軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ガルフの冒険(すぐ終わった)

俺の名はガルフ。

ハウリン村で一番の戦士。

以前はそれが自慢だったが、最近はそれが自慢にもならないことを知った。

世の中は広い。

俺はハウリン村からガットの弟子が移動するのに同行し、大樹の村に来た。

ここは良い村だ。

飯が美味い。

酒も美味い。

そして俺より強いのがゴロゴロいる。

インフェルノウルフやデーモンスパイダーに勝てるとは思わないが、人型相手ならなんとかなるかと思ったら駄目だった。

手も足も出ないってのは、本当に久しぶりの感覚だ。

現在の目標は、リザードマンのダガ。

マジ強い。

尻尾攻撃を封印してもらっても勝てない。

だが、それがいい。

お祭りで遊んだ後は、商人のマイケルに同行してシャシャートの街に行く。

見聞を広めるためという理由だが、それ以外に目的が二つある。

一つは冒険者登録。

登録はしていたのだが、一定期間、活動がないと剥奪されてしまうのだ。

ぶっちゃけ、定期的に居場所を教えるだけで剥奪処分は回避できるのだが、ハウリン村からなかなか離れることができなかったので剥奪処分されてしまった。

まあ、忘れてたってのもある。

なので改めて登録。

また一からやり直しだ。

登録は冒険者ギルドのある場所ならどこでも可能だが、今後を考えてシャシャートの街にした。

二度ほど来たことがあるが……

前に比べ、かなり活気がある。

新しい建物も増えたな。

「宿泊は、我が家にどうです?」

商人のマイケルが誘ってくれるが、遠慮する。

俺は上品じゃないからな。

俺みたいなのが出入りして、商売の邪魔をするわけにはいかない。

「そうですか。

では、あちらの宿にどうぞ」

マイケルが指差すのは、立派な宿。

真新しい建物だ。

「私の経営している宿です。

代金は不要ですよ」

……

マイケルはかなり儲けているようだ。

こっちはありがたく受けておこう。

宿に入ると胡散臭い顔をされたが、マイケルからの手紙を持った執事が来た後は凄く丁寧に応対された。

たぶん、この部屋って一番良い部屋じゃないかな?

冒険者ギルドの場所は変わってないかと聞いたら、冒険者ギルドの幹部を呼びましょうかと言われた。

さすがにそれは遠慮する。

再登録で幹部を呼ぶって……恥ずかしい。

冒険者ギルドの場所は変わっていなかった。

内装が少し豪華になってる。

景気が良いんだろう。

俺はさっさと用件を終わらせるため、受付に行く。

三人ぐらいの列が順調に進み、俺の番。

俺みたいに登録を抹消されるのは珍しいが、皆無じゃない。

受付は慣れたように再登録をしてくれた。

ランクは一。

一番下だ。

依頼を受けてランクを上げていくことで、大きな依頼を受けられるようになる。

要は信頼度みたいなものだな。

ちなみにだが、冒険者ギルドは世界に一つしかないわけではない。

世界に複数種類ある。

やっていることは一緒だが、ランク表示が記号だったり、鉱物の名前だったりする。

またランクの上がる条件も違ったりするので、一概にどこが良いとかどこのランクがこれ相当とは言えない。

ここシャシャートの街にある冒険者ギルドは、コーリン教が運営母体の冒険者ギルドで多数の国に跨るメジャー所の一つだ。

再登録を終わらせ、外に出ようとすると邪魔された。

「おいおい、俺たちに挨拶も無しかよ」

……

冒険者ギルドの名物的なヤツだ。

うっとおしい。

冒険者ギルドの方も把握しているが、こういったトラブルを自分で解決できないようでは冒険者には相応しくないと考えて放置らしい。

初心者の最初の試練みたいなものだ。

だが、俺は初心者じゃない。

「うせろ。

再登録だ」

「おいおい、今時そんな理由で切り抜けられるとでも思っているのか?」

……考えてみれば、さっきのセリフは俺が冒険者をやっている時に流行った逃げ口上だ。

どう見ても初心者が再登録を主張するのは当時の俺も笑ったが……

俺がそこまで初心者に見えるのか?

それともこの目の前のチンピラは俺を歯牙にもかけないほど強いのか?

……

そうは見えない。

そうは見えないが、試してみる。

「わかった。

骨を折られるぐらいの覚悟はしろ」

俺はしている。

「え?」

骨を折ったりはしなかったが、関節を四箇所ほど外してやった。

四箇所で終わったのは、ギルド職員が止めに入ったからだ。

止めるなら最初から止めろ。

俺が再登録だってお前らは知っているだろうが。

そしてチンピラ。

声を掛けるなら相手を見てかけろ。

無駄な時間だった。

冒険者ギルドを出てから宿に向かうまでも、無駄な時間は続いた。

チンピラ、ゴロツキが三組で合計十二名。

面倒臭い。

本当に。

というか……俺って、そんなに弱そうに見えるのか?

ショックだ。

宿で食事。

うん、不味い。

いや、たぶん美味い部類の食事なのだろう。

大樹の村で食事をして、舌が肥えてしまった。

ハウリン村でも、大樹の村から作物や調味料を買って使っている。

それに慣れていると厳しい。

だが、俺には秘密兵器がある。

大樹の村を出る時、村長が小遣いと共に持たせてくれた。

醤油と味噌、そしてマヨネーズ。

宿の料理人には悪いが、使わせてもらう。

ふふふ。

美味い。

おっと、隣の客が見ているな。

悪いがこれは俺の物だ。

譲らない。

そんな目をしても駄目だぞ。

……

わかった。

ちょっとだけだぞ。

恩に思わなくていいから、それ以上味噌を取るな。

翌日。

俺の二つ目の目的を考える。

それはシャシャートの街で行われる武闘会への参加。

武闘会は以前からあったがメンバーはショボく、街角ナンバーワン決定戦みたいな内容だった。

だが、マイケルが金を投資してちゃんとした大会にしたらしい。

一ヶ月ごとに小大会を行い、三ヶ月ごとに大大会。

そして年に一回、総まとめ的な特別大会を行っている。

今では魔王国だけでなく、他国からも参加者が来るらしい。

俺はその武闘会の話をマイケルから聞き、興味を持った。

冒険者ギルドへの再登録もあったしな。

大会は五日後に予選が行われるそうだ。

大会は終わった。

俺の優勝。

だが、なんの感動もない。

相手が弱過ぎた。

話にならない。

大樹の村の一般の部の方がマシじゃないか?

