作品タイトル不明
ドマイムの相談
村にやってきたドマイムと、応接室で話をする。
そういえば、ドマイムが一人で村に来るのは珍しい。
だいたいクォンと一緒なのに。
クォンは遅れてくるのか?
「クォンはラナノーンさまからの仕事を受けて、一緒にこれなかったんです」
そうなのか。
ラナさんが無茶を言ったりは?
「それは大丈夫です。
ただ、クォンがラナノーンさまにかなり怯えていまして」
怖がられてるなぁ。
「あはは。
帰るときにクォンへのお土産にしたいので、村の果物などをいただけると。
代金は払います」
いやいや、タダでいいよ。
逆に、もらった魔合鉄の代金は払わなくていいのか?
貴重なものらしいけど。
「あの岩はラナノーンさまに教えていただかなければ放置していたものです。
お気になさらずに」
詳しく聞くと、クォンの父であり、ライメイレンの弟であるクォラインの巣の近くに落ちてたもの。
まだまだあるらしい。
貴重じゃなかったのかな?
あ、いや、ドラゴンの巣の近くの段階で、手が出せないか。
「必要でしたら、また持ってきますよ」
そうしてもらえると、助かる。
ルーたちが喜ぶからな。
そのときは代金を払うから、受け取ってくれ。
「わかりました」
それで、村に来たのはなにか用事があってか?
「ええ、兄上に相談がありまして」
兄上というと……ドライムに?
「ドラゴンの夫婦関係の話で、ちょっと……」
あー。
もうドライムの巣には行ったのか?
「岩があったので、先にこちらに来ました」
それはよかった。
ドライムは村に来ている。
呼んでこよう。
「ありがとうございます」
夜まではいるよな?
ドースとライメイレンが、ドマイムを歓迎する宴の準備をしているぞ。
「父上も母上も、大げさだなぁ。
会おうと思えばいつでも会える距離なのに」
俺もそう思ったけど、クォンに遠慮があるらしくてな。
まあ、急いで帰らなくていいなら今日は泊まっていってくれ。
「甘えさせてもらいます」
ドマイムは、ドライム以外にもマークスベルガークやギラルにも相談。
父であるドースには相談しなかったらしく、ドースは少し拗ねたが……
夫婦関係の相談を父親にするのはハードルが高いと思う。
家庭にもよるけど。
相談内容に関しては、俺は無関心を装った。
興味はあるが、興味本位で首を突っ込むのはよろしくないと考えたからだ。
なのに、なぜかドマイムの相談を受けたドライム、マークスベルガーク、ギラルは俺に相談しろとアドバイスしたらしい。
ドマイムが困り顔で俺の前にいる。
ドマイムの相談内容を簡潔にまとめると……
クォンは早く子供がほしい。
ドマイム、体力の限界。
……
俺に相談されても困る内容なんだが?
と、とりあえず、食事だ。
ちゃんと食べているか?
そこはクォンがしっかりしている?
クォンのことだ。
精のつく食材ばかり用意しているんじゃないか?
……だよな。
それじゃあ、駄目だ。
バランス。
なにごともバランスが大事。
いろいろな物を食べよう。
うん、村の食材を持って帰っていいから。
あと、クォンに流されるのはよくない。
二人して子供がほしいと考えが一致しないと。
ああ、考えは一致しているんだ。
それはよかった。
じゃあ、焦らないことだ。
ドラゴンは子供ができにくいんだろ?
前にそう聞いたことがあるぞ。
いや、うちはその……まあ、運がよかっただけで。
できるだけの相談に乗った。
あと、大丈夫だとは思うけど世界樹の葉を何枚か渡しておいた。
頑張れ。
そして、夫婦仲がよくてなによりだ。
プールが開放され、十日ほどが経過した。
大人のリザードマンたちが率先して監視してくれるので、とても助かる。
そしてプールサイドでは、水着姿の鬼人族メイドたちによる食事会場。
バイキングビュッフェみたいな感じで、テントの下に料理が並べられている。
泳いだあとはお腹がすくからな。
でも、 傷(いた) まないように……あ、氷の魔物がテント内に氷の山を作って冷やしてくれているのか。
助かる。
でもって、温かい料理は……フェニックスの雛のアイギスが食べる前に再加熱していると。
遊んでいるだけじゃないんだな。
ははは、冗談だ。
助かるよ。
もちろん、鬼人族メイドたちもだ。
学園の職業見学の宿舎に通っていたアンは、向こうでトラインに会えたらしく、かなり機嫌がいい。
それなら会いに行ったりすればと思うのだけど、アンは仕事があるからと遠慮する。
トラインに顔を見せに戻ってきてはと言っても、なにも成果がないうちはと遠慮する。
転移門を使えば、ほんとうにすぐの距離なのに。
アンもトラインも不器用だ。
まあ、俺が器用かと聞かれたら……器用だとは言わないけど。
とりあえずプールを楽しもう。
ヒトエ、今日も一緒に泳ぐか。
ヨウコはまだ仕事で来れないが、明日は大丈夫だと言ってた。
ああ、そうだな。
泳ぎの練習をして、ヨウコに褒めてもらおう。
プールサイドでは、ドライム、ドマイムの兄弟が横になれるビーチチェアを並べ、水着姿で日光浴をしている。
二人して 色つき眼鏡(サングラス) 、似合っているな。
それはいいとして、ドマイムは帰らなくていいのか?
遅くなると、クォンが村に迎えに来るぞ。
「ははは、明日には帰るつもりです」
それ、昨日も聞いた気がするが?
「気のせいです」
そ、そうか。
まあ、ほどほどにな。
あまりクォンに心配をかけないように。
「はーい」
ドライムはドライムで、グラッファルーンに心配をかけないように。
「心配はいらん。
妻は今日の晩にでも、こちらに来る予定だ」
そうなの?
「うむ。
私が用意したダイコン料理を食べてもらおうと思ってな。
呼んでおいた」
へー。
「兄上のダイコン料理。
僕も食べたいな」
「ふふふ、遠慮なく味わうといい。
なんだったらお前もダイコンを育ててみんか。
なかなか楽しいものだぞ」
「僕にできるかなぁ?」
「なにごとも、最初からうまくはいかんものだ。
だが、それがいい」
「……クォンに相談してみます」
「うむ。
そうだな。
勝手にやってはいかん。
相談は大事だ。
まあ、その……なんだ。
一緒に育てるとかすれば、気もまぎれるんじゃないか」
あー、例の相談の件ね。
なるほど。
ドライムもちゃんと兄だったか。