作品タイトル不明
第五章 設定 + おまけ
第五章 設定 + おまけ
●キャラクター
『クロノ・フォン・ストラトス』
所属:帝国 身分:伯爵家長男 年齢:15歳
武勇:120
魔法:110
知略:65
政治:60
教養:50
忠誠:70(帝国)・78(ストラトス家)
備考
今作主人公。知識チート戦記もののはずなのに結局腕力で解決する系転生者。
とうとう父親になった。しかも6人の。
その武力と飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長しているストラトス家の次期当主ということもあって、国内外から強く警戒されている。
家督の継承に必要な書類は既に揃っているが、戦争で忙しかったので後回しに。
ガルデン将軍との戦いで彼の剣捌きを間近で見たこともあり、武勇が上昇。また、魔力量は普通に成長期なので伸びた。
彼の遺言もあり、アナスタシアの助命に全力で動く。その結果他の帝国貴族との間に火種を残すことになった。ストラトス家の武力と財力、そして数々の功績もあって表面化していないが、未来の禍根となることは間違いない。
また、略奪を禁止したことも大きく響いており、帝国貴族内での好感度は大きく下がっている。
それらの苦難を今後乗り越えることができるかどうかは、まだ誰にもわからない。
『クリス・フォン・クロステルマン』
※パラメーターに変動はない為省略。
備考
金髪碧眼の男装の麗人。クロステルマン帝国の皇太子。
たぶん今章で最もメンタルと胃壁にダメージを受けた人。
ストラトス家の功績を考えれば、アナスタシア女王の処遇や略奪の禁止について、甘い裁定を下すべき。
されどそれでは他の貴族達が納得しないのも明白であり、『非常識』なことを仕出かしているのはクロノである。あの大陸において、道理は彼らにあるのだ。
完全な板挟み状態。それだけで胃が痛い案件だが、アナスタシア女王という高貴な身分の女性は流石に『恋敵』として意識せざるを得なかったようで、そういう意味でもダメージを受けている。
次の章にて、アクションを起こすかも?ただし、同時にまた胃とメンタルにダメージが飛んでくる可能性がある。
どことは言わないが、『G』。まだ大きくなるかもしれない。
『グリンダ』
※パラメーターに変動はない為省略。ただし、妊娠により『魔法』の部分が日によって乱高下している。
備考
TS爆乳美少女メイド。栗色の長い髪に金色の瞳をしている。
クロノと同じく元日本人。前世では風俗通いが生き甲斐の40代おっさんであった。
遂に妊娠。ストラトス家に引き取られてから約5年。その間、心のよりどころと言えば同じ転生者のクロノだけ……メス堕ちの用意は、既に完了していた!
作者の性癖はたぶん関係ない。
クロノには元々『自分以外にも嫁は作れ』『正妻は別の人にして』と言っていたこともあり、彼の周囲に他の女性が増えても構わないと思っている。
何故なら、同じ転生者なのはこの国に2人だけで、前世日本の話を共有できるのは自分しかいないのだから。
どことは言わないが、サイズが『J』となった。
『リーゼロッテ・フォン・シルベスタ』
所属:帝国 身分:近衛騎士団親衛隊隊長・男爵(法衣) 年齢:16歳
武勇:80
魔法:70
統率:50
知略:50
政治:45
忠誠:70(帝国)・99(殿下)
備考
銀髪に鋼色の瞳をした美女。クリス殿下の親衛隊隊長を務めている。
鋭い嗅覚と類まれなる頑丈さ。そして強靭な精神をもつエリート戦士。鍛錬を欠かす事はなく、その技量も十分に高い。
剣と銃の訓練を欠かした日はなく、メキメキと上達している。その為、『武勇』も若干だが上昇した。
近衛騎士団親衛隊の隊長として、政治に関しては極力口を出さないよう心掛けている。
しかし、クリスを守る為の発言は容赦なくするつもりであり、彼女に『乳繰り合え』と助言……助言?たぶん助言をした。
どことは言わないが、『H』。どことは言わないが、そろそろ成長限界かもしれない。でも十分すぎる程にでかい。
『シャルロット・フォン・グランドフリート』
※パラメーターに変動はない為省略。
備考
グランドフリート侯爵家の令嬢にして、クリス陛下の婚約者。
腰まで伸びた赤いドリルヘアーの美女で、女性の平均を大きく上回る身長とバストをもつ。
れっきとしたお嬢様なのだが、言動のせいで色物系お嬢様っぽい。
