作品タイトル不明
やはり料理が目当てなのでは?
今日の昼食会、領地の騎士も招待しているから、大人数になる。
こんな場合、他の貴族なら十歳以下の子どもは同席させないのだと思うけど、私は違うよ!
「アルーシュ王子、弟を同席させても宜しいでしょうか?」と一応は聞くけどね。
「ああ、問題ないだろう?」
アルーシュ王子は、そう言うとは思っていたよ。
「こちらでは、どうか知らないが、国では大勢で食べるのが普通だからな」
へぇ、そうなんだ! バラク王国に行ってみたくなったな。第一夫人にも第二夫人にもなる気は無いけどさ。
席順は、何とはなく魔法使い関係と騎士関係を纏めて、学生グループ、弟達とサミュエルの若者達も纏めた感じだ。
上座は、アルーシュ王子、ザッシュ、王宮魔法師のゲイツ様、王宮建築士のラドリー様、サリエス卿、ユージーヌ卿、ローラン卿、ベリンダ、ジェラルディン卿、エルビス卿、それと私とパーシバルと父親。
今日は二列にして、こちらは若者達。私も、こちらでパーシバルと弟達と気楽に食べたいよ。
エバは、ゲイツ様が何を楽しみに来たのか、よく理解している。前菜から、手がこんでいた。
「これ! これですよ!」
大騒ぎしながら、雲丹のゼリー寄せを食べている。アクセントの鮑も美味しいよね!
「ううう……こんなのを二週間もお預けにされていたのですよ」
それは、私のせいじゃないよね。王宮魔法師の仕事だからさぁ。
アイラ、別のテーブルで良かったね! これでは、また輝ける星が砕け散ったと思う。まぁ、アイラはゲイツ様の強さに憧れているから、意地汚い点は気にしない事にしたのかも?
「ビシソワーズです」
ハーパーがメニューを告げた時、少しゲイツ様が不満そうな顔をした。
「ビシソワーズなどは、王都でも……これは、何でしょう! 美味しすぎます!」
文句を言いながら、ビシソワーズをスプーンで掬ったら、アイスクリーム部分も口に入ったみたい。
「これは、とても美味しいですね!」
ゲイツ様は泣きながらスープを口にしているけど、ラドリー様は大人の対応だね。
なんて思っていたけど、次の魚料理、エバの会心のアクアパッツァで顔面が崩壊しちゃった。
「これは! もう王都の屋敷を引き払って、ハープシャーかグレンジャーに屋敷を建てたいです!」
ラドリー様の屋敷の土地ぐらいは、幾らでも提供するけど、エバは王都に連れて帰るよ。
「これ、お代わりしたいですが、次は何が出るのでしょう」
ゲイツ様が警戒している。少しスパイシーな香りで、美味しい物が出てくると察知したのだ。
「お口直しのスイカシャーベットの後は、お米料理のパエリアです。今日は、魚介のパエリアと肉のパエリアの二鍋作らせましたわ」
スライム狩の時のビッグボアのパエリアも美味しいと思うんだ。こちらは、邪道かもしれないけどカレー風味。
「パエリア? 聞き覚えのない料理ですが、ペイシェンス様の作られる物ですから、美味しいに決まっています!」
その信頼、料理オンリーなのが悲しいよ。まぁ、ゲイツ様に信頼されたくないかも?
ハーパーがマシューを助手にして、パエリア鍋を二つ運び込む。
「海の幸のパエリアとビッグボアのパエリアです」
アルーシュ王子は、迷わず海の幸。父親も私もね!
