軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

やはりゲイツ様は凄いのかも?

地面に座り込んだ二人だけど、パーシバルの立ち直りは早い。スクッと立ち上がり、私の側に来て、説得する。

「ペイシェンス、兎に角、ゲイツ様にそれを作って良いのかどうか聞いてみてはどうでしょう?」

地面に座り込んだままのゲイツ様が怒りだす。

「パーシバル、婚約者から目を離すから、折角の夏休みが台無しになるのです!」

いや、台無しにしているのは、ゲイツ様なのでは? 魔法合宿に騎士合宿を捩じ込んだんじゃん!

「いえ、私は二日ほど自領に行っただけです……でも、その間に盾を作ったのですよね」

「ええ、だって誕生日プレゼントですから、パーシー様に内緒で作りたかったから」

ゲイツ様が立ち上がって騒ぐ。

「こうなったら、サリンジャーを呼んで、あの非常識な魔法陣を隠蔽させなくては!」

いや、それはゲイツ様にお願いしたい。

「サリンジャー様も夏休みが必要なのでは?」

いつもゲイツ様にこき使われているイメージだよ。過労死とか、中間管理職の悲哀とかの言葉が浮かぶ。

「いえ、彼は本当に変態じみた仕事人間なのです。だから、結婚もできないのでは? それに、あああ、私がいない間の魔法省を任せているのです。彼は王都から離れられませんね」

魔法大臣もいた筈だよね。王立学園の行政で習ったよ。

「あのう、魔法大臣は?」と聞いたら、鼻で笑われた。

「今回の 機密保持法案(トップシークレット) でも、役に立ちませんでした。まぁ、彼にはペイシェンス様が作った浄化の魔法陣も伝えていませんから、理解できないのかも?」

それって、良いのかな? パーシバルも困惑している。だって、モラン伯爵は外務大臣だからね。外交関係で、大臣が知らないとか大問題じゃん! それで良いの? 魔法省って顔をしている。

ゲイツ様が気を取り直して、質問してくる。

「ペイシェンス様が考えているアルーシュ王子の指輪擬きは、どういった物なのでしょう?」

「まだ、考えているだけなのですが、魔石に守護魔法陣を刻んだらどうかと思ったのです。それか、伝導率の良い薄い素材に描いて、貼り付けるとか?」

ゲイツ様が、魔石に? という顔をして聞いていた。無理なのかな?

「守護魔法陣を刻めたとしても、魔石の大きさが巨大になるのでは?」

ふふふん、前世では米粒に般若心経を書く人もいたんだよ。私が描けるかは別として、この世界にも手先器用選手権のチャンピオンはいるんじゃないの? あっ、コピー機能でできるかも?

「まさか、本当に魔石に? でも、魔石だと魔力が無くなれば、ただの石になってしまいませんか?」

ガァ〜ン! そうだよね!

「苦労して、描くか刻んでも、魔力が抜けたら駄目なのですね……」

でも、ゲイツ様は別案を考えた。

「あのマントみたいに、魔石をロケットに入れたら良いのでは? そして、指輪の土台に魔法陣を刻めば、良いのです」

横で聞いていたパーシバルが、パンと手を叩く。

「そうです! 指輪だとあまり大きな魔石だと変に思われますが、ペンダントなら? それなら少し大きくても有りなのでは?」

そうだよね! それにペンダントなら、シャツの下に付けていたら、目立たない。

「それですわ! パーシー様、流石です」

ちょっとゲイツ様が呆れている気がするけど、無視するよ。

「指輪よりは大きくても大丈夫かもしれませんが、それでもかなり精密になりますよ」

それなら大丈夫だと思う。伊達にティーカップの精密画の内職をしてないよ。

「指輪、ペンダント、どちらも作ってみましょう! 魔石と魔法伝導の良いミスリルは提供しますよ」

えっ、ミスリル? そう言えば、誕生日プレゼントに貰った剣もミスリル製だった。

「そんな高級な金属でなくても、銀で良いのでは? 盗まれたりしたら困ります」

つい、貧乏性だからさぁ。それに、ナシウスもミスリル製の指輪とか悪目立ちしそうだもん。銀製なら、大丈夫じゃ無いかな?

「あっ、紋章付きの指輪とかなら、少しぐらいゴツくても変に思われないかも? 中に魔石を入れたら良いのでは?」

紋章、グレンジャー家のは本にペン! パーシバルのモラン家のは、盾に剣なんだけど、外交官一族なのにね?

「それは良いかも知れませんね。目立つのが嫌なら、内側の魔法陣を刻む部分だけミスリルにして、外側をプラチナか銀にしますか。ただし銀は磨かないと黒くなりますよ」

「それは、大丈夫! 銀にプラチナメッキをしたら良いだけですわ」

ゲイツ様とパーシバルに呆れられた。

「そんなに貴重な指輪なのに、なぜメッキなのです?」

ゲイツ様は、貧乏を知らないからね! フン!

「ナシウス君にプレゼントするなら、プラチナでも良いのでは? 一生物になりますから」

パーシバルに言われると、それも、そうかも? と思う。

「ああ、でもまだベストに刺繍する巨大毒蜘蛛の糸を細くできるかわからないのです」

そこから、ゲイツ様は素早かった。錬金術部屋の巨大毒蜘蛛の糸をあっと言う間に四分の一にしてくれたんだ。

「これは、風の刃の応用です」

私なら「細くなれ!」でやるしかなかったかも? いや、それで出来るなら、良いのかな?

「これに膠を付けて、銀メッキをします」

ここは、私の方が慣れている。守護魔法のマントを五枚も作ったからね。

マントより華奢な銀製のロケットも作ったよ。

「パーシー様のベストに刺繍しますわ」と言ったら、ゲイツ様が拗ねた。

「こんなに苦労させられているのに、師匠より婚約者を優先ですか?」

当たり前じゃん! それにゲイツ様は、竜に襲われても大丈夫そうなんだもん。

「やはり、ゲイツ様は凄いのかもしれませんわ。こんなベストは必要なさそうですもの」

褒めたのに、何故かガックリしているゲイツ様だった。