クロノへの想いに決着をつけようと思っている。それに加え、ストラトス家の急成長を危惧し一刻も早くクリスの世継ぎを作るべきとも考えており、彼女の天幕へ突撃しようとした。
シルベスタ卿との力比べにおいては互角の戦いをするも、重心移動などの技量の差で押されており、結果は両者敗北となったものの彼女自身は自分の負けだと考えている。
「流石はクリス様を巡る好敵手の1人……ワタクシも負けていられませんわぁ!!」
彼女の土俵がどこにあるのか。それはよくわかっていない。少なくとも皇妃に親衛隊隊長を投げ飛ばすパワーはいらないと思う。
どことは言わないが、サイズは『H』。どことは言わないが。
『アナスタシア・フォン・オールダー』
所属:オールダー王国 身分:オールダー王国女王 年齢:17歳
武勇:80
魔法:85
統率:70
知略:70
政治:80
忠誠:75(王国)
備考
オールダー王国女王にして、オールダー・スネイル連合の事実上の総司令官。
兄、ノリス国王の仇であるクロノに対し恨みはあるものの、戦場でのことと割り切ろうともしている。また、兄の遺体を丁寧に扱ってくれたことについて感謝もしている。
クロノと直接会話して、誠実な対応をされたこともあって好感度はプラマイでプラス。人間としては結構好き。
ただし、恋愛的な意味で好きかは別である。その辺りは、今後の付きあい方次第かもしれない。
剣術や魔法、戦術や戦略。あの大陸基準でかなりの才人。ただし、彼女自身は『完成品』であるノリス国王を間近で見てきたこともあって、やや己の才能を過小評価している。それでも、大半の人間相手よりは優れている自覚はある模様。
どことは言わないが『H』。今後これ以上大きくなる可能性は低い。どこのサイズとは言っていないが。
『ロクスレイ・フォン・ガルデン』
所属:オールダー王国 身分:侯爵家当主・将軍 年齢:70歳
武勇:110(怪人時) 90(最終)
魔法:60
統率:60
知略:25(怪人化により低下中)
政治:20(怪人化により低下中)
忠誠:70(王国)・70(侯爵家)
備考
オールダー王国の猛将にして、守護者。二つ名は『魔猪』、『魔馬』。
ミハエルという息子がいたが、彼をコーネリアス皇帝により惨たらしく殺されたあげく、死体を辱められたことで発狂。以降、息子の死んだ場所で見つけた魔物の馬を我が子の転生した姿と思い込むようになる。
オールダー撤退戦にて愛馬を討たれ、その無事な脳みそや眼球をホーロス王国の錬金術師達の協力で移植。徐々に魔物の範囲が増していき、種族が変わりかけていた。
それを抑え込んだのは、狂人故の精神力か、あるいは……。
主君であるアナスタシアを取り込んで回復しかけるも、中断。彼女からは何も頂くものがないと、砲弾の届かぬ場所に横たえて最期の戦いに挑んだ。
徒歩なれど、その結末は騎兵のもの。彼は生涯、馬の上であった。
『フラウ・フォン・ストラトス』
所属:クロステルマン帝国 身分:伯爵家令嬢 年齢:25歳
武勇:30
魔力:60
統率:60
知略:60
政治:60
忠誠:30(帝国) 60(ストラトス家)
備考
クロノの10歳上の姉。見た目はモデル体型の金髪ロングクール美女。どことは言わないが『A』。成長の見込みはない。
ただし、『統率』は成長した。ストラトス家の女であると自覚し、兵を率いて戦ったのが大きい。
結婚相手に対して無自覚に凄まじく高いハードルを作っていたものの、それを飛び越してきたあげく劇的な出会いをしたイーサンに惚れている。彼の方も彼女に気があり、完全に両想い。
なお、本人達は相手の気持ちに今一つ気づいていないので、両片想い状態。ストラトス家家臣達とサルバトーレ傭兵団は『はよくっつけや』と思っている。
『カール・フォン・ストラトス』
※パラメーターに変動はない為省略。
備考
オールダー王国の貴族や兵士から『外道騎兵』『人の皮を被った悪魔』『人間性を肥溜めに捨てた奴』と呼ばれている。
殺人容疑により帝都にて拘束中の45歳。顔立ちは20代でも通じるほんわか系イケメン。首から下はゴリマッチョ。
現在8人程殺したい相手がいる凶悪犯。ついでに今の教会領も丸ごと燃やしてぇ、と常々思っているヤベェ奴。
連れてきた騎士達を鍛えながら、教会領及びウィリアムズ伯爵家について情報収集中。
●Q&A
Q.