「どちらかを選べだなんて残酷な!」と騒いでいる人がいるけどね。
「二つとも少しずつお出ししましょう」
ハーパーがそう告げると、約二名が煩い。
「そうなら、そうと初めから言って欲しかったです。悩んだ時間を損しました!」
「私は二つとも頂こう!」
パーシバルは、少し悩んで海の幸! 私が選んだ方だよね。味の好みを信頼して貰っている気がして、嬉しい。
ゲイツ様の食い意地の張った料理への信頼とは違うよ。パーシバルとはずっと一緒だから、味の好みが合うのは大切だと思う。
海の幸のパエリア、前に食べた時よりも美味しくなっている。エバ、腕をどんどんあげていくね。レモンを絞ったら、より鮮明な味になった。
「こんな美味しい料理があるのに、私に秘密にしていたのですか!」
返事をするのも面倒なので、黙って食べる。ああ、ケイレブ海老が美味しい。
「ペイシェンス様の料理人に家の料理助手を鍛えていただきたいです」
ラドリー様、その要請は多いけど、グレンジャー家の料理人を育てなくてはいけないのだ。
「我が家も料理人が欲しいのです。エバに負担が掛かっていますから」
もぐもぐパエリアを食べていたゲイツ様が、横から口を出す。
「ラドリー様、本当に図々しいですよ。貴方の家の料理人も王都で優れた評価を得ているではありませんか?」
へぇ、そうなんだね!
「でも、ここで頂くような新しい料理は作れないのです。あっ、そうだ! 料理人助手を一人鍛えて頂く代わりに、二人こちらに紹介します。基礎ができている人にしますから」
うっ、それは欲しい!
「エバに相談してから、お返事させていただきます」
私が料理人を育成するわけじゃないからね。エバに聞かないといけない。
私とラドリー様がそんな事を話している間に、ゲイツ様は二皿完食した。
「海の幸のパエリアも美味しいですが、肉系のパエリアはカレー風味で、こちらも美味しいです。どちらをお代わりするか悩みます」
注意しておこう! 今日はメニューを書いておくのを忘れたんだ。
「今日のデザートは、メロンパフェですわよ」
ゲイツ様が立ち上がって喜ぶ!
「それは、イチゴパフェのメロンバージョンですね! 絶対にお代わりしたくなると思いますから、パエリアはやめておきます」
騎士達の中から呻き声が上がった。もうお代わりしたのかもね。
今日のメロンパフェ、昨日不評だったタピオカのリベンジも謀っている。
昨日のは、砂糖の白タピオカだけだったけど、食紅で黄色やピンクやグリーンのタピオカを作らせたのだ。
それと、サイズを二回り小さくした。私は、あのもちもち感が好きだけど、ストローで吸い込むのも大変だし、お行儀が悪いと感じた人もいたからね。
「メロンパフェでございます」
器は、ガラスで作ったパフェ皿にメロンアイス、バニラアイス、メロン、生クリーム、そして小タピオカを散らしてある。
「これは! 何でしょう?」
カラフルなタピオカをフォークで掬って、まじまじと見ている。
「それは、キャッサバから作ったタピオカという料理ですわ」
昨日、タピオカミルクティーは、あまり受けが良くなかったけど、こちらは受け入れられた。
「これは、美味しすぎます!」
ゲイツ様、魂が抜けた顔になっている。
「初めて頂きますが、とても美味しいです!」
あっ、ラドリー様は初パフェかも?
「ペイシェンス、これをグレンジャー館で出したら良いのでは? 王都でも食べられないスイーツですから、喜ばれますよ」
地獄耳のゲイツ様が、うっとりと雲の上にいたのに、速攻で降りてきた。
「グレンジャー館で、これを出す? 何の話でしょう」
私の領地だし、いちいち説明いらないとは思うけど、ノースコート伯爵家から提案があり、受けようと考えていると答える。
「あそこを高級ホテルに! 私は、そこに住みたいです!」
ラドリー様、王都にエバは連れて帰るのを忘れているな?
「ふむ、ふむ、それは良いかも? でも今のままではホテルにし難いのでは?」
「私が素敵な高級ホテルにしますから、一室、予約させて下さい」
初めから依頼しようとしていたけど、良いのかな?
「あのう、夏休みが終わればエバは王都に連れて帰りますよ」
一応、注意はしておこう。この魔法合宿、本当に料理目当てじゃないよね?
「やはり、ペイシェンスは私の食の好みを理解している。第一夫人になって欲しかった」
これまで、あまりに煩いゲイツ様とラドリー様に呆れたのか、黙って食べていたアルーシュ王子、最後に変な事を言わないでよ!