軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ドラゴン討伐の慰労会をしなきゃ!

新しい領地の視察についていかなかったナシウスは、期末試験の真っ最中だ。土日に屋敷に戻って来ても、勉強している。

「サミュエル達と一緒に中等科に飛び級したいのです。エドとクラリッサも頑張っていますから、負けられません!」

ふぅ、私が悪い見本になっているのは困る。サミュエルの音楽クラブの友だちも猛勉強しているみたいだから、単純に負けられないと思っているだけなら良いのだけど。

「飛び級をするのが良いとは言えないのですよ。私は、早く大学に行きたいから、飛び級しましたが、生活にゆとりがある方は、飛び級などしないでゆったりと学園生活を楽しまれていますからね」

カエサル、アーサー、アルバート、来年からロマノ大学生になるけど、飛び級しようと思えばできたと思う。その上、大学もいられるだけ、いる気満々な予感。

私と同学年のラッセルやフィリップスやベンジャミンも飛び級できるのにしない。

それぞれ上級貴族の子息で、大学を卒業したら厳しい現実と向き合うので、飛び級する意味を感じていないのだ。

「でも、お姉様は……」

「あの頃は、お父様は働いておられませんでしたから、幼い私なりに考えて早く働きたいと飛び級したのです」

六歳だったヘンリーは豊かな暮らしを覚えていないから、貧しい生活をそのまま受け止めていたけど、八歳だったナシウスは、グレンジャー家が凄く貧しくなっていくのを不安に感じていた。

「お姉様が何とかして、私たちを食べさせてくれていたのですね。陶磁器に細密画を描いたりされていたのは、趣味ではなく内職だったのでしょう?」

「ええ、私も何故あんなに貧しいのか知りませんでしたが、できる事をしようとしただけです」

ナシウスはいずれはグレンジャー家を継ぐのだ。お父様みたいに金銭面は丸投げにして欲しくない。

ワイヤットを信用していないからじゃないよ!

「お父様は、前の執事に騙されていたのです。しなくても良い屋根の改築工事を、悪徳業者と手を組んでやり、悪徳金貸しから非合法な高利貸しで借金をしたまま逃げ出したのです」

ナシウスは、初めて聞いた話に怒りが抑えられないみたい。ギュッと拳を握りしめている。

「ワイヤットは、お父様に拾われたと話していました。他の使用人が逃げ出したグレンジャー家を見捨てず、借金を返済しながらなんとか暮らしていたのに……」

モンテラシード伯爵家の飢饉の話をするべきか悩んだけど、ナシウスは知っておくべきだと思った。

「運が悪い事にモンテラシード伯爵家の領地が飢饉になり、親戚から借金をして領民の飢えを救いました。お父様は、ああいったお方なので、全て貸し出してしまわれたみたいです。ナシウス、いくら親切心からでも、自分の暮らしは護らなくてはいけませんよ」

驚いて目を見張るナシウスだけど、考えて頷いている。

「お父様は、優しすぎるし、信じすぎたのですね」

「ええ、それに前の執事は、お父様の考え方が気に入らない貴族主義者の手先になったのです。お母様を亡くして、茫然自失状態なのにつけこまれたのでしょう」

ヘンリーは、お父様が書斎に籠っているのも普通というか、そんなものだとしか感じていなかったけど、ナシウスは疑問を持っていたみたい。

「分かりました。貧しいグレンジャー家を支えてくれた使用人たちに感謝します。それと、ワイヤットに家計について学びます」

しっかりしているナシウスなら、家族を飢えさせたりしないと信じられる。たとえ、親戚に金を貸さなくていけなくなったとしても。

十一歳に重い話だったかもしれないけど、我が家の場合、お父様は経済面では当てにできないからね。

それと、ヘンリーも可愛いけど、少しずつ自立する為に教えておく事がある。

勿論、騎士として生活できるように、ヘンリーの為に貯金はしているよ!

騎士としての費用が掛かるのは、カミュ先生を見ていてもわかる。自分用の戦馬、従者の費用、従者用の馬、それに乗り換え用の馬も必要な場合があるそうだ。

貧しいグレンジャー家だったら、ヘンリーに碌な準備をしてやれなかっただろう。

ワイヤットが孤軍奮闘してくれただろうけどね。

「馬関係は……新人の騎士がスレイプニルに乗っていて良いものかどうかは分からないけど……ヘンリーが騎士になる頃には、スレイプニルも増えているのでは?」

領地で 馬の王(メアラス) と 金の鬣(グルファクシ) の仔馬を増やす計画だ。

スレイプニルの雌との間にはスレイプニルの仔馬が生まれるんじゃないかな?

良い雌馬も何頭か買っているので、戦馬も増やせそう。

領地の騎士達、本来なら土地を貰うのが目的だと聞いたけど、うちの領地は領都しか開発できていない。

先ずは、騎士達に戦馬かスレイプニルをあげたい……なんて夢想していたら、ワイヤットが慌てて応接室にきた。

「お嬢様、ゲイツ様が……」言う間に、ゲイツ様と 天狼星(シリウス) が入ってきた。

「 天狼星(シリウス) !」と抱きしめる。

「ワン!」『腹減った!』と言っているみたい。

「ふふふ、いっぱいドラゴンの肉を食べたのでは?」

「ワン、ワン、ワン!」『生肉ばかりだ!』

「あら、では美味しい料理を食べさせてあげるわ」

ちょっと潮風に当たって湿気ているので「綺麗になれ!」と掛けて、モフモフしておく。

「ペイシェンス様、酷いです! 私の事は目に入っていないのですか?」

ワァワァ騒いでいるゲイツ様に謝る。

「申し訳ありません。でも、 天狼星(シリウス) はまだ幼いので心配でしたの」

「その幼い 天狼星(シリウス) は、ドラゴンを何頭も討伐したのですよ」

「まぁ、 天狼星(シリウス) ! 偉いわ!」と褒めておく。

「仕方ないですね! 天狼星(シリウス) は送り届けました。私は、一旦、屋敷に戻ってやってきますので、ドラゴンの料理をお願いします」

なんて言っていたら、王都を護っている第一騎士団がやってきた。

「ゲイツ様、陛下が報告をお待ちです!」

まぁ、すぐには料理できないから、陛下に報告をしてからで良いんじゃないの?

それに、ドラゴン料理なら、パーシバルに食べて貰いたいし。

「ペイシェンス様、私の留守に新領地を決めたのでは無いでしょうね?」

ギクッとした。千里眼なの?

「ええ、実は……モラン伯爵領の西隣の……」

「全く! あんな寂れた温泉地なんて! 私が陛下に報告している間に、ラドリーに慰労会の招待状を届けて下さい。大丈夫です! ドラゴンの肉だと聞いたら、飛んできますよ。領地の開発にこき使う前払いです」

本当に第一騎士団に引っ立てられながら、叫んで指示を出していた。

「ドラゴンの討伐慰労会なら、サリンジャー様も招待しなくていけないわ!」

慌てて書いて、メアリーに届けて貰う。勿論、ミッチャム夫人にエバに慰労会の料理も頼む。

私って、こんな時も夜だとヘンリーは参加できないと心配しちゃっている。それと、ナシウスは試験勉強の気晴らしになるかもとかね。

ドラゴンを 天狼星(シリウス) が何頭も討伐する程増えていたって事を真剣に考えていなかったのだ。