カールは随分とオールダー王国の貴族や兵士から嫌われているけど、何をしたの?
A.
詳しく書くとアカンことになるので、箇条書きにしますと。
『国境沿いの王国民をそそのかして夜中に王国兵を襲わせて同士討ちさせる』
『敵の砦の前で捕まえた敵兵士でキャンプファイヤー開催で挑発』
『王国内の適当な道に地雷設置。場所はストラトス家のみ把握』
『制圧したけど占拠は無理な敵の砦を荒らす為に敵兵士の死体でサッカー』
『撤退すると見せかけて敵部隊を地雷原に誘導した後、馬鹿笑いしながら皆殺し』
『捕虜を解放するタイミングを狙いすまし、あえて王国軍内を疑心暗鬼に』
『その上で気球による情報優位により、疑心暗鬼を加速させて同士討ちさせる』
等々。あの大陸にきちんとした国際法がないのでセーフですが、現代なら何かしらの罪で戦犯認定されると思います。
Q.
フラウはどうやってオールダー王国の侵攻を防いだの?
A.
あっちの戦場にはアナスタシア女王どころか、反撃の大砲もないので……。熱気球による観測と砲兵部隊の攻撃。更に防御の弱い場所には地雷を設置。相手が弱った所で傭兵を先頭にした突撃で倒しました。
それでも、兵力差的にかなり厳しい戦いでしたが。彼女自身も、魔法ブッパで援護もしていましたね。
Q.
エピローグの教会領不穏過ぎない?
A.
ジョン大司祭
「そんな!我々はただ、容態が急変したアダム様をお助けしようとしただけじゃないですか!」
Q.
よくオールダー王国の面々、コーネリアス皇帝の遺体を綺麗な状態で保存したね。
A.
恨み骨髄で有名なガルデン将軍が『戦場で散った者の遺体を辱めるなど言語道断。我らまで奴らのような外道に堕ちるな』と言葉と態度で示していたからですね。
Q.
ガルデン将軍の怪人化って、ホーロス王国の錬金術師がやったの?じゃあオールダー王国にまだ奴らがいる?
A.
いえ。彼らはノリス国王の葬儀から1カ月後ぐらいにホーロスへ帰国しています。アナスタシア女王がガルデン将軍の延命の為に呼び戻そうとしましたが、カーラさんと『黒蛆』により阻止されました。
カーラさん
「ホーロスの民は、あの実験に無関係。被害者と言っても過言じゃないわぁ。なのにこれ以上うちの悪名で虐められたら、可哀そうじゃない。あんな技術、王都と一緒に燃えた方がマシでしょうよ」
黒蛆の皆さん
「ホーロス王国は滅び、その名も地に落ちるでしょう。しかし民がそれを理由に迫害される可能性は、少しでも低い方が良い。まあ、焼け石に水でしょうけど。やらないよりは……ね?」
という理由で、ホーロス王国から脱出しようとした錬金術師は『黒蛆』に暗殺されています。
なお、たとえ彼らがオールダー王国に行けていたとしても、将軍の延命は無理だったかと……。
Q.
公王の息子達、公王を勢いでやっちゃうとかアホ過ぎない?
A.
カール
「ねー。たしかに乱戦での流れ矢は起き得るし、毒物も流したけど、それも『健康な貴族』には無意味な強さしかないのにー。野蛮な奴らだなー」
アナスタシア女王
「人間の屑だな、我が義父上は。怖いので愛しの旦那様に守ってもらうとしよう」
カール
「 は ? ? ? 」
公王の息子達は、何だかんだ『あの父上なら自分達が無茶して奪取しにきても死なないだろう』という無意識の甘えもありましたね。公王自身が、誰にも弱みを見せないように頑張り過ぎたのもありますが。
スネイル公王は間違いなく化け物と呼べる人物ですが、歳には勝てないし人間である以上体は1つしかありません。その為、公国の維持で精一杯で息子達の教育をする余裕がなかったようです。それだけ、帝国からの猛攻が厳しかったのもありますね。
だからこそ彼は、『スネイル公爵家を守れる後継者』を欲してやまなかったのでしょう。アナスタシア女王に公国を任せようとしたのも、彼女なら息子達を殺さずに生かしたまま、公爵家の名を遺してくれると信じていたので。
結果は、大惨事としか言えませんが。
Q.
そう言えばスネイル公王とか教皇聖下の名前って出ないの?
