軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

グレンジャーホテルの改善案

下の会議室、なかなか良い感じだ。会議室というより、小部屋? 小さな催し物とかできそうなスペースにしても良い感じ。

私はついつい前世の無機質な事務室を考えちゃっていた。

資料を広げる為に高い机と椅子は、会議室っぽいけど、椅子も背もたれも座面もクッション性が高くて座りやすい。

机も綺麗な木目で落ち着いた感じだ。

こちら側には、私とパーシバルとワイヤット。そして、ホテル側にアダムとモンテス氏とメイド長のナタリー。

「素晴らしいホテルだと思うわ!」と先ず褒めておこう。

「夏にまた来たくなるよ」お父様にも好評みたい。

「全てラドリー様の改装のお陰です。オープンまでに、問題点を洗い出して改善したいです」

これもあって、今回、グレンジャーに滞在することにしたのだ。

「着いたばかりでは、問題点も気がつかないでしょう」とモンテス氏の方が落ち着いた対応だ。

「ワイヤット、お前にはお供の人達が不便な面がないかをチェックして欲しい」

お父様がこんな事を! 明日、雪にならないと良いのだけど!

もしかして、やはりグレンジャーの名前が残っているから、お父様なりに感慨があるのかも?

ワイヤットは少し考えてから、意見を述べた。

「お茶とかはホテル側が用意するのですよね? 部屋にミニキッチンがあれば、ご主人様のご要望にすぐに対応できるのですが……」

あああ、前世の日本のホテルにも湯沸かしとお茶のセットがあったよね。

「それは良いアイデアだわ! 湯沸かしとティーセットとティーバッグぐらいなら直ぐに用意できるでしょう」

アダムがメモを取っている。

「後は……あの紐が少しわかりにくいのでは? 予備室がある部屋は、お側にお仕えしているから良いですが……無い部屋もあるのでは?」

離宮では、紐を引っ張って召使を呼んでいるけど、グレンジャー家は銀の鈴で十分だし、それぞれの侍女や従者がたまに主人の行動の先を読んで行動している。

「それは、要改善ですね」

つまり、ホテルと屋敷の違いだ。それと、子どもが泊まるのはスイートじゃない場合が多くなりそうなんだ。

「乳母が一緒に泊まれるようにした方が良いかもしれません」

ここら辺が、私には分かりにくい。家族で旅をするなら、子どもは親と一緒で良いじゃん! と思っちゃうから。

「そうですね! ベビーベッドを部屋に用意するか、乳母用の簡易ベッドを用意します」

十歳までは乳母が世話をするのが、こちらの貴族の常識だからね。

「小さなお子様の場合、部屋でお食事になります。そちらの用意もしなくてはいけません」

ううう、何だか子どもに厳しい世界だね。

「朝や昼は、躾のしっかりしたお子様もダイニングを使えるようにしております。その場合は、乳母や侍女などにお世話して貰おうかと」

親がしたら良いじゃん! と叫びたくなるけど、こちらの常識には逆らわない。

ここは、私のホテルだけど、宿泊客の常識に合わせた方が良いのは分かっている。

「でも、テラス席でのお茶とかは、子どもにも開放して欲しいわ」

アダムは、プールに子どもが落ちそうだと眉を顰めている。

「あのプールは浅いから、子どもが水遊びするのも楽しいと思うわ。勿論、乳母や召使の付き添いが必要だけど……」

皆がギョッとした顔で私をみる。パーシバルは、くすくす笑っている。

「午後のお茶の時間は、やめておいた方が良いですよ。プールの使用時間を決めたらどうでしょうか?」

そちらの方が良さそう! こちらの貴族は子どもに耐性が少ないから、キャァキャァと騒がしいのは駄目かも。

私には弟達の騒ぐ声も天使の歌声に聴こえるけど、違う人がいるのも理解しよう。

「初日なので、このくらいかしら?」

パーシバルもワイヤットも頷いている。それに、お茶はロビーで頂いたけど、食事はまだだからね。

「ナタリーは何か困っている事はありませんか?」

バーンズ商会でやり手だったアダムは、支配人として生き生きとやっているから安心だけど、ナタリーは初めての仕事だからね。

リリアナ伯母様が侍女では勿体ないと推薦してくれたのだ。家政婦見習いにしても良かったのだけど、ローザが先に来たから、こちらのメイド長を勧めたのだ。

メイド長がナタリーに合っているのか、確認しておかなきゃ。

「まだホテルの準備期間ですが、春のオープン時期までにメイドの訓練が終わるか、少し不安です」

アダムも横で頷いている。

「ナタリーさんは、メイド長として頑張っていますが、やはり貴族に接した事がない者が多いので、つい地が出てしまいます」

それは、徐々に教育するしかなさそう。

「グレンジャーのハイシーズンは夏になりそうだから、春から教育するしかなさそうですわ」

パーシバルは、横で聞いていたが、提案をしてくれた。

「従業員が慣れるまで、お客の数を制限した方が良いのかもしれない」

アダムは分かっていたのに言い出し難かったのかな? 客をセーブしたら、儲けも少なくなるからね。

「オープン当初の収入より、質の高いサービスを目指した方が良いと思うわ」

アダムも納得して「そうします!」と言った。

食事や泊まった後で、また話し合う事にする。

プレオープンに親戚の人達に泊まって貰って、改善点を教えて貰うのも良さそうだ。