズしながら待っていたので彼らに頼んだ。

遊戯エリア担当の従業員がピンを立てているのだが、手が回らない時はお客が自分たちでピンを立ててくれる。

ありがたい。

「いや、タダで楽しませてもらっているしな」

「金を取っても良いんじゃないか?」

良いお客達だ。

ただ、今のボウリングでお金を取ろうとは思わない。

俺が機械で管理されたボウリングを知っているからだろうな。

色々と手は打ったが、ボールが帰ってくる時間も、ピンが並べられる時間もまだまだ長いのだ。

非常にゆったりしている。

俺としては数球投げるのは構わないが、一試合となると忍耐が必要になる。

長いのだ。

いや、一緒に楽しんでいる者とお喋りでもすれば良いのだろうが……サクサク投げたい。

この気持ちに共感してくれているのは、今のところは子供たちだけ。

他の大人たちは、村にあるミニボウリングをまったりと楽しんでいる。

俺に足りないのは優雅さかな。

ごほん。

まあ、整備費が欲しいから収入をと考えると……マイボール、マイピンなんかを販売すれば買ってくれるだろうか?

ボウリングだけで収支が完結できれば、専用に人を雇うのも手だしな。

「距離が長い分、フォームを安定させないとキツいな」

「ボールも大きくなっているしな」

「穴あきのボールはどう使うんだ?」

「レーンのクセ以外に、ボールのクセも掴まないと厳しそうだな」

楽しんでもらえているようなので、今度大会でも開こうか。

それで周知もできるだろう。

山エルフたちに頼んでいた輪投げ、射的もそれなりの格好になった。

これは……マイケルさんたちに試してもらおう。

まずは輪投げ。

輪投げは中銅貨一枚で、輪を五個もらえる。

それを景品に向けて投げ、引っ掛かればその景品をゲットできる。

シンプルな内容だ。

「なかなか……狙い通りにはいきませんね」

マイケルさん、全部ハズレ。

ティトは二つ。

ランディは一つ。

ミルフォードは四つ、成功させた。

輪はそれなりの大きさにしているし、引っ掛かればOKにしているので判定は緩い。

ただ、高額景品の近くには、それを妨害するように棒や壁が設置されている。

障害物だ。

そう簡単には取らせない。

マイケルさんたちの感想は、もっと取り難くても良いだろうと。

今の難易度だと、手先が器用な者に荒らされてしまうとのこと。

なるほど。

輪投げ担当の山エルフに改善をお願いする。

輪を一回り小さくするのが良いかな?

それとも障害物を改造するか?

次に射的。

こちらで用意した弓と矢で、 的(まと) を狙ってもらう。

最初は景品を直接狙ってもらうつもりだったが、弓の強度を試した時に景品に穴が空いてしまったのだ。

それで的に変更。

的は嫌われている魔物などをモデルにしており、各所に点を付けている。

中銅貨一枚で、矢三本。

三本の矢の合計点で、渡す景品が変化する。

狙いやすい場所は点が低く、狙い難い場所は点が高い。

ただ、的もジッとしていない。

山エルフの作った仕掛けで、ハンドルを回すことで的が不規則に動く。

当てて楽しんでもらう遊戯なのだが、簡単に当てさせる気はないように思える。

「この弓で……ですか?」

ミルフォードは元冒険者だったな。

熱心に弓をチェックしている。

弓は子供にも扱える小弓だが、文句を言う人を想定して大きい弓もちゃんとある。

「弦を緩く張っているのは、難易度調整ですか?」

「安全のためだ。

素人にもやってもらいたいからな」

「なるほど。

しかし、弓が良すぎませんか?

弦を張り直せばちゃんと使えますから、持ち逃げの危険があります」

弓はこの街で購入した中古品だ。

それほど高いとは思わなかったが……持ち逃げされるのは悔しいな。

「それと、玩具のようでも弓を撃つのですから、周囲をもっと高い壁で囲うべきですね。

万が一でも、変なところに飛ぶのは避けてほしいです」

なるほど。

それは確かに。

そして、その壁で持ち逃げを防げということか。

うん、採用。

ただ、マイケルさんやティト、ランディは 射(う) ちたそうにしていたので、簡易の壁で周囲を囲ってからやってもらった。

「おお、飛んだ。

まっすぐ飛んだぞ」

「これぐらいの弓なら俺でも扱える」

「やったぞ、ど真ん中に命中だ。

十点だ!」

意外なテンション。

輪投げよりもウケそうな予感。

その横で、ミルフォードが追加の矢を山エルフから購入していた。

一回目の矢は……全部外したようだな。

弓の扱いに慣れている人のほうが難しいのかもしれない。

初心者、中級者、上級者とランク別にして、景品を変えるのも手だな。

俺もやってみたが、全部外れた。

……

意外と悔しい。

さて、後はと……

ん?

マーロンがこっちを見ているな。

いや、遊んでいるんじゃないぞ。

ちゃんとした仕事で……あの目は違うな。

何かあったか?

俺が疑問に思うと、マイケルさんが教えてくれた。

マーロンの横に立っているのは、商業ギルドの者だと。