作品タイトル不明
ラシーヌ様とお話!
バーンズ公爵家の訪問、パーシバルと一緒だったけど、二人とも精神的に疲れて屋敷に戻った。
「少しだけ、お話ししていきませんか?」
パーシバルと応接室で、ちょっと話し合う。色々あったからね。
「バーンズ公爵は、管理人見習いと騎士を譲ってくださると言われたけど、それを受けても良いものかしら?」
「ゲイツ様から葡萄畑の管理人を譲ってもらったのですよね。それに、バーンズ公爵家から家政婦も……」
そうなんだよね。でも、モラン伯爵家からも家政婦見習いと執事見習いを譲ってもらっている。
「モラン伯爵家からも使用人を譲っていただきましたし、ノースコート伯爵家から騎士を譲ってもらう予定です。こんな厚意にどう応えたら良いのか、不安になります」
まだ親戚や結婚する相手の家は良いけど、バーンズ公爵家やゲイツ様は、どうしてこんなに親切にしてくれるのかな?
「ペイシェンス! それは、貴女がそれだけの事をしているからですよ。私も負けない様に精進します」
パーシバルは、ゲイツ様から足手纏いだと言われたのを苦にしているのかも。ちゃんと話し合わなきゃいけないと思っていたのだ。
「パーシー様、そんなに真剣に言われると、私も不安になりますわ。竜が来るかどうかもわかりません。それにいつになるかもわからないのです」
婚約して初めての夏休み、一緒に遊びたい! もちろん、しなくてはいけないことは山積みだけどね。
二人で、ゆっくりと話し合いたいけど、夕食前にラシーヌを訪問する予定もある。
でも、少しだけでもパーシバルと話せて良かった。パーシバルが知らなかった格納庫横の小部屋の古文書の件も説明した。一人だけ蚊帳の外だなんて、私だったら嫌だもの!
「ペイシェンスと話していたら、凄く気が楽になりました。修業はしますが、夏休みなのだから少しは遊んでも良いのだという気分になったよ」
「そうですわ! 夏休みなのですもの!」
二人で笑って、パーシバルは私の頬にキスして屋敷に帰った。
私は、楽天的なのかも? それか、まだこちらの世界に馴染んでいないから、竜の脅威が他人事に感じているからかも?
やるべき事はやるけど、そればかりに怯えて暮らす気持ちはない。
「メアリー、アンジェラの仮縫いのドレスを用意して! それと、チョコレートとメロンとスイカもね」
メアリーが出かける用意をしている間に、ナシウスを捕まえて、誕生日のキスをする。こんな時じゃないと、キスできないんだもん。
ついでに、ヘンリーも抱きしめてキスしておく。
うん、元気が出た! やはり 弟達(エンジェル) がいないと、やる気にならないね。
ラシーヌの屋敷も近い。前は、貧乏なのだから、もっと王宮から遠い小さな屋敷に引っ越せば良いのにと思っていたけど、やはり便利だね!
それに、一度手放したら、二度と買い戻せなかったかも? 本当に王都ロマノの高級住宅地の空き家は少ないんだもの。
モリーは、私の留守中に家政婦のミッチャム夫人から礼儀作法を徹底的に仕込まれたのか、凄く丁寧にアンジェラに接していた。
「ペイシェンス様、急なお願いなのにドレスを何着もありがとうございます」
アンジェラとも話したいけど、ラシーヌは私と内緒の相談があるみたいで、仮縫いが終わったら、上に上がらせた。
私もメアリーとモリーを下がらせる。使用人部屋でお茶でも出してもらえるだろう。
「夏の離宮のコンサートに招待されたのですが、アンジェラ一人では心配なのです」
ああ、やはりその件だったのだ。
「私も招待されていますわ。だから、アンジェラと一緒に行動しますから、ご安心下さい」
元々、王妃様からの招待を断れる訳が無かったのだから、アンジェラと共に行こう。
ラシーヌがホッと息を吐く。
「ペイシェンス様は、新しい領地を拝領したばかりなので忙しいのではと夫が言いますから、少し心配していたのです」
その上に、魔法合宿と騎士合宿がプラスされているけど、こうなったら、水路や農地の開発の手伝いや、領内パトロールをして貰えると考えよう!
「一日ぐらい夏の離宮に行っても、領地は逃げたりしませんわ。それより、サティスフォード子爵に尋ねたいことがあるのですが?」
ラシーヌが笑いながら、サティスフォード子爵を呼んでくれた。
「ペイシェンス様! 夏休みに是非、冷凍馬車を作って下さい」
先ず、サティスフォード子爵に頼まれた。
「ええ、前から依頼されていますし、夏休みは魔法使いの手伝いが多くなりそうですから、作らせていただきますわ」
魔法クラブの二人、それにゲイツ様もいるからね! 手伝ってもらおう。
「サティスフォード子爵にお尋ねしたい事があるのです。私が拝領した領地は、長年の放置で寂れています。ハープシャーでは味噌や醤油。グレンジャーには海がありますから、海産物を干物にしたり、雲丹の瓶詰めを作ろうと考えているのですが……ザッカーマン教授によく考えた方が良いと忠告されました」
ふむ、ふむと頷いて聞いていたサティスフォード子爵は、最後まで聞いて微笑んだ。
「ペイシェンス様は、ロマノ大学でザッカーマン教授に師事されるのですね。なかなか厳しい教授で有名です。色々な案があるのは素晴らしいですが、領地管理の基本は農業です。先ずは、荒れた農地を管理、改良して、それを領民にきちんと分配しなくてはいけませんよ」
うっ、やはりそこからなんだね。日本史で習った検地とかしないといけないのかな?
「言っては何ですが、農民もより良い土地を欲しがります。長年放置されているなら、素知らぬ顔で良い土地と交換して、前のままの税しか払わない者もいると思いますよ」
ふぅ! 溜息しか出ない。
「でも、それは管理人に任せたら良いのです。領主は、領地全体を豊かにする方法を考えるのが仕事ですからね。ペイシェンス様は、こちらはアイデアが豊富ですから、徐々に進めていけば良いと思います」
そうか、徐々に! が大切なんだ。私は、ついつい焦っちゃうのが欠点だね。
王都の古着の件も、一気に多くではなければ良いだろうと笑われた。
「味噌や醤油を作る人に、賃金と共に配っても良いかもしれません。それと、現地の商店が寂れている件は、慎重に扱わないといけませんよ。領主が新しい商店を開いたら、潰れてしまいます。商品を少し安く融通するとか、改築資金を貸すとか、遠回りでも地元の商店を繁盛させないといけませんからね」
うん、これは栄えているサティスフォードの町を見ているから、実感するよ。
「ありがとうございます! とても参考になりましたわ」
帰ろうとしたら、お土産のメロンについて質問された。
「このメロンは、王都の温室で育てましたが、私やナシウスが魔法で育成しました。領地でも温室を作って栽培しています。一つの温室のものは、魔法を使わないで育てています。上手くいけば、ガラスより安価で強い温室を全国に広めたら良いと考えています」
サティスフォード子爵に「是非、うちの領地にも!」と頼まれた。
領地管理、港があるとはいえ、凄く頑張っているサティスフォード子爵には、これからも色々と相談しなくてはいけないから、こちらも協力するよ!
「ええ、もちろん」
短い間の訪問だったけど、かなり役に立った。やはり、バーンズ公爵家よりサティスフォード子爵家の方が、私の領地の良い見本になるね。