A.
人名をこれ以上増やすと、作者の脳のキャパシティーがががが……!
Q.
どうしてガルデン将軍は最後、人の力だけなのにクロノを追い込む程強かったの?
A.
シンプルに、『クロノの太刀筋を覚えていたから』ですね。
オールダー撤退戦の際に、彼はクロノと切り結んでいるので。その時に太刀筋を記憶しています。そして、ガルデン将軍は非常に経験豊富な戦士ですので、『こういう太刀筋にはこう』って対策も知っているからこそです。
ただ、最後は武器を交換する形となり、なおかつクロノは馬術こそ適当ですが魔法騎兵であるカールから『騎兵殺し』をしっかり教わっていたので、あの決着となりました。
Q.
どこの国もガタガタじゃん。なんで戦争してんだよ。内側どうにかしろ。
A.
戦争していないと、空中分解する所ばっかり & 戦争で強い所見せないと統治も外交もできない文化。
Q.
今回のおまけ、魔女裁判前日のアナスタシア女王の手をとったルートとか、公国に生まれたらルートじゃないの?
A.
魔女裁判の前日ルートは、クリス様がとんでもなく可哀そうなことになるので、ちょっと書けませんでした……たぶん、彼女は死ぬより悲惨なことになります。
あと公国ルートは公王に『お前オレの後継者な』『あいえ!?僕元孤児で貴方の養子でしかないんですけど!?』『うるせぇ!なれ!』で公王の息子達をバックドロップで半殺しにした後、オールダーが頑張るのを支援するだけの話ですから……。
Q.
モルステッド王国も色々とあるみたいだけど、何があるの?
A.
その辺りは、次の章にて……。
●おまけ もしもクロノがオールダー王国に産まれていたら~ミハエル生存の裏側~
───正史において、ミハエル・フォン・ガルデンは死亡している。
彼は帝国軍に包囲され、部下達も捕まってしまった。唯一戦う力が残っているミハエルに、皇帝がある賭けを提案した。
それは彼の両腕と両目を潰し、前歯を引き抜いて魔法を使えない状態にして、裸のまま森の中を帝国軍から一晩逃げ切ること。
もしもこの賭け……否、皇帝の『遊び』に勝利したのなら、彼と生き残っている部下達を見逃す。
その提案に、ミハエルは僅かに迷った後頷いた。もはや、父と姫を逃がす時間稼ぎにはそれしかないと。
頷き、武器を捨てた彼に。
「……そうか」
皇帝はとてもつまらなそうに、興味を失ったという顔でぞんざいに答えたのである。
その後、ミハエルは夜の森を両腕と両目、そして前歯と衣服を失った状態で駆けた。しかし運悪く、森の中にいた魔物に背中を襲われてしまう。
どうにか肘打ちなどで撃退するも、疲弊した所を帝国兵に捕らえられてしまった。
その後彼がどうなったかは、言うまでもない。1人だけ生き残った彼の部下は、皇帝が痛めつけられるミハエルの姿を見せつける為だけに無事だった。
しかし、この世界線では───。
* * *
「くっ……!」
びりびりと骨が痺れるような感覚に、得物を落としかける。
それでも両の手で、しっかりと木の棒を握りしめた。転生して5年のこの身からすれば大きく、しかし大人から見れば頼りないただの棒。
これだけが、今は頼りである。無手でこの化け物を撃退など、できる気がしなかった。
今しがた、防御の上から自分を蹴り飛ばした存在。全高は成人男性の平均を上回り、体重は馬に近いだろう。
月に照らされた、こげ茶色の翼。人の胴体程もある太い足と、鉈を連想させる鋭い爪。
槍のように尖った嘴から、化け物が雄叫びを上げた。
『ゴォゲゴッゴーッ!!』
そう、巨大鶏である。
流石は異世界ということか。鶏までもが魔物化し、人を襲う。その体当たりは木製の柵など容易く打ち砕き、走る速さは前世で見た競走馬を越えていた。
たかが鶏。されど鶏。魔物化していることもあり、油断すれば……死ぬ!