そのくせ、対戦相手は試合前にやたらと俺を煽ってくる。

口で喧嘩するのが流行っているのだろうか?

その割には賞金額は凄いな。

何人かの貴族から部下にならないかと誘われたが遠慮する。

顔を知っているのがいた。

「ガルフだったか?

大樹の村にいたな」

魔王国の幹部の一人、ランダンだ。

親しくはないが、祭りでちょっと喋った。

時間的に、帰った後にすぐにこの街に移動したのだろう。

幹部も大変だな。

大樹の村のことを考え、丁寧に頭を下げておく。

ランダン。

ここに出てたヤツらよりは強そうだ。

「アンタが出てれば、もう少し盛り上がったんじゃないか?」

「ははは。

やめてくれ。

俺はただの内政官だ。

それより、お前がこの大会に出るのは反則じゃないか?

弱い者いじめだろ?」

「んー?

そうか?」

「そうだよ。

まあ、その辺りを考えて、その武器なんだろうけど……

知らないヤツからすれば舐めてるのかって、平静を失ってたな。

それを狙ってたのか?」

え?

俺は自分の武器を見る。

大樹の村で練習に使っていた木剣。

村長に作ってもらったヤツだ。

馴染んでいたから気付かなかった。

あっ!

ひょっとしてこれで俺が弱いって思われたのかな?

考えてみれば、服装も普通の私服だ。

鎧類を装着していない。

大樹の村の連中相手だと、装着しても意味がなかったからな。

ズバズバ抜いてくる。

それならばと鎧を脱いで速度を重視していたから……

この格好で、弱いと思われた。

そうだと信じたい。

しかし、練習用の木剣で済む相手って……

マイケルに伝えよう。

月一の小大会かもしれないが、もう少し強いヤツを揃えろと。

一年に一回の特別大会だったらしい。

だからランダンがいたのかと納得。

しかし、あれでか……集まりが悪かったのかな?

さて。

目的達成。

あとは見聞を広めるために適当にブラブラ……

大樹の村の武闘会には出たいな。

帰りはマイケルの商品護衛として同行すれば良いか。

次の便を確認。

結構、頻繁に運んでいるんだな。

時間的には余裕がある。

魔王国の王都に行くか……いや、船に乗って南大陸とかもありだな。

二十日後。

俺は大樹の村にいた。

「もう戻ってきたのか?」

「ああ。

これ、お土産」

俺はシャシャートの街で買った大量の民芸品を、村長に渡す。

人形、仕掛け箱、動物を模した彫り物、装飾品。

村長から貰った小遣いと優勝賞金をほぼ全額使った。

評価は……ウルザやナートが人形を村長にねだっている。

アルフレートやティゼルも動物を模した彫り物に興味を持ってるな。

俺の選択は正解だったようだ。

だから山エルフよ、いきなり仕掛け箱を分解して構造を調べようとしないでほしいな。

俺も仕掛けに興味はあるけど。

「こんなに悪いな」

「気にしないでくれ。

それ以上に世話になっている」

大樹の村にいる時は娘やガットの手伝いをしているが、基本は自由。

リザードマンやハイエルフ、山エルフたちと戦闘練習をさせてもらっている。

この前は、乗馬の練習もさせてもらった。

その上で、飯を食わせてもらっている。

これぐらいでは恩は返せない。

「そうか。

まあ、今日はドライムが来たから宴会だ。

遠慮なく食ってくれ」

「おう」

知ってる。

俺をここまで運んでくれたのは、ドラゴンのドライム様だ。

実は期待していた。

ここの飯はやっぱり美味い。

酒も。

そして思い出す。

シャシャートの街での苦しみを。

醤油、味噌、マヨネーズ。

旅のお供の調味料達。

不味い料理を極上に……は言い過ぎにしても、それなりに食える味にしてくれる。

特にシャシャートの街の海産物に醤油はベストマッチだ。

それが尽きてしまった。

十分な量を貰っていたのに。

配り歩いたわけじゃないが、各所で欲しがられた。

特にランダン。

調味料を持っていることを言ってしまったため、狙われた。

四分の一も持っていかれた。

くっ。

最終的には魔王国の幹部であることを前面に出してきやがって……

あと、宿で食事をする度にねだってきたヤツ。

確実に俺と同じ時間に食事をするようにしていたな。

席も常に俺の横に来たし。

いつの間にか、俺の活動限界が調味料の残量と等しくなっていたとは……

うかつ。

だが、重要なことだ。

本格的にここへの移住を考えた方が良いかなぁ。

娘もいるし、ガットもいるし、強いヤツも多いし。

次、ハウリン村に戻ったら妻に相談しよう。

余談

冒険者ギルドにある依頼が出た。

『醤油、味噌、マヨネーズなる調味料を確保してほしい。

夢に出てくる。

本当にお願い。

それが無理なら、シャシャートの街の武闘会で優勝したガルフという戦士と連絡を取りたい。

頼む』

依頼主はとある貴族の坊ちゃん。

報酬は凄い額だった。