「ふぅぅ……!」
大きく息を吐きながら、構え直した。
前世も今生も殴り合いの喧嘩すらしたことがなく、剣を習ったこともない。それでも、背中を見せれば容赦なくあの怪物が自分の背中をその爪で切り裂くことは簡単に想像できる。
震えそうになる足を叱咤し、油断なく巨大鶏を睨みつけた。
───クロステルマン帝国が、王国にまた侵攻してきたと、大人達が言っていた。
それにより、村人達は揃って近くの森に逃げたのである。かく言う自分も、その1人。
だが他の子供達が親に手を引かれていたのに対し、転生者なこともあって物わかりの良い子供と見られていたこの身は、誰にも手を握ってもらえなかったし、自分から言い出すこともできなかった。
結果、最悪なことに夜の森ではぐれてしまったのである。1時間前の自分に、『駄々をこねてでも親に手を握ってもらえ』と怒鳴ってやりたい。
どうにか村の近くまで戻ってから、彼らの足跡をたどって合流しようとしたものの……この化け物と遭遇。偶然落ちていた木の棒で、こうして応戦しているのである。
死にたくない。2度も、寿命以外で死んでたまるか……!
中世らしき世界の、寒村の子供としての人生は、辛いことばかりだった。しかし、未来はどうなるかわからない。
この肉体はどういうわけか、人を越えた膂力を持っている。10年もすれば、幸せになる道も開けるかもしれない。
だから。
「お前を……殺す!」
『ゴッゲゴッゴー!』
こちらを嘲笑うかのように吠える、巨大鶏。両者、互いに間合いを詰めようと踏み込んだ───その瞬間。
視界の端で、全裸の男が通った。
……は?全裸?なんで?
『ゴケェ!?』
それに驚いたのは、巨大鶏も同じだったらしい。人間の全裸なんてどうでも良いだろうに、奴は自分以上に動揺している。
いや、もしかしたら、あの全裸男の発する『妙な力』を感知したのかもしれない。
───それが魔力と言うのだと知ったのは、数年後のこと。
今はただ、その隙を逃すまいと全力を尽くす。
「おおおおおおお!」
動揺している巨大鶏へと跳びかかり、その左目へと渾身の力で木の棒を叩き込んだ。
メキャリ、と。黄色の眼球が潰れ奴の頭蓋骨もへし折れた感触が伝わってくる。
だが同時に、木の棒も衝撃でへし折れてしまった。
『ゴゲェ!?ゴッゴッゴッゴ……!』
悲鳴を上げた巨大鶏が、血を流しながら走っていく。
遠ざかっていくその背中を数秒程見送って、ようやく自分は助かったのだと理解できた。
「は、はぁぁ……」
思わずへたり込みそうになるも、膝に手をついてどうにか耐える。
近くに帝国軍とやらが来ているのだ。見つかれば、奴隷として売られてしまう。
折れた木の棒を捨て、月明かりを頼りに他の村人達の足跡を追いかけた。
……どうにか合流に成功したが、『巨大鶏』と『全裸男』について誰にも信じてもらえなかった。
それから5年。もしかしたらアレは自分の幻覚だったのかもしれないと、思い始めた頃。
村の男衆の手伝いとして山に行っていたのだが、どういうわけか立派な馬が2頭、出入口の近くに繋がれている。
というか、片方の馬は本当に『馬』という生物なのか?ばんえい馬を上回る体躯と毛深さ。何より、あの時の全裸男なみの『奇妙な力』を感じる。
「おお!?もしかしなくてもあの子供か!」
突然、そんな大きな声が聞こえてきた。
何事かと視線をそちらに向けると、村長が頭をへこへこと下げながら赤い髪の青年に付き従っている。
「へ、へえ。あの黒髪のが、お探しの『大人10人分の力がある』って噂のガキでさぁ」
「ほう。たしかに凄い魔力だ!とても平民とは思えん!」
「若様、下がってくだされ。おっしゃる通り、平民の魔力量ではございませぬ」
その赤い髪の青年を庇うように立つ、巨大な老人。手は油断なく腰の剣にかけられており、その装いと言動から彼らが貴族かそれに近い商人だと察する。
見れば、村長以外の村人達は皆あの2人に頭を下げたまま顔を上げていない。慌てて、自分もその場で跪いた。
「……ほう」
どこか、感心したような声が聞こえた。
制止するあの老人の声も無視して、あの青年が近づいてきたのか、彼の足が目の前に見える。
「お前、名前は?」
「く、クロノと申します……!」
「なるほど。髪の毛が黒いからか。では、クロノ」
「は、はいぃ……!」
青年が片膝をついたかと思えば、ぐいっと肩を掴まれ顔を上げさせられる。
「今日から、俺の弟になれ!」
「……はい?」
───それが、後に大陸を統一した英雄の中の英雄。
古今無双の賢王と謳われる、ノリス・フォン・オールダーとの出会いであった。